聖書

二つの王国の戦い

南のユダの国では、アビヤが王となって三年目の秋であった。北のイスラエルの王ヤロブアムが、ユダの国境近くまで軍を進めているという知らせが届いた。エルサレムの宮殿にて、アビヤは重臣たちを前に、冷たい石の床をゆっくりと歩きながら考え込んだ。窓からは、神殿の屋根にぶつかって粉々になる朝日の光が、細かい金色の塵となって舞い込んでいた。「彼は我々を侮っている」と、アビヤは低く呟いた。「金の子牛を拝む者が、生ける神の前に立ち得るとでも思っているのだろうか。」

集まった者たちは皆、沈黙していた。かつての統一王国の栄光は、今や裂け、北の十部族はベテルとダンに据えられた偶像へと傾いていた。アビヤの父レハブアムの代からの確執は、単なる政治的な分裂を超え、礼拝そのものの分裂へと変質していたのだ。

アビヤは軍勢を整えた。彼自身が鎧をまとうとき、胸当ての革紐がきつく締まる感触に、覚悟が固まった。ユダの軍は四十万。彼らがエルサレムを出発するとき、祭司たちは神の契約の箱の前で雄羊の角笛を吹き鳴らし、その音は、兵士たちの重い足取りを掻き消すほどに街中に響き渡った。一行は南から迂回し、エフライムの山地へと向かった。道すがら、アビヤは父や祖父ソロモン、そしてダビデ王が歩んだ同じ道を思い出し、胸が熱くなった。彼らが信頼したのは、槍の数でも、馬の速さでもなかった。

やがて、ゼマライムの山という場所に差し掛かった。その名の通り、二つの峰が向かい合うような地形で、その間の広い尾根が自然の戦場となっていた。対面の丘には、すでに北イスラエルの軍勢が陣を敷いていた。その数は八十万。倍である。ヤロブアム王は、丘の頂き近くに金色に輝く天幕を掲げ、はるかこちらを見下ろしているのが見えた。風が吹き抜け、草がざわめき、両軍の旗がぱたぱたと不気味な音を立てた。

アビヤは陣の前へと歩み出た。彼の声は、意外なほどによく通った。「ヤロブアムよ、ならびに全イスラエルよ、聞け!」

山峡にこだまする声に、敵軍のざわめきが一瞬止んだ。

「あなたがたは知らねばならない。主なる神は、ダビデとその子孫に、イスラエルの王権を塩の契約をもって与えられた。その契約は変わることがない。ところが、ダビデの子ソロモンの僕であったヤロブアムが、我が父レハブアム王が若く未熟であったに乗じ、反逆を起こした。今、あなたがたと共にいるのは、よこしまな者ども、虚しい者どもだ。レハブアムの若さにつけ込んで集まった無頼の徒が、ヤロブアムに対して力を奮っているに過ぎない。」

風が少し強くなり、アビヤの鬢の毛が揺れた。彼は息を深く吸い、言葉を続けた。

「そして今、あなたがたは、主が選ばれたアロンの子孫である祭司たち、レビ人たちを退け、自分たちで勝手に祭司を立てた。だれでも、若い雄牛一頭と雄羊七頭を連れて来さえすれば、その者は、神でもないものの祭司となることができる。しかし我々ユダにおいては、そうではない。我々の神は主である。我々は主を捨てたことはない。主に仕える祭司はアロンの子孫であり、務めをなす者はレビ人である。彼らは毎朝毎夕、燔祭を主にささげ、香ばしい香をたき、供えのパンを整えられた机の上に供える。金の燭台とそのともしび皿には、毎夕ともし火をともす。我々は、我々の神、主の務めを守っている。ところが、あなたがたは主を捨てた。」

アビヤの声は次第に熱を帯び、山肌に反響した。

「見よ、神は我々と共におられ、我々の先頭におられる。祭司たちが警めのラッパをあなたがたに向かって吹き鳴らす。イスラエルの人々よ、あなたがたの先祖の神、主と戦ってはならない。あなたがたは成功することはないのだ!」

しかし、その言葉は、北の軍には届かなかった。むしろ、嘲笑と怒りの声がわき上がった。ヤロブアムは既に、伏兵を遣わしていたのだ。ユダの軍の背後に回り込ませ、前面の軍勢と合わせて挟み撃ちにする作戦である。アビヤが演説を終え、自陣に戻ろうとしたその時だった。

遠くから鬨の声が聞こえ、ユダの軍勢の後方が騒がしくなった。振り返ると、林の中から無数の槍先がきらめき、イスラエルの旗が翻っている。挟み撃ちだ。兵士たちの間に動揺が走った。前には倍の敵、後ろには伏兵。絶体絶命である。

その時、アビヤは目を上げ、天を見た。彼の唇が微かに動いた。祈りでもなく、呪いでもない、ある決意の表情だった。彼は猛然と、前方のヤロブアムの本陣を指さし、叫んだ。「主よ、我らを見捨てたもうな!」

そして、ユダの人々は叫んだ。祭司たちは雄羊の角笛を吹き鳴らし、その音は戦場全体を覆った。すると、奇妙なことが起こった。前線のユダの兵士たちが突撃を開始したが、イスラエルの兵士たちは、まるで目に見えない壁に阻まれたかのように、うまく戦えなかった。槍の扱いがぎこちなく、盾の構えが乱れている。さらに、後方の伏兵の隊列に、突然の混乱が生じた。指揮を執る隊長が何かに怯えたように周りを見回し、兵士同士が押し合いへし合い始めたのだ。彼らの中に、恐怖が瞬く間に蔓延った。

「神が彼らを撃たれた!」
誰かがそう叫ぶと、それが真実であることが明らかになった。イスラエルの軍勢は総崩れとなった。ユダの軍は、逃げる敵を追って、ベテルに近い町々まで追撃した。彼らは、逃げ遅れた兵士を討ち、その数は五十万にものぼった。戦場には、折れた槍や踏みつぶされた盾、そして無言で横たわる者たちが散乱していた。風が硝煙と埃、そして鉄の匂いを運んでくる。

ヤロブアムは、その日、力を取り戻すことがなかった。主が彼を撃たれたからである。一方、アビヤとユダの人々は大勝し、彼らはイスラエルから多くの町々を奪い取った。ベテルとその付近の村々、エシュナとその付近の村々、そしてエフロンとその付近の村々が、再びユダの支配下に入った。

戦いが終わり、アビヤがかつてのベテルの高き所に立った時、そこにはまだヤロブアムが築いた祭壇と金の子牛が残されていた。しかし、もはやそれを礼拝する者は誰もいなかった。彼は深く息を吐き、遠くエルサレムのある方角を見つめた。勝利は彼の武勇によるのでも、戦術の妙によるのでもない。主が為されたことだ。その確信が、彼の心を、勝利の興奮ではなく、深い感謝と畏れで満たした。彼は静かに腰を下ろし、長い間、ただそこに座っていた。やがて訪れる夕闇が、血生臭い戦場を、そして彼の心の疼きを、そっと包み隠し始めた。

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