**詩篇87に基づく物語:シオンの栄光**
エジプトの砂漠を越え、バビロンの川のほとりを離れ、遠くから巡礼者たちが集まってきた。彼らは乾いた唇で囁く。「シオンへ、主の聖なる山へ。」その道は長く、足には血が滲み、しかし心は燃えるように熱かった。なぜなら、彼らは「生ける神の都」と呼ばれる場所を目指していたからだ。
### **神が愛する都**
エルサレムの丘の上に立つシオン。その城壁は太陽の光を浴びて黄金のように輝き、門は堅固で、決して揺るがない。ここはただの町ではない。主ご自身が選び、ご自分の足を置かれた聖なる場所であった。
「主はシオンの門を、すべての住まいよりも愛しておられる。」(詩篇87:2)
神は預言者たちを通して語られた。「この地は、ただイスラエルのためだけにあるのではない。すべての民がここでわたしの名を呼び、礼拝するのだ。」と。
### **諸国の民の登録**
ある日、天の幕が開かれ、神の御前に一人の書記が立った。彼の手には、永遠の命の書が握られており、そこには世界中の民の名が記されていた。
「ラハブ(エジプト)とバビロン、ペリシテ、ティルス、クシュ(エチオピア)——これらは皆、シオンで生まれた者として記される。」(詩篇87:4)
驚くべき宣言であった。なぜなら、これらの国々はかつてイスラエルの敵であり、異邦の民であったからだ。しかし、神は言われた。「彼らもまた、わたしの民となる。」
### **シオンに生まれる幸い**
巡礼者たちがついにシオンの門にたどり着いた時、祭司たちが彼らを迎えた。「あなたがたはどこから来たのか。」と尋ねると、彼らは答えた。「私はエジプトの者です。」「私はバビロンの流れの畔から来ました。」すると、祭司は微笑み、こう宣言した。
「この人はシオンで生まれた。」
人々は驚いた。彼らの肉体は異国の地で生まれ育ったが、神の目には、彼らはシオンの民として数えられていたのだ。
「主ご自身が、諸国の民を記録される。『この者はシオンで生まれた』と。」(詩篇87:6)
### **喜びの歌と踊り**
都の中では、楽器の音が響き、人々は踊り、歌った。
「私のすべての泉は、あなたにある。」(詩篇87:7)
かつて敵であった者たちが、今は共に主を賛美していた。エジプトの女はタンバリンを打ち、バビロンの若者は竪琴を奏で、クシュの戦士は喜びの叫びを上げた。彼らはもはや異国人ではなく、神の家族となったのだ。
### **終わりに:約束の成就**
こうして、詩篇87の言葉は成就した。シオンはただ一つの民族の都ではなく、すべての民が神の民として迎えられる場所となった。それは、後の時代にイエス・キリストが来臨し、「すべての国々の民を弟子とする」(マタイ28:19)という約束の先触れでもあった。
神の愛は、いつの時代も、すべての民に注がれている。シオンの門は今も開かれており、主を求める者を待ち受けている。