**詩篇56編に基づく物語:ダビデの信頼の賛美**
荒野の洞穴の中、冷たい岩壁がダビデの背中に張り付くように迫っていた。夜風が入口を通り抜け、松明の炎を揺らめかせ、壁に揺れる影が不気味に踊る。彼の指は堅い石の上に置かれ、目は閉じ、唇は静かに震えていた。
「神よ、私をあわれんでください。人が私を踏みつけ、戦いのすべての日に、私を苦しめます。」
ダビデの心には、ガテの町での記憶がよみがえった。ペリシテ人の王アキシュの前に立った時、彼らは彼を疑い、捕らえようとした。敵の目は剣のように鋭く、言葉は罠のように絡みついてきた。「ダビデはイスラエルの王の部下だ。彼はここを偵察に来たに違いない。」
恐怖が彼の胸を締め付けた。しかし、その瞬間、彼は心の中で祈った。
**「私が恐れるとき、あなたに信頼します。」**
彼は岩の隙間から見える星空を見上げた。天の川が神の栄光を語り、月の光が闇を切り裂く。彼の魂は静かに燃え上がった。
「神よ、私の涙をあなたの皮袋に蓄えてください。それはあなたの書に記されてはいませんか。」
ダビデは、これまでの戦いの日々を思い出した。獅子や熊から羊を救った時、神は彼と共におられた。ゴリアテの前で石を投げた時、神は彼の手を導かれた。今、敵が再び迫っているが、彼は確信していた。
**「神は私の味方、私は恐れない。人が私に何をなしえよう。」**
彼の祈りは賛美へと変わった。洞穴の中に響く声は、岩壁に反響し、天に届くように昇っていった。
「神よ、あなたへの誓いを私は果たします。感謝のいけにえをあなたにささげます。あなたは私の魂を死から救い、私の足がつまずかないようにしてくださいました。私は命の光のうちに、神の御前を歩みます。」
夜明けが近づき、東の空が薄明るくなってきた。ダビデは立ち上がり、剣を腰に帯びた。敵はまだ周囲に潜んでいるかもしれないが、彼の心には平安があった。
彼は洞穴を出て、朝もやの中を歩き始めた。風が彼の髪を撫で、鳥のさえずりが神の祝福を告げる。ダビデは唇を動かし、新たな歌を口ずさんだ。
**「神は私のためになされる。私は主の御言葉をほめたたえよう。」**
こうしてダビデは、試練の中でも揺るがない信仰をもって前進した。彼の物語は、後の世代にまで語り継がれ、神に信頼する者たちの希望となった。
**「神に信頼せよ。恐れてはならない。人の力など、何ほどのこともない。」**
(詩篇56編に基づく物語)