聖書

岩陰の賛美

秋の深まりと共に、荒野の風は鋭さを増していた。ヨナタンは岩陰に身を隠し、革の水筒の口を傾けた。滴り落ちる水さえ、砂塵をまとって濁っている。遠くで鬨の声が聞こえる。自分が属する小隊は、今日の夕刻までに丘を奪還せねばならない。命令だった。しかし敵の数は多く、疲労は兵士たちの瞳の奥に巣食っていた。

三日前、彼は偶然、宿営地で古い羊皮紙の切れ端を見つけた。汚れていたが、ダビデ王の作とされる詩の一節がかすかに読めた。「わたしは心を尽くしてあなたに感謝します。神々の前で、あなたをほめ歌います。」その言葉は、幼い頃、母が炉辺で口ずさんだ記憶を不意に呼び覚ました。母は毎晩、ろうそくの灯りで詩篇を読んでいた。貧しい家だったが、その声だけは豊かだった。彼はその切れ端を胸当ての内側にしまい込んでいた。

突如、弓弦の音が空気を切り裂いた。ヨナタンは本能的に身を伏せ、岩に鏃がぶつかる鈍い音を聞く。「包囲された!」誰かの叫び声。息が詰まる。視界の端に、敵兵の影がじりじりと迫ってくる。仲間の一人が倒れた。悲鳴ではなく、深い吐息のような音。彼の手にはるこぎりが汗で滑る。この戦いの意味は何か。ただの砦の一つではないか。なぜ命をかけねばならないのか。疑問が渦巻く。その時、胸のあたりが微かに温かい。羊皮紙の感触だ。

彼は目を閉じた。耳元の殺伐な音が、急に遠のくように感じた。代わりに、幼い日の声がよみがえってくる。母の抑揚。「あなたの慈しみとまことを歌います。あなたはその名と約束を、すべてのものにまさって高くされた。」砂漠の熱風が頬を撫でる。彼は奇妙な確信に捉われた。ここで死ぬのではない、と。それは計算や楽観ではなく、深い淵から湧き上がる、揺るぎない何かだった。

「神々の前で、とあるな。」彼は唇を動かした。声には出さない。周りの神々――敵の信奉する石や星の偶像たち。そのすべてを前にしても、わたしは賛美する。なぜなら、わたしの神は応えてくださるからだ。祈りが聞かれると、知っているからだ。彼の内部で、何かが整っていくのを感じた。恐怖は消えない。しかし、恐怖の傍らに、確信が座を占めた。

「立て!」彼自身の声が、干からびた喉から迸った。思わぬ力が四肢を駆け抜ける。岩陰から飛び出し、盾を構える。仲間が彼の動きに反応し、崩れかけていた防衛線が、一時的にせよ歯を食いしばる。戦いの流れは変わらない。敵は依然として多い。しかし、ヨナタンの内では風景が一変していた。目の前の戦いが、巨大な何かの一部のように思えてきた。自分は一人の兵士に過ぎない。しかし、自分を呼ばれる方は、全ての王を超える方だ。彼は笑みを浮かべた。状況とは不釣り合いな、静かな歓び。

戦闘は雑然と続いた。太陽が西に傾き、長い影が谷を覆い始めた頃、援軍の角笛が聞こえた。丘の上に、自分たちの部隊の旗が翻る。包囲は破られた。生き残った者たちは、互いに肩を抱き合った。ヨナタンは岩に寄りかかり、震える手で水筒を取り出した。同じ濁った水だが、今は甘く感じる。

夜、宿営地で、彼は傷の手当てを受けながら空を見上げた。砂漠の夜空は星で埋め尽くされ、冷たく輝いていた。彼は胸当てから羊皮紙を取り出し、ぼんやりと触れた。インクは擦り切れ、ほとんど読めない。「わたしが苦難の中にあって、あなたはわたしを生かし/わたしの魂の敵の怒りに、あなたは手を伸ばされる。」確かに、今日、敵の手は伸びてきた。しかし、それ以上に、別の手が彼を引き上げていた。それは目に見えない。戦場では無力に思える。それでも、彼の心は、その手の確かさを覚えていた。

彼は隣でうつむく若い兵士に話しかけた。「お前、無事で良かったな。」その兵士はうなずき、小さく呟いた。「…もう駄目かと思った。」ヨナタンは星を指さした。「あの星々を見ろ。どれだけあるか分からん。でも、一つ一つの名を知っている方がおられる。わたしたちの名も、知っておられるんだ。」それは神学的に正確な表現かどうか、彼にはわからない。ただ、母から聞いた詩と、今日の経験が、彼の中でそう言わせた。

月日が流れ、その戦いから幾年も経った後、ヨナタンはエルサレムの神殿の庭で、祭司たちの詠う詩篇を耳にした。立派な大人になった息子が傍らにいる。「主はわたしを完成させてくださる。」詠み手の声が朗々と響く。「主よ、あなたの慈しみはとこしえに。あなたの御手の業を、見捨てないでください。」彼は深く息を吸った。荒野の砂の匂い、鉄の臭い、恐怖の汗の記憶。それらすべてを包み込む、大きな優しさがここにある。彼は完成などしていない。人生にはまだ躓きがある。しかし、始めた方が必ず成し遂げてくださる。その約束を、岩の陰で感じたあの温もりは、偽りではなかった。

彼は息子の肩に手を置いた。何も言わない。言葉以上に、静かな感謝が胸に満ちていた。完成への道は長い。しかし、歩みを始め、支えてくださる方への賛美は、今日も、心を尽くしてささげられる。庭を渡る風が、かつての砂漠の風とは違って、穏やかだった。

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