**民数記第1章:イスラエルの民の数え**
荒野の太陽が砂漠の上に灼熱の光を注いでいた。シナイ山のふもとでは、神の幕屋が輝くように建てられ、その周囲にはイスラエルの十二部族の宿営が広がっていた。神がモーセに命じられたように、彼らは整然と配置され、各部族の旗が風に揺れていた。
**神の命令**
その日、主は幕屋の中からモーセに語りかけた。
「モーセよ、イスラエルの人々の全会衆を、その氏族ごとに、父祖の家ごとに調べ、すべての男子の名をひとりひとり数えよ。二十歳以上の者で、イスラエルにおいて戦いに出ることのできる者を、あなたとアロンはその人数に従って登録せよ。」
神の声は厳かであり、この数え上げは単なる人口調査ではなく、神の約束の地に向かう戦いの備えであった。モーセは深くうなずき、直ちにアロンと各部族の長たちを召集した。
**各部族の指導者たち**
神が選ばれた十二人の部族の長がモーセの前に集まった。彼らは皆、信仰深く、民から尊敬される者たちであった。
– **ルベン族**からはシェデウルの子エリツル
– **シメオン族**からはツリシャダイの子シェルミエル
– **ユダ族**からはアミナダブの子ナフション
– **イッサカル族**からはツアルの子ネタンエル
– **ゼブルン族**からはヘロンの子エリアブ
– **エフライム族**からはアミフドの子エリシャマ
– **マナセ族**からはペダツルの子ガムリエル
– **ベニヤミン族**からはギデオニの子アビダン
– **ダン族**からはアミシャダイの子アヒエゼル
– **アシェル族**からはオクランの子パグイエル
– **ガド族**からはデウエルの子エルヤサフ
– **ナフタリ族**からはエナンの子アヒラ
彼らは神の命令を聞き、それぞれの部族の戦士たちを召集するために散っていった。
**民の登録**
翌日から、各部族の宿営では壮年男子たちが集められ、氏族ごとに名が呼ばれた。二十歳以上の者たちは、武器を取ることができる戦士として登録された。彼らの顔には神の約束の地を目指す決意が浮かんでいた。
日々、幕屋の前では書記たちが羊皮紙に名を記し、数を確認していった。ルベン族から始まり、シメオン、ユダ……と順に進められ、十二部族すべてが丹念に数え上げられた。
**数え上げの結果**
四十日が過ぎ、すべての部族の登録が完了した。モーセとアロンはその結果を神の前に報告した。
– ルベン族:46,500人
– シメオン族:59,300人
– ガド族:45,650人
– ユダ族:74,600人
– イッサカル族:54,400人
– ゼブルン族:57,400人
– エフライム族:40,500人
– マナセ族:32,200人
– ベニヤミン族:35,400人
– ダン族:62,700人
– アシェル族:41,500人
– ナフタリ族:53,400人
合計すると、603,550人の戦士が登録された。これは、エジプトを出て以来、神がどれほどイスラエルを増やしてくださったかを示していた。
**レビ族の役割**
しかし、レビ族だけはこの数え上げから除外されていた。神はモーセにこう命じていた。
「レビ族はほかの部族と共に数えてはならない。彼らには幕屋の務めが与えられている。彼らは宿営の周囲に住み、神の怒りが民の上に下らないよう守る者とせよ。」
レビ族は祭司アロンのもとで、幕屋の管理や祭儀を執り行う特別な使命を持っていた。彼らは戦士として登録されなかったが、神の聖なる務めを果たすという、さらに重い責任を負っていた。
**荒野の旅の始まり**
こうして、イスラエルの民は神の命令に従い、戦える者たちを数え上げた。この数え上げは、単なる人口調査ではなく、神が約束の地へと導くための備えであった。各部族はそれぞれの旗の下に整列し、レビ族が幕屋を囲むように宿営を張った。
モーセは荒れ野を見渡し、心に決意を新たにした。
「主が共におられる。さあ、約束の地へと進もう。」
こうして、イスラエルの民は神の導きに従い、新たな旅の準備を整えたのである。