エルサレムの宮殿は、朝もやに霞んでいた。石畳の冷たさが足裏に伝わり、アビヤムは玉座の重みを感じながら、遠くを見つめた。父レハベアムが残した国は、裂けたままだった。北の部族はもう戻って来ない。彼らはヤラベアムと呼ぶ男を王とし、金の子牛を礼拝している。祖父ソロモンの栄華は、今は壁の影のように薄れている。
三年という月日は、アビヤムにとって長いようでいて、あっという間でもあった。彼は父の罪を、そのまま引き受けた。丘の上に築かれた高き場所は取り壊さず、香を焚く煙は絶えることがなかった。宮廷の老いた者たちは、ダビデのことを囁く。あの王は心を尽くして主に従ったと。だがアビヤムの胸中には、別の思いがあった。国を保つこと、これが精一杯だ。北との境では、絶えず小競り合いが続く。兵士たちの疲れた目が忘れられなかった。
ある夕暮れ、従者が戦いの報告を持って来た。アビヤムの軍は、ベニヤミンの山地でヤラベアムの兵とぶつかり、多くの者を討ち取ったという。戦いは勝った。しかし、勝報を聞いても、アビヤムの顔は曇ったままだった。彼は父の過ちを、自分の過ちを知っていた。主の目にかなう道から、すでに外れていることを。彼はダビデのようではなかった。ただ、ダビデのゆえに、エルサレムの灯火は消えず、子が王位を継ぐことは許されていた。彼にはそのことが、重い恥のように時折胸を締め付けた。
アビヤムの治世は短く終わった。彼が眠りについた後、人々は彼をダビデの町に葬った。そして、代わりに玉座に就いたのは、アサという名の若者だった。
アサが王となったとき、エルサレムには変わらぬ香の煙が立ち込めていた。しかし、この若い王の瞳には、祖父ダビデを思わせる鋭い光があった。十年が過ぎ、二十年が過ぎるうちに、アサはゆっくりと、しかし確実に変わらざるを得ないことを決意していった。彼の心は、父や祖父とは違う方に向けられていた。
ある春、アサは祭司や預言者たちを集め、言い渡した。「異教の祭壇は壊す。石柱は粉々に砕く。アシェラ像はすべて切り倒せ」。宮廷内にはどよめきが走った。特に、祖母マアカが大事にしていたアシェラ像のことは、誰もが触れたがらなかった。マアカは太后として、なお影響力を持っていた。しかしアサは動じない。彼自ら、キデロンの谷まで像を運び出させ、そこで焼き尽くすように命じた。煙が渦巻き、異様な匂いが谷間に広がった。彼はさらに、マアカが太后の位から降りるよう告げた。老婆の悔しげな表情を、アサはしっかりと胸に刻んだ。国を正すことは、時には身内を傷つけることなのだ。
その後、アサの治世は平穏ではなかった。北の王バシャがラマに要塞を築き、ユダの行き来を阻もうとした。脅威は目の前に迫っていた。アサは金銀を宮殿と主の宮の宝物庫からかき集め、ダマスコに住むアラムの王ベン・ハダデのもとに使いを送った。「父と子の間のように、私とあなたとの間に盟約を。バシャが私から手を引くように、彼を攻撃してください」。使者は急ぎ、金銀を携えて北へ向かった。
やがて、バシャがラマからの撤退を余儀なくされたという知らせが届いた。アサは安堵の息をつくと、全軍を動員し、バシャが残した資材を運び出させ、それでゲバとミツパを築き直した。しかし、その夜、預言者ハナニがアサの前に現れ、声を荒らげた。「あなたはアラムの王に依り頼み、あなたの神、主に依り頼まなかった。主の目は、あまねく全地を行き巡り、自分に向かって心を全うする者を見つけて助けられる。あなたはこの故に愚かなことをした。今後、戦いがあなたを襲うだろう」。
アサは怒り、預言者を監禁の身に置いた。そのころから、彼は民の中の反対する者を抑圧し始めた。かつての決断力は、次第に頑なな独裁へと変わりつつあった。
月日は流れ、アサの足は病に侵された。三十年を超える治世の終わりが近づいていた。医者たちが必死に薬草を調合するが、足の痛みは増すばかりだった。彼は主に助けを求めず、医者だけに頼った。宮殿の奥の部屋で、彼は窓の外のエルサレムの屋根を見つめながら、思い返すことがあった。あのキデロンの谷でアシェラ像を焼いた日、清らかな決意に満ちていた自分を。いつの間にか、その心は別のものにすり替わっていた。依り頼むべきはただ一人だったのに。
アサが死んだとき、人々はダビデの町に彼を葬り、広大な墓穴を掘り、たくさんの香料を遺体と共に納めた。彼が燃やした香とは、全く別のものだった。
一方、北のイスラエルでは、別の物語が繰り広げられていた。ヤラベアムの子ナダブが王となって二年、彼は父の道をそのまま歩み、イスラエルに罪を犯させた。ある日、ナダブがギベトンを包囲しているとき、部将の一人バシャが謀反を起こした。戦場のざわめきの中、バシャはナダブを撃ち、代わって王となった。バシャはすぐに、ヤラベアムの全家を殲滅させ、息あるものは一人も残さなかった。預言者を通して語られた主の言葉が、こうして現実となった。
しかしバシャもまた、ナダブの歩んだ道から外れず、イスラエルに罪を犯させた。彼の治世は長く続いたが、主の目には、それはただ滅びに向かう道程でしかなかった。
南と北、二つの王国。エルサレムとサマリア。それぞれの玉座に坐る者たちは、砂時計の中の砂のように、代わり続けていった。ただ、ダビデの家の灯火だけは、約束ゆえにかすかに燃え続けている。丘の上の煙は消え、また立ち昇り、人々の祈りは、時に混じり物の多い香のように、天に届くか届かぬかの間を漂っていた。そして、誰もが知っていた。真の王は、まだ玉座に就いていないことを。




