聖書

ゼカリヤの幻:飛ぶ巻き物とエパの女

**ゼカリヤ書第5章:飛ぶ巻き物とエパの幻**

預言者ゼカリヤは、神からの新しい幻を見た。それは、バビロン捕囚から帰還したイスラエルの民が、エルサレムの神殿を再建していた頃のことである。彼が夜の静寂の中、祈りにふけっていると、突然、天が開け、神の御手が彼に示された。

**第一の幻:飛ぶ巻き物**

ゼカリヤの目の前に、大きな巻き物が現れた。それは、まるで生き物のように広げられ、空を飛んでいた。その長さは二十キュビト、幅は十キュビトで、神殿の至聖所を思わせる大きさであった。巻き物は開かれており、その上には神の律法が記されていた。しかし、それは祝福の言葉ではなく、のろいの宣告であった。

「これは全地に行き渡るのろいだ」と、主の御使いがゼカリヤに告げた。「盗む者、主の名をみだりに唱える者は、この巻き物に記されたのろいによって罰せられる。」

ゼカリヤは、その巻き物が飛んでいくのを見た。それは、罪を犯した者の家に入り、その木や石をも滅ぼすほどの力を持っていた。神の正義は、隠れた罪をも見逃さず、すべてをさばかれることを示していた。

**第二の幻:エパの中の女**

続いて、ゼカリヤはもう一つの幻を見た。御使いが彼に近づき、「何が見えるか」と尋ねた。ゼカリヤは、「エパ(大きな枡)が見えます」と答えた。すると、御使いは、「これは全地の罪を表している」と説明した。

そのエパの中を覗くと、一人の女が座っていた。彼女の姿は邪悪さに満ち、不義と背信の象徴であった。御使いは、「この女は悪そのものである」と言い、彼女をエパの中に押し込めた。そして、鉛のふたがエパの口に載せられ、完全に閉ざされた。

ゼカリヤは驚いて目を上げると、二人の天使のような存在が現れた。彼らは、鳩のように速く羽ばたき、風のような翼を持っていた。御使いが、「彼らはこのエパを運ぶために遣わされた者だ」と告げた。すると、二人の使者はエパを持ち上げ、大空へと飛び立っていった。

「彼らはこれをどこへ運ぶのか?」とゼカリヤが尋ねると、御使いは答えた。「シンアルの地、バビロンへだ。そこに彼女の神殿が建てられ、安置される。」

この幻は、イスラエルの民の中にあった罪と偶像崇拝の根源が、神によって取り除かれ、異教の地へと追いやられることを示していた。神は、ご自身の民を清め、聖なるものとするために、すべての悪を遠ざけられるのである。

**ゼカリヤの悟り**

幻が終わると、ゼカリヤは深い黙想に沈んだ。神が示されたこれらの幻は、単なる未来の予言ではなく、今、民が悔い改め、神に立ち返ることを求めるメッセージであった。飛ぶ巻き物は、神の律法がすべての罪をさばくことを告げ、エパの女は、民の中に潜む罪の根源が断たれることを示していた。

「主は正しく、憐れみ深いお方だ」とゼカリヤは心に刻んだ。神は、のろいをもって罪を罰せられるが、同時に、悔い改める者には赦しと回復を与えられる。この幻は、やがて来るメシアの時代、すべての罪が清められる日の前触れでもあった。

こうして、ゼカリヤは再び民に向かって神の言葉を語り始めた。「主に立ち返れ。主はあなたがたを清め、新たに造り変えてくださる。」彼の言葉は、神の厳しいさばきと、深い愛の両方を伝えるものだった。

**終わりに**

ゼカリヤが見た幻は、今日の私たちにも重要な教えを与える。神は聖なる方であり、罪を許されないが、悔い改める心を求めておられる。飛ぶ巻き物とエパの幻は、神の正義と恵みがともに働き、最終的にはすべての悪が滅ぼされ、神の国が完成することを約束している。私たちも、この幻から学び、神の前に正しく歩む者となりたい。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です