聖書

「バルクの苦悩と神の約束」

**エレミヤ書45章に基づく物語:バルクの苦悩と神の慰め**

バビロンの脅威が日に日に強まる中、ユダの民は不安と絶望に包まれていた。エルサレムの町には、戦争の噂が飛び交い、人々の顔には疲れと恐れが刻まれていた。神殿の周りでは、祭司たちが必死に祈りを捧げていたが、彼らの目にはもう希望の光が見えなくなっていた。

そのような時代の中、預言者エレミヤの側には、忠実な弟子バルクがいた。バルクは優れた筆記の才を持ち、エレミヤの言葉を書き記す役目を負っていた。彼は神の言葉を伝えるという重い使命に励みながらも、心の奥底には深い苦悩を抱えていた。

ある日、バルクはエレミヤの預言を書き終えた後、一人で静かに祈りをささげていた。「主よ、なぜこのような苦しみが続くのでしょうか。私はあなたの言葉を書き記し、民に伝えるために力を尽くしてきました。しかし、私自身の心は重く、未来に希望を見出せません。」彼の目には涙が浮かんでいた。彼は国の滅びを予感し、自分自身の運命にも恐れを感じていた。

その夜、神の言葉がバルクに臨んだ。

「バルクよ、お前はこのように嘆く。『私の苦しみは大きい。主は私の痛みに悲しみを加えられた。私は疲れ果て、安息を見いだせない』と。」

神の声は厳しくも、深い慈愛に満ちていた。

「見よ、わたしは今、わたしが築いたものを破壊し、わたしが植えたものを引き抜こうとしている。それなのに、お前は自分のために大きなことを求めようとするのか。求めてはならない。見よ、わたしはすべての肉なる者に災いをもたらそうとしている。しかし、お前の命だけは、どこへ行っても戦利品として与える。」

バルクは震えながらその言葉を受け止めた。神は彼の苦しみを無視したのではなく、むしろ大きな歴史の流れの中での彼の立場を明らかにされた。神はユダの滅びを許容し、バビロンによる裁きを決意しておられた。しかし、その中でもバルク個人には約束を与えられた。「お前の命は守られる。」

この言葉を聞いたバルクは、初めて自分の苦しみの意味を悟った。彼は自分自身の願いや野心を捨て、神の計画に従うことを決意した。たとえ国が滅びようとも、神は真実な方であり、ご自身に従う者を見捨てない。

それからバルクは、以前にも増してエレミヤに仕え、神の言葉を忠実に記し続けた。彼の心には平安が訪れ、もはや自分の運命を恐れることはなくなった。神が共におられる限り、彼はどこにいても守られることを知っていたからだ。

**結び**

バルクの物語は、苦しみの中でも神に信頼し続けることの大切さを教えている。神は時に、私たちの願いをそのまま叶えるのではなく、より大きなご計画の中で私たちを導かれる。バルクは自分の命が守られるという約束を受け、神の御心に従って歩んだ。私たちもまた、どんな状況の中でも神の約束に希望を置き、その導きに従う者でありたい。

「わたしはあなたと共にいて、あなたを守る。」(エレミヤ45章の精神に基づく)

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