**ソロモンの宮殿の建設**
主はソロモン王に並外れた知恵と富を授け、彼はエルサレムに壮麗な神殿を建てた。しかし、神殿だけでなく、ソロモンは自らの王宮の建設にも心血を注いだ。その宮殿は、神から与えられた栄光を映し出すかのように、豪華で精巧なものとなった。
### **宮殿の構造**
ソロモンは十三年の歳月をかけて、自らの宮殿を完成させた。その建築は、レバノンの森から運ばれた香柏の木材と、切り出された高価な石を用いて行われた。宮殿全体は「レバノンの森の家」と呼ばれるほど、柱や梁には香柏がふんだんに使われ、その芳香が宮殿中に満ちていた。
宮殿の主要な部分は次のように構成されていた。
1. **柱の広間**
宮殿の正面には、高さ十八キュビト(約9メートル)の二本の巨大な青銅の柱が立てられた。その柱には精巧な彫刻が施され、一つは「ヤキン(彼は確立される)」、もう一つは「ボアズ(彼において力ある)」と名付けられた。これらの柱は、神の約束の堅さと王権の強さを象徴していた。
2. **玉座の間**
ソロモンが裁きを行う玉座の間は、象牙と純金で飾られていた。玉座には六段の階段がつき、その両側には十二頭の獅子が配置され、イスラエルの十二部族を表していた。ここでソロモンは民の訴えを聞き、神の知恵をもって正しい裁きを下した。
3. **王の住居**
王とその家族が住む部分は、香柏の板で覆われ、床から天井まで細やかな彫刻が施されていた。窓には格子がはめ込まれ、陽光が差し込むと、室内は黄金色に輝いた。王妃であるエジプト王の娘のためには、特別な住居が設けられ、その豪華さは並ぶものがないほどであった。
4. **宴会の広間**
賓客をもてなすための広間は、広大で、香柏の柱が並び、壁には金の装飾が散りばめられていた。ここでは、諸国の王や使者が招かれ、ソロモンの栄華を目の当たりにした。
### **職人ヒラムの働き**
宮殿の建設には、ツロの職人ヒラムが重要な役割を果たした。彼は青銅の鋳造に長け、宮殿のための様々な器具を作り出した。
– **青銅の海**
直径十キュビト(約4.5メートル)の巨大な鋳物の水盤が作られ、十二頭の青銅の牛がこれを支えた。これは祭司たちの清めのための水として用いられた。
– **十の台車**
青銅でできた移動式の台車には、それぞれ水を運ぶための大きな水盤が載せられ、宮殿内の清めに使われた。
– **その他の器具**
香をたくためのシャベル、鉢、鉢、など、すべてが青銅で作られ、神への奉仕と王の栄光のために用いられた。
### **宮殿の完成と神の祝福**
こうして、ソロモンの宮殿は完成し、その壮麗さは周辺諸国にも知れ渡った。しかし、ソロモンはこの栄華が自分自身の力によるものではなく、神の恵みによることを深く悟っていた。
「主が与えてくださった知恵と富によって、この宮殿を建てることができた。しかし、真の栄光は主に属する。」
ソロモンは宮殿の完成を祝い、主への感謝の祈りをささげた。そして、この場所から、正義と知恵をもって国を治めていくことを誓ったのである。
こうして、イスラエルはソロモンの時代に空前の繁栄を迎え、神の約束が確かに実現していることを、すべての民が目にしたのであった。