**詩編78篇に基づく物語:忘れられた契約**
かつて、エジプトの奴隷の地から導き出されたイスラエルの民は、荒野を越え、約束の地へと向かっていた。彼らは目の前で紅海が二つに裂かれ、天からマナが降り、岩から水が湧き出るのを見た。神の力は彼らの前で輝き、恵みは朝ごとに新しいものだった。しかし、彼らの心は頑なで、その魂は神に逆らう者となった。
### **荒野の試練**
日が昇り、砂漠の熱風が肌を焼く中、民はつぶやき始めた。「なぜ神は私たちをここに連れて来たのか?エジプトでは肉の鍋があり、パンに飽き足りていたのに!」彼らの不満は荒野に響き渡り、モーセの心を重くした。主は彼らの叫びを聞き、夕べにはうずらを飛来させ、朝には天からのパンを与えた。しかし、神は彼らの心の内を見抜いておられた。
「彼らはわたしを試み、
心の欲望のままに食物を求めた。
彼らは神に向かって、
『荒れ野で神は食事を備えることができるだろうか?』と言った。」
彼らは神の奇跡を目の当たりにしながら、なお疑い、貪欲に更なるしるしを求めた。
### **岩から湧く水**
ある日、民は喉の渇きに耐えかね、再びモーセに逆らった。「なぜ私たちをエジプトから連れ出したのか?私たちも家畜も渇きで死ぬというのか!」モーセは主に叫び、主は彼に命じられた。「杖を取り、岩の前で民の目の前でそれを打て。水が出て、彼らは飲むことができる。」
モーセが岩を打つと、清い水がほとばしり出た。民は喜んで飲んだが、彼らの心には感謝がなかった。神は怒りを燃やされた。「彼らはわたしを信じず、
わたしの救いを認めなかった。」
### **約束の地への背信**
ついに、イスラエルの民は約束の地カナンの境に立った。偵察が戻り、その地の豊かさを報告したが、同時に強大な敵の存在を語った。民は恐れ、再び神を疑った。「神は私たちを滅ぼすために連れ出したのだ!あの巨人の前に私たちは弱く、打ち勝てない!」
ヨシュアとカレブだけが主に信頼し、「主が共におられるなら、彼らは私たちの餌食にすぎない!」と叫んだ。しかし、民は石を取り上げ、二人を打ち殺そうとした。主の怒りは燃え上がり、彼らに宣言された。「あなたがたはわたしを信じなかった。だから、この世代の者は誰も約束の地に入ることはできない。荒野で死に絶えるのだ。」
### **神の忍耐と裁き**
四十年の間、イスラエルは荒野をさまよった。神は彼らを滅ぼすこともできたが、そうはされなかった。彼らが悔い改めることを願い、なおもマナを与え、導かれた。しかし、世代が変わり、約束の地に入った新しい民でさえ、すぐに神を忘れた。
彼らは異教の神々に心を奪われ、高き所で偶像に犠牲をささげた。主は憤り、敵の手に彼らを渡された。苦しみの中、彼らは再び神に叫び、主は憐れんで救い出された。しかし、彼らはまたすぐに背き、偽りの誓いを立てた。
### **ダビデの選びと希望**
ついに、神はユダの部族を選び、その僕ダビデを牧者として立てられた。ダビデは真心から神に従い、羊を導くように民を養った。主は彼と契約を結び、その子孫から救い主が起こされることを約束された。
「わたしの民はわたしの導きに耳を傾け、
イスラエルはわたしの道に歩むならば、
わたしは速やかに彼らの敵を屈服させ、
彼らを苦しめる者に手を返す。」
しかし、物語は終わらなかった。後の世代もまた、神の恵みを忘れ、自らの欲望に従って歩んだ。それでも、神の慈しみは尽きることがなく、彼らを呼び続けられた。
**こうして、詩編の語り手は警告する。**
「聞け、わが民よ、わたしの教えを。
耳を傾け、わたしの口の言葉を。
わたしはたとえを語り、
昔の隠された事を解き明かそう。
それを子孫に伝え、
主の栄光とその力を、
彼らが成し遂げられた驚くべき御業を、
次の世代に知らせよう。」
神は常に真実であり、民は繰り返し背いた。しかし、主の契約は変わらず、救いの約束は永遠に続く。この物語は、神の忍耐と人間の不実を映し出しつつ、なお希望を見失わないようにと、後の世代への戒めとして語り継がれるのである。