**ヨシュア記6章:エリコの陥落**
太陽がまだ東の山々に顔を出さぬ頃、ヨシュアは陣営の外に立ち、冷たい朝風に身を震わせながら、遠くにそびえるエリコの城壁を眺めていた。その城は堅固で、高くそびえる壁は、神の民にとって大きな障壁のように見えた。しかし、主はヨシュアにこう約束された。「見よ、わたしはエリコとその王、および勇士たちを、あなたの手に渡した。」
ヨシュアは深く息を吸い、主の言葉を胸に刻んだ。彼は祭司たちとすべての戦士たちを集め、神の指示を伝えた。「七人の祭司が、七つの雄羊の角笛を持ち、契約の箱の前を行進せよ。六日間、毎日一度、城の周りを回り、七日目には七度回り、祭司たちが角笛を長く吹き鳴らしたとき、民は鬨の声をあげよ。そうすれば、城壁は崩れ落ちる。」
民はこの不思議な戦略に驚いたが、ヨシュアの確信に満ちた声に従うことにした。翌朝、夜明けとともに、祭司たちは雄羊の角笛を手に取り、契約の箱を担ぎ、武装した兵士たちが前後を固めた。一行は静かにエリコの城壁に向かって進み始めた。
エリコの城壁の上では、警戒していた兵士たちが、イスラエルの民の不気味な行進を見下ろした。「彼らは何をしているのだ?」「武器も持たず、ただ箱と笛を持って回っているぞ!」嘲笑や不安の声が混ざり合ったが、イスラエルの民はただ黙々と歩き続けた。角笛の音だけが、朝もやの中に響き渡った。
六日間、同じことが繰り返された。毎日一度、城の周りを回り、何も起こらないまま陣営に戻る。エリコの民は次第に慣れ、警戒を解き始めた。「彼らは何もできない。ただの儀式だ。」しかし、七日目の朝、状況は一変した。
夜明け前、イスラエルの民はいつもより早く起き、準備を整えた。この日は七度、城の周りを回らなければならなかった。祭司たちの足取りは重く、兵士たちの表情も引き締まっていた。六度回った後、ヨシュアは民に向かって叫んだ。「叫んではならない。声を出してはならない。角笛の音が響くまで、だ。」
七度目の回りが終わり、祭司たちが角笛を長く吹き鳴らした瞬間、ヨシュアは両手を高く掲げた。「叫べ! 主がこの町をあなたがたに賜った!」
そのとき、民全員が一斉に鬨の声をあげた。その轟音は天地を揺るがし、たちまちエリコの城壁が根元からぐらりと傾いた。石が砕け、塵が舞い上がり、巨大な壁が崩れ落ちる音が響き渡った。城壁の上に立っていた兵士たちは、崩れる石の下敷きとなり、町の中は大混乱に陥った。
イスラエルの戦士たちは、崩れた壁の隙間からなだれ込み、神の命じられた通り、金、銀、銅、鉄の器は主のものとし、それ以外はすべて滅ぼし尽くした。ただ、遊女ラハブとその家族は、かつてイスラエルの斥候をかくまったゆえに、ヨシュアの命で救われた。
こうして、エリコは陥落した。人々の力ではなく、神の御業によって。ヨシュアは民に向かって宣言した。「この日、主が行われたことを覚えよ。主の言葉に従う者には、不可能はない。」
そして、焼け落ちる町を背に、イスラエルの民は次の戦いへと進んでいった。主の約束は真実であり、彼らの信仰はさらに強められたのである。