聖書

贖罪の日 聖なる儀式と民の清め

**贖罪の日:聖なる儀式**

荒野に広がるイスラエルの民の宿営。金色の太陽が砂漠の地平線に沈もうとする頃、祭司アロンは神の幕屋の前で深く息を吸い込んだ。今日は「贖罪の日」——一年で最も神聖なる日である。主なる神はモーセを通して、この日の儀式を厳かに執り行うよう命じられた。アロンの心臓は激しく鼓動した。彼自身の罪、そして民全体の罪を清める重大な務めが、今、彼の肩にのしかかっていた。

### **聖なる準備**
朝もやが立ち込める中、アロンはまず身を清めた。きめ細かな麻の布で織られた純白の亜麻布の衣を身にまとい、聖なる帯を締めた。通常の祭司の装飾——金や宝石——は一切身につけず、ただ謙遜と悔い改めの心をもって主の前に立たねばならなかった。

幕屋の前には、若い雄牛が引かれていた。アロンはその牛の頭に両手を置き、イスラエルの祭司たちの罪を告白した。「主よ、私たちは罪を犯しました。どうかこの犠牲を受け入れてください。」鋭い刃が閃き、雄牛の血が注がれた。アロンはその血を取って至聖所に入り、贖罪のふた——「施座」——の前に七度振りかけ、祭司たちの罪を清めた。

### **二頭の山羊**
次に、アロンは民の代表として二頭の山羊を引いてきた。二頭はまったく同じように見えたが、運命は大きく分かれる。アロンはくじを引き、一頭を主への捧げ物とし、もう一頭を「アザゼル」——荒野へ追いやられるもの——とした。

主への捧げ物として選ばれた山羊は、鋭い悲鳴を上げながら屠られた。アロンは再び至聖所に入り、今度は民全体の罪のため、山羊の血を施座の前に振りかけた。聖所の空気は重く、香壇からの煙がゆらめき、神の臨在が圧倒的に感じられた。

### **アザゼルの山羊**
残されたもう一頭の山羊の前に、アロンは立った。彼は両手をその山羊の頭に置き、イスラエルの民のすべての咎、すべての反逆、すべての罪を告白した。山羊は無言でじっとしていたが、その身には目に見えない重荷——民全体の罪——がのしかかっていた。

やがて、選ばれた強い男がその山羊を連れ、荒れ野へと向かった。人々は息を凝らして見守る。砂漠の熱風が吹き抜ける中、男は山羊を深い荒野へと放った。山羊はやがて見えなくなり、民の罪もまた、二度と帰ってこないものとなった。

### **清めの完了**
アロンは最後に、焼き尽くす献げ物の雄羊をささげ、自らと民のための完全な贖いを求めた。炎が天に昇り、主への香ばしい香りとなった。

日が暮れ、民は悔い改めと断食をもってこの日を過ごした。神の御前で謙遜にへりくだり、心から罪を悔い改める者には、主の赦しが確かに約束されていた。

こうして、贖罪の日の儀式は完了した。アロンは疲れながらも、心に平安を感じた。主の律法は厳格だが、その慈しみは深い。イスラエルの民は再び清められ、神との契約が新たにされたのである。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です