聖書

北の盟主ハツォルの陥落

日は白く濁り、北からの風がカナンの丘陵に冷たい息を吹きつけていた。ヨシュアは、その風の中に、以前とは異なる戦いの気配を感じ取った。南の諸王を撃ち破り、中部の山地を制圧してから、しばらくの平穏が訪れたかと思われた。しかし、伝令たちがもたらす報告は、次第に重くなっていった。ハツォルの王ヤビンが動き出したのである。その名は、遠くまで響いていた。彼はただの一人の王ではなかった。マドン、シムロン、アクシャフの王たちを糾合し、さらに北方の山地、アラバの低地、西部の丘陵地帯、そしてレバノン山麓のミツパの地にまで手を伸ばし、数えきれぬほどの王たちを麾下に集めていた。砂浜の砂のように多い連合軍が、北から押し寄せようとしている。

ヨシュアは宿営の入口に立ち、遙か北方を見つめた。彼の目には、かつて紅海を二つに分かれた主の御手が焼き付いている。しかし、今、目の前に広がるのは海ではなく、結束した諸王国の怒涛だった。彼は深く息を吸い、冷たい空気を肺に満たした。主こそが戦われる。その一点が、揺るぎない岩であった。

連合軍は、ついに動いた。無数の兵士、戦車、馬が、メロムの水のほとりに集結し、陣営を張った。その光景は、蟻が巣を囲むように、地平線を黒く覆い尽くした。イスラエルの斥候たちは、顔を強張らせて報告した。「戦車の数、膨大です。あの鉄の車輪が揃って突進すれば、我々の歩兵はひとたまりもありません」

宿営では、ささやきが渦巻いた。不安は、目に見えない靄のように兵士たちの間に広がる。ヨシュアは静かに幕屋に向かった。彼は顔を地につけ、声をあげずに祈った。答えは、彼の心に、かつて主が語られた確かな言葉として響いた。「彼らを恐れてはならない。あすの今ごろ、わたしは彼らをことごとくイスラエルの前に引き渡して、ことごとく殺させるからである。あなたは彼らの馬の足の筋を切り、戦車を火で焼かなければならない」

夜明け前、闇が最も濃い時に、ヨシュアは全軍を率いて、密かにメロムへの道を急いだ。足音を殺し、鎧の軋む音さえも風に消された。主の霊が、彼らの進軍を覆っていた。彼らは、連合軍がまだ陣営で眠り、あるいは朝の準備に忙しい頃合いを見計らい、突如として、雷鳴のような鬨の声をあげて襲いかかった。

戦いは、瞬く間に混沌に陥った。イスラエルの兵士たちは、一つになって突撃したが、連合軍の戦車隊が動き出そうとしたその時、ヨシュアの命令が響いた。「馬の足の筋を切れ! 戦車を奪うな、焼け!」

これは、兵士たちにとって不可解な命令に聞こえた。強大な戦車を奪い、自らの戦力とすることこそが当然と思われた。しかし、彼らは躊躇わず、鋭い刃を手に馬の群れに躍り込んだ。苦鳴、金属音、燃え上がる木材の匂い。戦場は、神への従順がもたらす特異な光景に包まれた。戦車は動力を失い、無用の長物と化し、やがて炎に包まれた。主が命じられた通りに。

連合軍は、その核である機動力を失い、統制が乱れた。イスラエルの兵士たちは、追撃を開始した。北はミツパの谷に至るまで、東はシドンやミスレフォト・マイムの方へ、西はバアル・ガドのふもとのレバノンの谷へ。逃げ惑う敵兵を、一人も逃がすまいと、彼らは執拗に追った。剣の閃き、倒れる者のうめき、遠くで燃えさかる戦車の煤けたいやな臭い。日が暮れても追撃はやまず、月明かりの下で続けられた。

そして、ついに彼らはハツォルの城壁を目にした。北の諸国全体の盟主の都である。その堅固さは、これまでのどの町よりも格段に勝っていた。ヤビン王は、ここに逃げ戻り、巨大な城門を閉ざした。人々は、高い城壁の上から、遠くまで続くイスラエルの松明の列を、恐怖に打ち震えながら見下ろした。

ヨシュアは、主の言葉を思い起こした。彼は剣を抜き、燻り続ける戦場の空気を切り裂くように高く掲げた。「主は、この町をも我らの手に渡される!」

総攻撃が始まった。城壁は激しく揺れた。しかし、陥落の決め手となったのは、人間の力だけではなかった。まるで主ご自身が、その御手で石壁を揺すぶられたかのように、ハツォルの城はその威光を失った。町は落ち、ヤビン王は捕らえられた。ヨシュアは、かつて主がモーセを通して命じられたことを忠実に行った。剣の刃は、この町のすべての息のある者に及び、町そのものは火に投じられた。燻ぶる瓦礫と灰が、北の盟主の終焉を告げる煙となって、冷たい空に昇っていった。

他の王たちの町々も、次々と攻略されていった。しかし、ヨシュアはハツォルのようにすべてを焼かず、丘の上に立つ多くの町々は、そのままイスラエルの所有として残された。ただ、人々はことごとく剣にかけられた。主の命じられたことを、ヨシュアは忠実に、しかし状況に応じて行ったのである。

戦いは長く続いた。一日や二日の業ではなかった。遠征から帰還し、また出陣する日々。少年だった兵士も、頬にひげを生やすほどになった。多くの時が流れ、ヨシュア自身の鬢にも白いものが目立つようになってきたある夕暮れ、最後の反抗的な王が捕らえられたという報告が届いた。それを聞いた時、彼は深い、静かな安息を覚えた。激しい戦いの記憶は色褪せず、彼の手足にはいくつもの傷痕が残っていたが、心には約束の成就という確かな満ち足りりがあった。

こうして、この地はついに戦いの響きから解き放たれた。主がモーセに約束し、モーセがヨシュアに託した地は、ひとつ残らず、イスラエルの部族たちの相続地として分配される時が来たのである。ヨシュアは宿営に戻り、主の幕屋の前でひざまずいた。彼の祈りは、もはや戦いのためのものではなかった。これから始まる、平穏な分割と定着の業のための、導きを乞う静かな祈りであった。風は相変わらず冷たかったが、そこにはもう、敵の気配はなかった。ただ、約束の地の土の匂いが、ゆっくりと広がっているだけだった。

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