詩篇第九十二篇に基づく物語
朝もやがシオン山を優しく包み込む頃、神殿の庭には一人の老人が立っていた。名はエリアフ。長年の信仰の歩みが、彼の額に深い知恵の皺を刻んでいた。彼は目を閉じ、朝日の光が刻一刻と強くなるのを瞼の裏で感じながら、主を賛美する歌を静かに口ずさんでいた。
「主よ、あなたに感謝をささげることは良いこと
いと高き方よ、あなたの御名をほめ歌うことは」
エリアフの声は次第に力強さを増していった。彼の心には、幼い頃から主の慈しみを受けてきた数々の記憶がよみがえっていた。荒れ野を旅した時も、敵に囲まれた時も、病に伏した時も、主の御手は常に彼を支え、導いてくださった。
神殿の祭司たちが朝の務めを始めるにつれ、エリアフの賛美は十弦の琴の調べに合わせて高らかに響き渡った。彼は立琴を奏でながら、主の真実を歌い上げた。
「あなたの慈しみを朝ごとに歌い
あなたの真実を夜ごとに告げ知らせましょう
十弦の琴と立琴の調べに合わせ
琴の旋律に合わせて」
庭には次第に礼拝に集う人々が増えていった。エリアフの賛美を聞きながら、彼らもまた、それぞれの人生で経験した主の御業を思い起こしていた。ある者は涙を流し、ある者は静かにうなずきながら、共に主を賛美した。
エリアフは歌を続けた。彼の声には、長年にわたる主との交わりから来る確信が満ちていた。
「主よ、あなたのみわざは私を喜ばせます
あなたの御手の業に向かって、私は喜び歌います
主よ、あなたのみわざはいかに大いなることでしょう
あなたの御思いは、いとも深く」
その時、エリアフの目は、神殿の庭に植えられたナツメヤシの木に向けられた。その木は青々と茂り、天に向かって真っすぐに伸びていた。彼はその木を見つめながら、主に信頼する者の人生を思い、歌い続けた。
「正しい者はナツメヤシのように茂り
レバノンの杉のように育ちます
主の家に植えられ
私たちの神の大庭で栄えます」
エリアフの心は感謝に満ちていた。年老いてなお、彼の信仰は衰えることなく、むしろ深みを増していた。主の御前で実を結び続ける恵みを思うと、彼の胸は熱くふるえた。
「彼らは年老いてなお実を結び
いつも新鮮で豊かな緑を保ちます
これは、主が正しいことを示しておられ
私の岩なる主には
少しの不正もないことを
告げ知らせるためです」
人々はエリアフの賛美に深く感動していた。彼の歌は単なる言葉の連なりではなく、長い信仰生活の中で練り上げられた確信に満ちていた。神殿全体が聖なる喜びに包まれ、主の御名が崇められていた。
やがて朝の礼拝が終わり、人々が帰っていく頃、エリアフは最後の祈りをささげた。彼の心は平安に満ち、主への信頼が新たにされていた。彼は確信していた。主の御手がこれからも彼を導き、守ってくださることを。
ナツメヤシの木がそよ風に揺れ、葉をさらさらと鳴らす音が、主の約束の確かさを静かに証ししているようだった。エリアフは微笑みながら神殿の庭を後にした。彼の心には、明日もまた、主の慈しみを歌う喜びがあふれていた。




