**信仰の守護者:クレタのティトス**
クレタ島の海岸には、青い海が太陽の光を反射してきらめいていた。島の中心にあるゴルティナの町には、活気ある市場が広がり、人々が行き交っていた。しかし、その華やかさの陰には、道徳的な混乱と偽りの教えが蔓延していた。
パウロは、この地に若き弟子ティトスを遣わした。彼は、信仰深く、知恵に満ちた人物であった。パウロは手紙をしたため、こう記した。
**「神のしもべとして、またイエス・キリストの使徒として選ばれたわたしパウロは、神に選ばれた人々の信仰を強め、敬虔に生きる真理の知識に導くために、この手紙を書く。約束された永遠のいのちへの希望は、偽りのない神が永遠の昔に約束し、定められた時が来て、御言葉が宣べ伝えられたのである…」**
ティトスは、パウロの言葉を胸に刻み、クレタの教会を整える使命を受けた。彼はまず、各町に長老を立てる必要があった。パウロの指示は明確だった。
**「長老は、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、その子どもたちも信仰にそむかず、放縦な者や反抗的でない者でなければならない。神の管家として、自らを制し、高ぶらず、短気でなく、酒に溺れず、乱暴でなく、利をむさぼらず、かえって旅人をもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、敬虔で、自制する者でなければならない…」**
ティトスは、これらの基準を心に留め、島の信徒たちと共に祈り、ふさわしい人物を探し求めた。彼は、クレタの人々の性質をよく知っていた。パウロが言ったように、**「クレタ人はいつもうそつき、悪いけもの、怠け者の食いしんぼうだ」**という評判があったからだ。しかし、ティトスは失望しなかった。神の恵みが、どんな場所にも敬虔な人々を起こすことを信じていた。
ある日、ティトスはニコポリスから来たエパフロスという男に出会った。彼は家族を愛し、貧しい者に施しをし、偽りの教えに惑わされず、堅実に信仰を守っていた。ティトスは彼を長老として立て、教会の指導を委ねた。
しかし、問題もあった。ユダヤ教から来たある者たちが、**「割礼を受けなければ救われない」**と教え、信徒たちを混乱させていた。彼らは利益のために神の言葉を曲げ、家々に入り込んでは争いを引き起こしていた。
ティトスは、パウロの言葉を思い出した。**「彼らの口を封じなさい。彼らは恥ずべき利得のために、教えてはならないことを教え、多くの家庭を破壊しているからだ。クレタの預言者が言ったように、『クレタ人はいつもうそつき…』この証言は真実である。だから、彼らをきびしく戒めなさい…」**
ティトスは、偽教師たちに立ち向かい、真理を明らかにした。**「清い者にとって、すべてのものは清い。しかし、汚れた不信仰な者にとっては、何一つ清いものはない。彼らの心も良心も汚れているのだ」**と語り、信徒たちに純粋な信仰に立ち返るよう促した。
やがて、クレタの教会は整えられ、偽りの教えは退けられた。ティトスの働きは、神の知恵に導かれたものだった。彼は、パウロの信頼に応え、信仰の守護者としての使命を果たしたのである。
**「しかし、堅く立って、主に結ばれた者として歩みなさい。そして、永遠のいのちの望みを抱き続けなさい。この望みを、偽りのない神が永遠の昔に約束してくださったのだから…」**
こうして、クレタの地にも、神の国が確かに広がっていった。