その日、朝から空の気配が変わっていた。ヨルダン川の西側、ギレアドの丘陵地帯に囲ま…
砂漠の風は、記憶を持っているようだった。バビロンの都を離れて十日余り。軋む車輪の…
レハブアムの治世、五年目の秋であった。エルサレムの宮殿では、まだ朝の冷気が大理石…
埃が舞い、瓦礫の間にわずかに残る道を、男たちの一団が歩いていた。帰還、という言葉…
それは油のように濃い、夏のほこりの匂いがする一日だった。オリーブ山の東側の坂道は…
その日、モーセは足に感じる石の冷たさよりも深い疲労を覚えていた。それは荒野の四十…
荒野は、記憶そのもののように乾いていた。砂と岩の果てしない広がりは、昼には灼熱の…
朝もやが幕屋の周りの野営地を覆っていた。砂漠の冷たい空気が、ほんのりと煙の気配を…
その日も海は鉛色だった。パトモスと呼ばれる孤島の岩肌に、絶え間なく砕ける波の音だ…
その日、小笠原忠司は久しぶりに教会の小さな書斎の窓を開けた。外は五月雨の気配を纏…