聖書

イエスと四人の友人の信仰の物語

**イエスと癒しの権威**

ある春の日、カペナウムの町は活気に満ちていた。人々は、イエスが再び家におられるという知らせを聞き、大勢集まってきた。家の中はもちろん、戸口まで人で埋め尽くされ、外に立つ者さえイエスの言葉を聞こうと耳を傾けていた。

その中に、四人の男がいた。彼らは中風(ちゅうふう)で寝たきりの友人を運んで来た。友人を何とかイエスのもとに連れて行き、癒していただきたいという一心だった。しかし、人々の群れは厚く、家の中に入ることさえできなかった。

「どうしよう…」と一人がつぶやくと、もう一人が屋根に目を留めた。「そうだ、屋根を剥がして、そこから降ろせばいい!」

彼らはすぐに行動に移した。当時の家の屋根は、木の梁の上にわらや粘土を重ねた簡素な造りだった。四人は屋根に上り、必死で穴を開け始めた。土ぼこりが舞い、小石が崩れ落ちる音に、家の中の人々は驚いて上を見上げた。

すると、彼らは慎重に、中風の男の寝台を縄でつり下げ、イエスの真っ只中に降ろした。

イエスはその光景を見て、彼らの信仰を認め、深く心を動かされた。そして、床に横たわる男に目を向け、優しく言われた。

**「子よ、あなたの罪は赦された。」**

その言葉に、周囲の律法学者たちは心の中でつぶやいた。

「この人は、神を冒涜している。罪を赦せるのは神だけなのに…」

しかし、イエスは彼らの心の内を見抜き、こう言われた。

**「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを考えているのか。『あなたの罪は赦された』と言うのと、『起きて、床を取り上げて歩け』と言うのと、どちらが易しいか。しかし、人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに知らせよう。」**

そして、再び中風の男に向かって言われた。

**「あなたに命じる。起きなさい。床を取り上げ、家に帰りなさい。」**

男は、その瞬間、体に力がみなぎるのを感じた。長年動かなかった手足が、みるみるうちに強くなり、彼は起き上がった。そして、床を取り上げ、人々の間を通って外に出て行った。

群衆は驚き、畏れに満たされ、神を賛美して言った。

「こんなことは今まで見たことがない!」

こうして、イエスはただ病気を癒すだけでなく、罪を赦す権威をも持っておられることを、すべての人に示されたのだった。

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