丘の上のオリーブ畑が、夕暮れの光を浴びて銀色に揺れていた。カレブは腰をかがめ、乾いた土を指でほぐしながら、一本の木の根元に水をやっていた。今年の雨は少なく、隣の畑はすでに茶色に変わり始めている。それでも彼は毎日、決まった時にここに立ち、静かに祈りを捧げた。遠くから市場の喧噪が風に乗って聞こえてくるが、彼の心は穏やかだった。
一方、町の広場ではヨナタンがにぎやかな声を張り上げていた。彼の店先には、異国から運ばれたと思われる絹織物や香料が並び、人々が群がっている。しかし、よく見る者にはわかった。絹は縁がほつれかけており、香料には安い油が混ぜられている。ヨナタンは笑顔で客を抱き込み、代金を前払いさせると、品物を少しだけ少なめに渡すのが常だった。それでも、彼の巧みな話術と、時には有力者への贈り物で、町では一目置かれる存在になっていた。
カレブの妻は時々つぶやいた。「ヨナタンさんは、また新しい家を建てるそうですよ。あの大理石の柱が見えるでしょう?私たちは、この石だらけの畑で、いつまでオリーブの実がなるかわからないのに。」カレブは黙って妻の肩に手を置き、「主が与えてくださるものは、今日の糧で十分だ」とだけ答えた。彼の心に浮かんだのは、幼い頃、父から聞いた言葉だった。『律法を守る者は幸いである。それを破る者は滅びる。』
ある春、王の使者が町にやってきた。新しい税の取り立てのためだ。ヨナタンは早速、使者のもとに贅沢な贈り物を持参し、自分だけではなく友人たちの分の税も軽減するように取り計らった。その代わり、その負担は町の小さな商人や農民に回ってきた。カレブの畑も例外ではなく、例年の三分の一もの税を求められた。彼は貯えていたわずかな銀貨を全て出し、それでも足りない分は、来年の収穫を抵当に入れることを約束せざるを得なかった。
その夜、カレブは荒れた畑の真ん中に座り、星空を見上げた。隣からは、ヨナタンの家で開かれる宴会の笑い声と音楽が聞こえる。彼の胸には怒りや不公平感が渦巻いた。しかし、ふと、また父の声を思い出した。『自分の罪を覆い隠す者は栄えない。それを告白して離れる者はあわれみを受ける。』彼は自分の中にあった、ヨナタンへの憎しみや、状況への不平を静かに主に打ち明けた。すると、奇妙な安らぎが心を満たした。目を上げると、オリーブの木の枝に、小さな新芽がついているのに気づいた。乾いた季節の中、しっかりと根を張っている証だった。
月日は流れ、夏の暑さが厳しくなった。王の宮廷で思わぬ事件が起こる。長年、財政を任されていた高官が、不正な会計処理が発覚して失脚したのだ。彼と密接に取引していた者たちは次々と尋問を受け、ヨナタンの名前もそのリストに上がった。贈賄や品物のごまかし、税の不正免責。証拠は揃っていた。ある朝、兵士たちがヨナタンの家に押し入り、彼はもはや輝かぬ鎖につながれて連行されていった。町中の人々が窓からその様子を覗いた。あれほど威張っていた彼の背中は、突然小さく見えた。
その頃、カレブの畑では信じられないことが起きていた。長い乾期の後、たった一晩の雨が、丘全体をよみがえらせた。彼のオリーブの木は、深く張った根から水分を吸い上げ、他の畑よりも早く実を膨らませ始めた。しかも、その実は例年にないほど大きく、油の質も良い。収穫の日、カレブは家族と共に籠を抱えて木に向かった。一つ、また一つと実を摘みながら、彼は思った。『正しき者が大いに栄えるとき、民は喜ぶ。悪しき者が治めるとき、民はうめく。』
ヨナタンの屋敷は没収され、彼の富は散り散りになった。かつて彼にへつらっていた者たちは、さっさと距離を置いた。一方、カレブの収穫は豊かで、彼は税を払い、隣人に分け与え、さらに貧しい家族の抵当を解いてやる余裕さえあった。町の長老たちは、彼の誠実さを見て、小さな共同体の監督役に推薦した。カレブは戸惑ったが、静かな確信を持って引き受けた。
数年後のある夕方、カレブは丘の上で一人の男を見かけた。ぼろをまとったその男は、ヨナタンに似ていた。彼は市場でこっそりと古い果物を乞い、人目を避けるように歩いていた。カレブはためらったが、籠に入っていたパンと干しイチジクの包みを手に、ゆっくりと近づいた。男は最初、顔を背けたが、やがてうなだれた。かつての驕りは影も形もなく、目には深い後悔の色が浮かんでいた。
「食べなさい」とカレブは言い、包みを差し出した。「主のあわれみは、朝ごとに新しい。」
ヨナタン――かつてそう名乗った男は、声を詰まらせた。「どうして……わたしはあなたから多くを奪った。」
カレブは座り込み、ともにオリーブの木陰を見上げた。「奪ったのは、わたしからではない。あなた自身からだ。『神を無視する者は自分自身を嘆きのうちに滅ぼす。神を敬う者は報いを受ける。』」
風が丘を渡り、木々の葉をさわさわと揺らした。二人の間に長い沈黙が流れた。やがてヨナタンは、かすれた声で過去の過ちを語り始めた。誇張と偽りに塗れた人生、人を欺くことの空虚さ。カレブはただ聞き、時々うなずくだけだった。太陽が地平線に沈み、空が茜色に染まる頃、ヨナタンは初めて、静かな涙を流した。それは、失った富への涙ではなく、ようやく見つけた悔い改めの涙だった。
カレブは立ち上がり、手を差し伸べた。「明日から、この畑で働きなさい。手に豆ができる。」
それからというもの、丘のオリーブ畑には二人の男の姿が見られた。初めはぎこちなかったヨナタンの手つきも、次第に土になじんでいった。彼は多くを語らなかったが、額に汗を光らせて働くその背中は、かつての軽薄さを脱ぎ捨て、どこか確かな重みを帯びていた。町の人々は訝しんだが、カレブは何も説明しなかった。ただ、彼の目には、深い平和が宿っている。
ある安息日、カレブは集会でこう語った。「わたしたちは皆、迷う羊のようです。ある者は富に、ある者は恐れに。しかし、誠実な道は、たとえ狭くとも、確かな岩の上に築かれています。『自分の罪を覆い隠す者は栄えない。』しかし、悔い改めの道は、いつでも開かれています。」
ヨナタンは後ろの席で、うつむいていた。彼の手には、初めて自分で収穫したオリーブの実が握られていた。小さく、しわがあっても、そこには彼のすべてが込められていた。
月日は再び流れ、丘には新しい命が芽吹いた。カレブの家族は増え、畑は少しずつ広がった。ヨナタンは、かつての自分と同じ過ちを犯そうとする若者に、静かに諭すようになった。彼の言葉には、かつての如才なさはなく、どことない渋みがにじんでいた。
夕暮れ時、二人はよく畑の端に座り、沈みゆく太陽を眺めた。かつては一方が富み、一方が貧しかった。今では、どちらが豊かなのか、見分けがつかない。ただ、彼らの間に流れる静かな時間こそが、どんな宝石よりも輝いていた。
そして、丘のオリーブの木は、深く根を下ろし、風雨に耐えながら、次の世代に実をつける準備をしていた。それは、見せかけの繁栄よりも、誠実な歩みがもたらす、揺るぎない命のリズムだった。




