聖書

荒野の旅路 銀のラッパと神の導き

**民数記10章:銀のラッパと神の導き**

荒野を旅するイスラエルの民のキャンプは、朝もやの中に静かに横たわっていた。神の臨在を象徴する雲が幕屋の上に留まっており、人々はまだ眠りの中にあった。しかし、この日は特別な日となるはずだった。モーセは神からの命令を受けて、銀で作られた二本のラッパを打ち鳴らすように指示されていた。

### **銀のラッパの制定**

主はモーセにこう命じられた。
**「銀で二本のラッパを作りなさい。それを打ち鳴らして、民を集めたり、旅立つのを合図とするためである。」**

細かい銀の細工を施されたラッパは、祭司たちの手によって慎重に作られた。その音は鋭く、遠くまで響き渡るように設計されており、神の民に対する明確な指示として用いられることとなった。

### **ラッパの合図と民の行動**

やがて、祭司アロンの子らである祭司たちがラッパを手に取った。
– **一つ長く響く音**は、全会衆を幕屋の前に集める合図。
– **短く鋭い音**は、各部族の長たちを招集するため。
– **連続した音**は、いよいよ旅立つ時を示すもの。

ある朝、雲が幕屋から離れ、上り始めた。その瞬間、祭司たちがラッパを激しく吹き鳴らした。**「トートテッタ! トートテッタ!」** その音は荒野にこだまし、各部族はすぐに行動を開始した。

ユダ族を先頭に、イスラエルの民は旗印に従って整然と進み始めた。箱を担ぐレビ人、幕屋の道具を運ぶ者、家族や家畜を連れた者たち——すべてが神の定めた順序に従っていた。

### **神の雲と共に進む民**

昼間は主の雲が彼らを導き、夜には雲が炎となって光を放った。民はその導きに従い、進むべき時には進み、留まるべき時には留まった。モーセはその都度、ラッパの音で民に知らせた。

ある時、モーセは義兄ホバブに声をかけた。
**「私たちと一緒に来てください。主が与えてくださる良いものを共に受けましょう。」**
しかしホバブは、
**「いや、私は自分の故郷に帰ろう。」**
と答えた。それでもモーセは懇願し、ついにホバブは同行することになった。彼は荒野の道に詳しく、民にとって有益な助けとなった。

### **信仰と従順の旅路**

三日目の夕暮れ、民が初めて宿営を解いて進んだ時、彼らは主の力強い御手を感じた。ラッパの音は単なる合図ではなく、神との契約のしるしでもあった。

**「主が共におられる。この導きに従おう。」**
人々は互いに励まし合い、約束の地を目指して進んでいった。

こうして、銀のラッパの音と共に、イスラエルの民は神の導きに信頼し、荒野の旅を続けたのである。

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