第十年の十月、エルサレムの城壁が軋む音は、もはや日常の一部になっていた。十八か月にも及ぶ包囲は、街を瓦礫と飢えの廃墟へと変えていった。空気は常に煙と塵埃で濁り、かつて賑わった路地からは、絶望の呻きだけが聞こえる。王ゼデキヤは、ダビデの宮殿の奥深くで、日に三度使者からの報告に耳を傾けていたが、その顔には最早、確かなる意志の影さえなかった。
その日、第九の日と呼ばれる日が来た。夜明け前に、東の城壁を守る兵士が、異様な沈黙に気づいた。バビロニア軍の陣営の鬨の声が、忽然と止んだのだ。それは不気味な静寂であった。やがて、一つの破裂音がそれを破った。──城門の木製の扉が内側から打ち破られる鈍い響きであった。裏切りか、それともついに防御が崩れたか。混乱は瞬く間に街中に広がり、カルデア人の兵士たちが、怒涛のように城内へなだれ込んだ。
ゼデキヤ王は、その報せを聞くと、供回りの武士たちと共に、宮殿の裏口から夜陰に紛れて脱出した。彼らの目指したのは、アラバ、すなわちヨルダン渓谷への道だった。王の顔は土のように青ざめ、王権の象徴である印章の指輪さえ、痩せ細った指から緩みかけていた。しかし、その逃避行は長くは続かなかった。エリコ近くの荒れ野で、バビロニアの追手は王家の一団を取り囲んだ。王は無言で捕らえられ、リブラの王ネブカドネザルのもとへ連行されることとなった。
リブラで、バビロンの王は自ら裁きを下した。ゼデキヤの眼前で、彼の王子たちは一人残らず剣にかけられた。最後に残ったのは、彼自身の両目であった。鉄のへらが突き立てられる直前、彼が目に焼き付いた光景は、息子たちの血に濡れた地面と、遠くにかすむエルサレムの煙だった。彼はやがて、銅の鎖につながれ、目が見えぬままバビロンへと連れて行かれた。預言者エレミヤが幾度も語った言葉──「あなたはバビロンの王に会い、彼と顔と顔を合わせて語る。あなたはバビロンへ行く」──その通りになったのである。
一方、エルサレムでは、破壊が秩序立てて進められていた。バビロンの侍衛長ネブザラダンは、廃墟と化した街に立ち、細かい指示を出していた。民の家は火で焼かれ、城壁は石一つ残さず崩されていった。残った住民たちは、泣く子を抱き、わずかな荷物をまとめ、捕囚として連行される列に加えられた。その中で、一人の男だけが異なる運命を告げられた。エレミヤである。
ネブザラダンは彼を呼び寄せ、こう言った。「あなたの神、主がこの災いをこの所に告げられた。主はそれを来らせ、言われたように行われた。あなたたちが主に対して罪を犯したからである。さあ、今日、あなたの鎖を解く。もしも、あなたがわたしと共にバビロンへ行くのが良いと思うなら、来なさい。わたしはあなたの面倒を見よう。もし、行きたくないなら、とどまってもよい。見よ、この地はすべてあなたの前にある。どこへ行くのが良いと思うなら、そこへ行きなさい」
エレミヤは、崩れ落ちた城壁の礫を見つめた。彼は長い間、この滅びを預言し、人々から嘲られてきた。鎖から解かれた手首には、深い痕が残っていた。彼は静かにうなずき、残された民の中へと歩いていった。侍衛長は彼に食物と贈り物を与え、解放した。エレミヤは、ユダの総督ゲダルヤの許に身を寄せることを選んだ。
同じころ、宮廷に仕えるエチオピア人宦官、エベド・メレクの耳に、一つの言葉がもたらされた。かつてエレミヤが、主の名によって彼に告げた約束である。「かの日、わたしはあなたを救い出そう。あなたは自分の命を獲ようとする者たちの手に渡されることはない」。エベド・メレクは、包囲の中でも密かにエレミヤを助けた男であった。捕囚の民が連行されていく中、彼はバビロニアの兵士たちから不思議なほどの敬意をもって扱われ、傷一つ負わずに済んだ。彼は荒廃した街を見渡し、預言者の言葉が、虚無の中にあって一つまた一つと確かなものとなるのを、静かに悟ったのである。
日が傾き、エルサレムには異国の兵士たちの声だけが響く。主の言葉は、裁きとして、また約束として、この地で成就した。灰の中から、新しい歴史が始まろうとしていることを、その時はまだ誰も知る由もなかった。ただ、秋の風が、焼け焦げた梁の間を吹き抜け、遠くバビロンへと続く道に、砂塵を舞い上げていた。




