聖書

「サウルの使命と神の導き」

**サムエル記上 9章に基づく物語**

ある日のこと、ベニヤミン族の裕福な男、キシュの息子サウルは、父のろばたちを探すために旅に出た。これらのろばは数日前に放牧地から迷い出て、行方がわからなくなっていた。キシュは心配し、息子サウルに言った。「若い僕を一人連れて行き、ろばたちを捜してきなさい。」

サウルは従順に父の言葉に従い、若い僕を伴い、エフライムの山地からシャリシャの地へ、さらにシャアルムの地域へと歩き回った。しかし、どこを探しても、ろばたちの姿は見つからなかった。日は傾き、二人の足は疲れ、サウルはついに僕に言った。「もう帰ろう。父がろばのことを心配するよりも、私たちのことを心配し始めるかもしれない。」

しかし、僕は賢く、こう答えた。「この近くには神の人が住んでいます。彼は尊敬される預言者で、語ることはすべて実現します。彼に尋ねてみてはいかがでしょうか? もしかしたら、私たちが進むべき道を示してくれるかもしれません。」

サウルは考えた。確かに、このまま帰れば父をがっかりさせるかもしれない。預言者の助言を得るのも一つの手だろう。しかし、彼は心配になった。「もし行くとして、彼に何を持っていけばよいのか? 袋のパンは尽き、神の人に贈るべき贈り物もない。」

僕はすぐに答えた。「私の手元に銀四分の一シェケルがあります。それを神の人に渡し、私たちの進むべき道を教えてもらいましょう。」

サウルは頷き、二人は預言者のいる町へと向かった。町へ上る坂道を歩いていると、ちょうど水を汲みに来ていた若い女性たちに出会った。サウルは声をかけた。「ここにいる神の人は、どこにおられますか?」

女性たちは親切に答えた。「今日はちょうど、町で重要な儀式があります。もし急げば、彼が祝福の祈りを捧げる前に会えるでしょう。人々は彼が来るまで食事をせず、彼が祝福して初めて食事を始めるのです。」

二人は急いで町に入ると、ちょうど門から出てくるサムエルとばったり出会った。実は、主は前の日にサムエルに告げていた。「明日の今頃、私が選んだベニヤミン族の若者をあなたのもとに遣わす。彼を私の民イスラエルの君主とせよ。彼は私の民をペリシテ人の手から救う者となる。」

サムエルはサウルを見た瞬間、主の声を悟った。まさにこの男こそ、神がイスラエルの指導者として選んだ者だった。主はサムエルに言われた。「これが私が語った者だ。彼が私の民を治める。」

サウルは気づかず、サムエルに近づき、尋ねた。「預言者様のお住まいはどちらでしょうか?」

サムエルは静かに答えた。「私がその預言者です。先に高い所へ上りなさい。今日は私と共に食事をし、明日の朝、あなたの心にあることをすべて話してから帰らせましょう。あなたのろばたちは三日前に見つかっています。しかし、心配することはない。イスラエルのすべての望みは、あなたとあなたの父の家にあるのです。」

サウルは驚き、戸惑った。「私はベニヤミン族の者で、イスラエルの最も小さい部族の出身です。私の家族も、部族の中で最も小さい家系です。どうしてあなたはそんなことを言われるのですか?」

しかし、サムエルは微笑み、サウルと僕を食事の場へと導いた。そこには三十人ほどの客人が集まっていたが、サムエルはサウルを最上席に座らせ、料理人に命じて特別に取っておいた肉の部分を出させた。

その夜、サムエルは屋上でサウルと語り合った。夜明けが近づくと、サムエルはサウルを起こし、町の外れまで見送った。そして、僕に先に行くよう言い、サウルだけを残して、神からの油を彼の頭に注いだ。

「主はあなたに油を注ぎ、ご自身の民イスラエルの君主とされました。あなたは主の民を治め、周囲の敵から救わなければなりません。これが主があなたに与えるしるしです。」

サウルの心は震えた。彼はただ父のろばを探しに来ただけだった。しかし、神は彼をイスラエルの王として選ばれた。彼の人生は、この日から全く違うものとなるのだった。

こうして、サウルは神の導きの中で、イスラエルの最初の王としての使命を受け、歩み始めたのである。

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