聖書

「裁きの時と忍耐の恵み ヤコブの手紙第5章の物語」

**ヤコブの手紙 第5章に基づく物語**

**「裁きの時と忍耐の恵み」**

エルサレムの郊外、金色の麦畑が風に揺れる秋の日であった。太陽は赤く燃え、大地を乾かしていたが、農夫たちの顔には深い憂いが刻まれていた。長い間、雨は降らず、井戸の水は涸れ、収穫は危ぶまれていた。その中で、裕福な地主たちは、自分たちの倉に穀物を蓄え、貧しい者から搾取し、労働者への賃金を不当に留保していた。

その頃、エルサレムの教会では、使徒ヤコブが信徒たちに語りかけていた。人々の間には、富める者への怒り、不満、そして神の正義への疑問が渦巻いていた。ヤコブは静かに、しかし力強い声で語り始めた。

**「富んでいる人たちよ、よく聞きなさい。あなたがたの身に降りかかろうとしている災難を思って、泣き叫びなさい。」**

彼の言葉は、会堂に響き渡った。人々は息を呑み、耳を傾けた。ヤコブは続ける。

**「あなたがたの富は朽ち果て、衣服は虫に食われ、金銀はさびてしまいました。そのさびは、あなたがたの罪を証言し、火のようにあなたがたの肉を食い尽くすでしょう。終わりの日に備えて富を蓄えたのは、実にあなたがた自身なのです。」**

彼の言葉は鋭く、まるで剣のように富める者たちの心を刺した。彼らは、貧しい者たちの苦しみを無視し、自分たちの欲望のために不正を働いていた。ヤコブは、彼らが労働者から奪った賃金が、天に叫びを上げていると告げた。

**「見よ、刈り入れをする労働者たちが、あなたがたがごまかした賃金のために叫んでいます。その叫びは、万軍の主の耳に達しました。」**

しかし、ヤコブの言葉は警告だけではなかった。彼は、苦しみの中にある信徒たちに、希望と忍耐を説いた。

**「兄弟たちよ。主が来られる時まで耐え忍びなさい。農夫は、大地の尊い実りを待ち望み、秋の雨と春の雨が降るまで忍耐します。あなたがたも忍耐しなさい。心を強く保ちなさい。主の来臨は近いのです。」**

ヤコブはさらに、互いに不平を言い合うことを戒め、苦難の中でも信仰を保つように促した。

**「兄弟たちよ。苦しみの中にある者は祈りなさい。喜んでいる者は賛美しなさい。病気の者は、教会の長老たちを招き、主の名によって油を塗り、祈ってもらいなさい。」**

その言葉を聞いて、一人の病人が教会に連れて来られた。長老たちは彼の上に手を置き、オリーブの油を塗り、熱心に祈った。すると、主の力がその人に臨み、病は癒され、彼は立ち上がって神を賛美した。

ヤコブは再び語った。

**「義人の祈りは、大きな力があり、効果をもたらします。エリヤは、私たちと同じような人間でしたが、雨が降らないように熱心に祈ると、三年半も地上に雨が降りませんでした。そして、再び祈ると、天は雨を降らせ、地は実りをもたらしました。」**

人々は、祈りの力と神の恵みを深く悟った。そして、迷い出た者がいれば、互いに助け合い、その魂を罪から救い戻すことの大切さを学んだ。

**「わたしの兄弟たちよ。あなたがたのうちに迷い出た者を連れ戻すなら、その人は罪から救われ、多くの罪を覆うことになります。」**

こうして、ヤコブの言葉は、苦しむ者に慰めを、富む者に悔い改めを、すべての者に神の正義と恵みを思い起こさせた。人々は、主の再臨を待ち望みながら、信仰と愛をもって歩み続けることを決意したのであった。

(終わり)

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です