聖書

選ばれた民の約束 カナンへの道と神の導き

**申命記7章に基づく物語:選ばれた民の約束**

荒れ野を越える風が、砂塵を巻き上げながらイスラエルの民の周りを渦巻いていた。モーセは岩の上に立ち、老いた目にもかかわらず、その視線は燃えるように力強かった。彼の前に集まった民は、長い旅の疲れを顔に浮かべながらも、神の言葉を聞くために静かに耳を傾けていた。

「聞け、イスラエルよ。」モーセの声は深く、神の威厳に満ちていた。「主なる神はあなたがたを選ばれた。地のすべての民の中から、あなたがたは神の宝となったのだ。」

民の中からつぶやきが上がった。選ばれた民——それは大きな栄誉であると同時に、重い責任を意味していた。モーセは続けた。

「あなたがたがカナンの地に入るとき、主は七つの民をあなたがたの前から追い払われる。ヘテ人、ギルガシ人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人——彼らはあなたがたよりも数多く、力強い。しかし、恐れてはならない。主が共におられる。」

若い戦士ヨシュアは拳を固く握りしめた。彼はかつて、アマレクとの戦いで神の力を見た。しかし、カナンの民はさらに強大だった。彼の心に一瞬、疑いがよぎったが、モーセの言葉がそれを打ち消した。

「彼らと契約を結んではならない。娘をあなたがたの息子に与え、またあなたがたの娘を彼らの息子にとらせてはならない。彼らはあなたがたの子らを惑わし、主から離れさせ、他の神々に仕えさせるであろう。」

モーセの言葉は厳しかった。しかし、それは民を守るための神の愛だった。イスラエルの民は、かつてエジプトで異教の神々に囲まれ、苦しんだ。再びその道に戻ることは、滅びを意味した。

「むしろ、彼らの祭壇を打ち壊し、偶像を粉砕し、アシェラ像を切り倒さなければならない。あなたがたは聖なる民。主はあなたがたを愛し、祝福を約束された。もし、これらの命令を守るなら、主はあなたがたを守り、あらゆる病から遠ざけ、地の実りと子孫の繁栄を与えられる。」

民の中にいたレビ族の祭司たちは、神の律法を胸に刻んだ。彼らはこの約束を後世に伝える使命を負っていた。

モーセは最後に民を見渡し、声を強めた。「主を畏れ、その道を歩む者には、約束の地が与えられる。しかし、背く者には、滅びがある。選びは恵みだが、従順が答えなのだ。」

夕日が山の彼方に沈み、民は静かに宿営に戻った。彼らの心には、神の言葉が深く刻まれていた。約束の地はもうすぐそこまで来ていた——しかし、そこに至る道は、信仰と従順の道だった。

(終わり)

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