雨が止んだ後の朝のような、重く湿った空気が洞窟の中に満ちていた。エゼキエルは膝をつき、顔を掌に埋めていた。バビロンの地の粘土の匂い、遠い故郷のものとは違う、渇いた土の匂いが鼻を突く。耳には、捕囚の民の囁きが絶えず、悔恨とあきらめが絡み合った声が聞こえる。
その時、風がなかった。にもかかわらず、洞窟の奥から、暖かく乾いた息のようなものが、彼のうなじを撫でた。それは感覚というより、確信だった。立て、と。
彼はゆっくりと顔を上げた。視界の端で、薄暗がりが震え、まるで暑い日に遠くの地面が揺らめくように。そして、声が来た。言葉ではなく、意味そのものが、胸の内側に直接に刻まれていくような感覚。
「人の子よ。イスラエルの山々に向かって預言せよ。聞け、と言え。」
エゼキエルの喉が詰まった。イスラエルの山々。彼は目を閉じた。すぐに、脳裏に色が広がる。オリーブの銀色の葉。赤褐色の岩肌。無花果の木の深い緑。カルメル山の豊かな稜線。そして、それらすべてが、次第に色を失い、灰色の骸骨のようになっていく様。敵の足音に踏み荒らされ、高い所が砕け、谷が埋められる。廃虚。それは、かつて緑があった場所にさえ、より深い絶望を刻む。
声は続いた。「お前たちは、周囲の残りの国々のものとなり、民の噂とかすめ取りの的となった。」エゼキエルはうめいた。その通りだ。通りかかる者どもが指さし、嘲笑う。「見よ、この滅びた山々を。かつて栄えたと威張っていた民の、その末路よ。」嘲りの声が、風に乗って聞こえてくるようだった。それは、山々に対する侮辱以上だった。山々の主への、神の聖なる御名への、冒涜だった。
そして、その時、声の温度が変わった。暖かく、しかし、揺るぎない鉄の芯を感じさせる熱へ。「それゆえ、イスラエルの山々よ。主なる神の言葉を聞け。」エゼキエルは思わず背筋を伸ばした。神が、直接、山々に語りかける。その荘厳さに、膝が震えた。
「お前たちは、兄弟たちの嘲りを受けた。周囲の国々すべてから、踏みにじられた。それゆえ、わたしは語る。わたしの怒りを、お前たちに向けて語る。」エゼキエルは息を呑んだ。しかし、続く言葉は、怒りではなく、激しい憐れみの宣言だった。「見よ、わたしはお前たちのために熱心になる。わたしはお前たちに向かって怒る。国々が嘲るとき、彼らは、実はわたしを嘲っているのだ。」
預言者の心臓が高鳴った。神の憤りは、敵に向けられる。それは、愛ゆえの嫉妬、契約ゆえの熱心だった。
「お前たちは、再び、イスラエルの嗣業の地を耕し、種をまくだろう。」声は具体性を増していく。エゼキエルは、目を開けた。洞窟の壁が見えるだけだが、その向こうに、光景が広がる。鋤が、硬く締まった土を優しく起こす。小さな種が、黒い土の襞に落ちる。雨が、慈雨として降り注ぐ。「わたしは、お前たちの上に人を増やす。イスラエルの全家を。町々には人が住み、廃虚は建て直される。」
しかし、それだけではない。声はさらに深く、核心へと向かう。「わたしは、お前たちを清める。すべての汚れと、すべての偶像から。」エゼキエルの胸が痛んだ。捕囚の原因は、外敵以上に、内側の腐敗だった。偶像に染まった心。契約を忘れた背信。その罪の穢れが、山々をも、地そのものをも汚した。
「新しい心をあなたがたに与え、新しい霊をあなたがたの内に授けよう。」声は、ほとんど囁くようだったが、その一語一語が、天地を創った時の力を宿していた。「わたしはあなたがたの内から石の心を取り除き、肉の心を与える。わたしの霊をあなたがたの内に置き、わたしの掟に従って歩み、わたの裁きを守り行わせる。」
エゼキエルの頬を、熱いものが伝った。石の心。捕囚の民の、固く閉ざされ、絶望で冷え切った心。それが、生きている、感じる、震える肉の心に変えられる。神の霊が、内側から動かす。それは、律法の文字の遵守ではなく、息づかいのような自然な歩み。荒れ野に水路が開かれるような、根本的な変革の約束。
そして、最終的な確認。「あなたがたは、わたしの民となり、わたしはあなたがたの神となる。」契約の言葉が、新しい輝きをもって響く。すべての清め、回復、変革の目的は、ここにある。断たれた関係の回復。これこそが、御名の聖性が証明される場なのだ。
「荒れ果てた町々には、羊の群れが伏す。」声は静かに、確かに終わっていく。「その時、彼らは、わたしが主であることを知る。」
静寂が戻った。洞窟の中には、粘土の匂いと、自分の汗の匂いしかない。しかし、エゼキエルの内側は、沸き立つ預言の言葉で満ちていた。彼は震える手で、小さな粘土板を取り出し、尖った石で刻み始めた。最初の一劃が、無言の祈りとなった。
彼は洞窟を出た。目の前には、バビロンの平坦な大地が広がり、見慣れた煉瓦の家々が並ぶ。しかし、エゼキエルには、もう一つの風景が見えていた。遠く西の彼方、灰色の山々が、ゆっくりと緑の衣をまとおうとしている光景。雨雲が、乾き切った谷間の上に集まりつつある光景。そして、何よりも、人々の胸の中で、冷たい石が割れ、温かい血潮が流れ始める、その内側の奇跡の光景が。
風が少し動いた。彼は深く息を吸い込み、捕囚の民の集まる広場へと歩き出した。語らねばならない。この希望を、この約束を。たとえ、今は粘土の平原にいても、心は既に、雨に洗われ、甦りを待つ約束の山々へと向かっていた。




