聖書

「約束の地と逃れの町:申命記19章の教え」

**申命記19章に基づく物語**

荒野を越え、約束の地の目前に立っていたイスラエルの民は、モーセの周りに集まった。日が沈み始め、砂漠の冷たい風が彼らの衣を揺らした。モーセは神から授けられた律法を民に語り継ぐため、静かに口を開いた。

「聞け、イスラエルよ。主なる神は、あなたがたが約束の地に入った後、正義と憐れみをもって生きるように命じておられる。」

モーセの声は力強く、民は息をひそめて耳を傾けた。彼は続けた。

「あなたがたの神、主が与えられる地では、三つの町を選び、そこを『逃れの町』としなければならない。これらの町は、過って人を殺した者が逃れる場所となる。復讐の念に燃える者から守るためだ。」

民の中から、一人の若者が尋ねた。

「しかし、モーセよ、故意に人を殺した者はどうなるのですか?」

モーセは深く頷き、答えた。

「もし人が憎しみをもって隠れて待ち伏せし、友を打ち殺すなら、その者は『逃れの町』に逃れることを許されない。あなたがたは彼を長老たちの前に引き出し、正しい裁きを受けさせなければならない。血は血をもって償われる。しかし、過って――斧の頭が柄から抜け、隣人を打ち殺すような場合――その者は逃れの町に走り、命を守ることができる。」

モーセの言葉は、民の心に深く刻まれた。彼はさらに語った。

「逃れの町への道は、整えられねばならない。すべての部族が容易にそこへ行けるようにし、罪のない血が流されることがないようにせよ。主は正義を愛し、無実の者が虐げられることを憎まれる。」

夜更け、松明の炎がゆらめく中で、モーセは最後に警告を発した。

「あなたがたの土地で、隣人に対する偽りの証言をしてはならない。もし悪意のある証人が立ち、無実の者を訴えるなら、祭司と裁判官は詳しく調べ、偽りの証言をした者には、その者が企てた罰と同じ罰を加えなければならない。悪を除き去り、民が正しく生きるようにするためだ。」

民は静かにうなずき、神の律法の重みを胸に感じた。逃れの町は、過ちを犯した者への神の憐れみであり、故意の罪人への厳しい裁きは、神の正義の現れであった。

こうして、イスラエルの民は、約束の地でいかに生きるべきかを学んだ。神の律法は、単なる規則ではなく、彼らが神と共に歩むための導きの光であった。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です