聖書

「オリーブ山の祈り:イエスと弟子たちの絆」

**ヨハネによる福音書 第17章**
**イエスの祈り**

夕闇が迫る中、オリーブ山の静かな斜面にて、イエスは弟子たちと共にいた。過越の祭りの夜、エルサレムの町にはまだ人々のざわめきが残っていたが、この場所には神聖な静寂が満ちていた。イエスの目には、深い慈愛と悲しみ、そして確かな決意が宿っていた。彼は天を見上げ、父なる神に祈りをささげ始めた。

「父よ、時が来ました。あなたの子があなたの栄光を現すように、子にも栄光を与えてください。」

その声は温かく、しかし力強く響いた。弟子たちは息をひそめ、師の言葉に耳を傾けた。イエスは、自分がこの世に来た使命を果たす時が近づいていることを悟っていた。彼は、父から与えられた人々を守り、導いてきた。今、彼らを父の手に委ねる時が来たのだ。

「わたしは、あなたがわたしに与えてくださった人々に、あなたの御名を現しました。彼らはあなたのものであり、あなたは彼らをわたしにお与えになりました。そして、彼らはあなたの言葉を守りました。」

イエスの言葉には、弟子たちに対する深い愛がにじみ出ていた。彼らは世から選び出され、イエスに従い、その教えを信じた。確かに、彼らは未熟で、時には疑い、つまずくこともあった。しかし、イエスは彼らを見捨てず、真理をもって彼らを聖なる者とされた。

「わたしはもはや世にはいません。しかし、彼らは世に残ります。わたしはあなたのもとに行きます。聖なる父よ、わたしに与えてくださった御名によって彼らを守ってください。それは、わたしたちと同じように、彼らも一つとなるためです。」

祈りはさらに深く、広がっていった。イエスは、自分が去った後、弟子たちが直面する試練を思い、彼らのためにとりなしを続けた。

「わたしは彼らにあなたの言葉を与えました。しかし、世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないように、彼らも世のものではないからです。彼らを世から取り去るのではなく、悪い者から守ってください。」

そして、イエスは、弟子たちだけではなく、彼らの言葉を通して自分を信じるすべての者のためにも祈った。

「わたしは彼らのためだけではなく、彼らの言葉によってわたしを信じる人々のためにもお願いします。父よ、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、すべての人々が一つとなるためです。そうすれば、世は、あなたがわたしをお遣わしになったことを信じるでしょう。」

イエスの祈りは、愛と一致への願いに満ちていた。彼は、神と人、人と人との間にあるべき完全な交わりを求めた。その声は、天に届かんとするかのように、力強く、しかし優しく響いた。

「父よ、わたしの願いは、あなたがわたしに与えてくださった人々が、わたしのいる所に共にいることです。そうして、天地が造られる前からわたしを愛してくださったあなたの栄光を、彼らにも見せてください。」

祈りが終わると、夜の静けさが再び訪れた。弟子たちは、この祈りが単なる別れの言葉ではなく、永遠に続く約束であることを感じ取った。イエスの眼差しは、彼ら一人一人に向けられ、深い平安が心に満ちた。

やがて、ゲツセマネの園に足を進める時が来た。イエスは、父の御心に従い、十字架への道を歩み始める。しかし、この祈りは、彼の愛が永遠に続くことを証ししていた。弟子たちは、この夜の言葉を胸に刻み、やがて来る聖霊の力によって、全世界にこの愛を宣べ伝える者となるのである。

**(ヨハネによる福音書 第17章に基づく物語)**

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