ザイの宮殿の庭に立つと、ナイルの湿った風が、もうすぐ夕暮れになることを告げていた。ヨセフは父が息を引き取った部屋の扉の前で、しばらく動けなかった。宦官たちが忙しく立ち働く気配が、かえってその場の静寂を深く感じさせた。とうとうこの時が来た、という思いと、十七年にわたるエジプトでの再会と赦しの日々が、走馬燈のように胸をよぎった。父ヤコブの顔は、最期まで安らかだった。だが、その目を閉じる瞬間まで、何か遠くを見つめるような、カナンの丘を思うようなまなざしがあった。
遺体はエジプトの作法に従って香油を塗られ、亜麻布で包まれた。四十日をかけて行われたその作業の間、ヨセフの心は複雑だった。エジプトの高い地位にありながら、自分の根はあの約束の地にあることを、父の死は改めて思い起こさせた。王は哀悼の意を表し、国を挙げて七十日の喪に服することを許した。宮廷の人々の慰めの言葉は、どこか形式的に聞こえた。真の悲しみを分かち合える者は、あの、かつて自分を売り渡した兄たちだけだった。彼らもまた、沈黙のうちに父の傍らに座り、それぞれの悔恨と感謝を胸に抱いていた。
喪が明けると、ヨセフは王の許しを請うた。父の遺言を思い起こさせながら。彼の言葉は、エジプトの宰相としての威厳を保ちつつも、ひとりの息子としての切実さをにじませていた。「父は私に、『わたしは死ぬが、カナンの地に、私がエフロンの野に掘った墓に、必ず葬ってくれ』と誓わせました。どうか、上って葬ることを許してください。」 ファラオはうなずいた。「父に誓ったのだから、上って葬るがよい。」
葬列は、想像を絶する規模であった。ヨセフと兄たち、その家族たち、エジプトの廷臣たち、そして戦車と騎兵。それは、ひとりの遊牧の族長の葬儀というよりも、ひとつの約束そのものが、その起源の地へと還っていく壮大な巡礼のようだった。道中、ゴレンの・アタデという場所で、厳かな喪の儀式が七日間にわたって営まれた。現地のカナン人たちが、これを見て、「これはエジプト人の深い悲しみだ」と互いに言った。その言葉を聞いたヨセフは、心の内で首を振った。違う。これは、エジプト人のものではない。これは、アブラハムとイサクの神に連なる者たちの、約束に向かう途上での、ひとつの区切りの悲しみなのだ、と。
ようやくマクペラの畑の洞穴に着いた。祖父イサク、祖母リベカ、そしてレアが眠るその場所に、父ヤコブは葬られた。儀式は簡素だった。あまりに長い年月を隔てて、この地に帰ってきた父の、ただ静かな納めだけが必要だった。埃っぽい風が吹き抜けるあの野原で、ヨセフは初めて、自分がエジプトに作り上げたすべて―栄誉も権力も富も―が、この洞穴の前では色あせて見えることを感じた。兄たちも、同じ思いだったろう。彼らの目には、かつて自分たちがヨセフを投げ込んだあの穴が、ちらついていたに違いない。
エジプトへの帰路、空気が変わった。父という揺るぎない存在が消え、過去の罪の重さが、再び兄たちの肩にのしかかってきた。彼らはひそひそと話し合った。「ヨセフは、父が生きている間は我々を許していたかもしれない。だが今や、すべての恨みを我々に返すだろう。昔の悪に応じて、仕返しをするに違いない。」 彼らは震え上がり、使いを立ててヨセフに言わせた。「父は死ぬ前に、こう言い残しました。『ヨセフにこう言いなさい。兄たちがあなたに悪いことをしたが、どうかその咎と罪を赦してやってくれ、と。』」 その言葉は、明らかに父のものではなかった。あまりに拙い作り話だった。ヨセフはそれを聞いた時、むしろ胸が痛んだ。彼らが、まだ赦しを確信できずに、これほどまでに怯えていることが。
兄たち自らがヨセフの前に進み出て、地面にひれ伏した。「我々は、あなたの奴隷です。」 その姿は、かつてヨセフが見た夢そのままだった。しかし今、そこには憎しみも怒りもなかった。ただ深い憐みが、ヨセフの心を満たした。彼は近づき、兄たちを起こさせた。「恐れることはない。私が神に代われるだろうか。」 その声は、静かではあったが、宮殿で法を述べる時とは全く違う、血の通った温かみを帯びていた。
「あなたがたは、私に悪を計った。しかし神は、それを良きに計らわれた。多くの民の命を救うため、今日のように生き長らえさせるためだ。だから、恐れることはない。私は、あなたがたやあなたがたの子どもたちを養おう。」 彼はこう言って、優しく、しかし力強く彼らを励ました。兄たちの目から、今度こそ、真の安堵の涙がこぼれた。それは、赦しというものが、単なる言葉の取り消しではなく、未来を共に担っていくという確かな約束であることを、彼らが初めて骨身に染みて知った瞬間だった。
それからの歳月、ヨセフは兄たちとその家族と共に、エジプトの地ゴシェンに住んだ。父の家系はそこで増え広がっていった。ヨセフは百十歳まで生きた。エフライムの子孫三代を見、マナセの孫たちを膝にのせた。最期が近づくと、彼は兄弟たちを呼び寄せて言った。「私は死ぬ。しかし、神は必ずあなたがたを顧みて、この国から、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に上らせてくださる。」 そして、エジプト式の葬儀を願わず、厳かに彼らに誓わせた。「神が必ずあなたがたを顧みられる。その時、私の骨をここから携え上ってくれ。」
こうしてヨセフは息を引き取った。遺体は香料を詰められ、棺に納められた。それは、長いエジプトでの寄留の始まりを象徴するものでありながら、同時に、カナンへの確かな帰還を待ち続ける、沈黙した約束のしるしでもあった。棺はゴシェンの地に置かれ、やがて出発の時を待つイスラエルの民の、薄明かりの中の希望として、何世代にもわたって語り継がれていくことになる。




