聖書

アダムからノアへ 信仰の灯火

アダムの息が白い霧となって闇に溶けていく。彼は千三十年もの間、この土の匂いを吸い込んでいた。指先には最初に土を捏ねた記憶が染みついている。あの園の風、蜜のように甘い無花果、そして禁断の実の輝き──すべてが今は黄昏の色に変わり果てた。彼はセトという名の子を抱き、その小さな掌に自分と同じ指節があるのを見つめる。これは新しい希望だ、アベルを失った傷が癒えるわけではないが、せめて土の上に続く足跡となる。

セトは百五年生きてエノスを儲ける。彼の時代には人々が主の名を呼び始める。朝露がオリーブの葉に光る頃、谷間で祈りの声が響く。しかし祈りは必ずしも答えられるわけではない。セトは九百十二年という長い生涯で、子孫たちが祈りながらも土へ帰っていく姿を幾度も見送った。

エノスの子カイナン、カイナンの子マハラレル──世代は川の流れのように移り変わる。マハラレルが六十五年生きた年、彼の腕に抱かれたエレドは初めて言葉を発する。その頃には人々は青銅の道具を使い、石を積んで住まいを建てていた。しかし死は変わらず訪れる。マハラレルは八百九十五年という歳月を生きながら、最後には「彼は死んだ」という一言でその生涯を閉じる。

エレドの子エノクが生まれて三百年が過ぎた頃、ある変化が起きる。彼は他の者たちと違っていた。夕暮れ時に丘に登り、風の音に耳を傾ける習慣があった。ある日、彼はいつものように祈っていると、突然周囲の空気が蜜のように濃くなった。彼は歩き続けた──三百六十五年という、祖先たちに比べれば短い生涯だったが、その歩みは常に神と共にあった。そして彼は消えた。神が彼を取られたのだ。人々は彼の最後の足跡が残る場所に立っても、何も見つけることはできなかった。

エノクの子メトセラは、父の失踪後、より長い歳月を生きることになる。九百六十九年──これは誰もが驚くほどの寿命だ。彼は幼い頃に父から聞いた話を覚えている。「神と共に歩むこと」という言葉の意味を、彼は長い人生をかけて考え続けた。メトセラの目は次第に曇り、腰は曲がり、最後には曾孫のノアに手を引かれて歩くようになる。彼が息を引き取った時、ノアは五百歳になっていた。

ノアは祖父メトセラから受け継いだ物語を胸に、新しい時代を生きていた。人々の悪が地上に満ちているのを目の当たりにしながら、彼はただ一人、主の前に恵みを得る者となった。やがて箱舟が造られ、大洪水が訪れる時、ノアはメトセラから聞いたエノクの話を思い出す。あの神と共に歩んだ者の血が、今この方舟の中で新たな人類の希望となって脈打っているのだ。

こうしてアダムからノアまで十代にわたる系譜は、単なる年数の羅列ではなく、それぞれの人生の重みを持って歴史に刻まれた。死が支配する世界にあって、なお消えることのない信仰の灯火が、世代を超えて受け継がれていく物語なのである。

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