**詩篇70篇に基づく物語:神の救いを求めるダビデの祈り**
荒野の岩陰に身を隠し、ダビデは額に汗を浮かべながら、唇を震わせて祈っていた。周囲には敵の足音が響き、彼を捕らえようとする者たちの声が風に乗って聞こえてくる。彼の心は焦りと恐れで満ちていたが、その目は天を仰ぎ、神への信頼を失ってはいなかった。
「ああ、神よ。私を急いで救い出してください。私を助けようと急いでください。」
彼の声は切実で、荒野の静寂を破った。敵は近づき、彼の命を奪おうとしていた。ダビデはかつて、サウル王の怒りを買い、何年も逃亡生活を送っていた。今また、新たな敵が彼を苦しめようとしていた。彼の心には、神の救いを待ち望む思いと、敵の嘲笑に対する怒りが入り混じっていた。
「私を探し求める者たちを辱め、恥に落としてください。私の滅びを願う者たちを退け、嘲りを受けるようにしてください。」
彼の祈りは、単なる願いではなく、神の正義への叫びだった。ダビデは、自分が正しい者ではないことを知っていた。彼も罪を犯し、過ちを重ねてきた。しかし、今この瞬間、彼は神の前にへりくだり、ただ神の憐れみだけを求めていた。
「しかし、神を求めるすべての者は、あなたによって喜び、楽しむように。『神は偉大だ』と心から言う者たちが、いつまでもあなたを賛美しますように。」
ダビデの祈りは、やがて静かな確信へと変わっていった。敵の足音はまだ聞こえるが、彼の心には平安が訪れ始めた。神は沈黙しておられるかもしれないが、決して見捨ててはおられない。彼は過去に何度も神の救いを体験してきた。獅子の爪から、巨人ゴリアテの槍から、そしてサウルの槍からも、神は彼を守り抜かれた。
「しかし、私は貧しく、乏しい。神よ、急いで私のところに来てください。あなたこそ、私の助け、私の救い主。ああ、主よ、遅れないでください。」
彼の言葉が終わるやいなや、遠くから雷鳴のような轟音が響いた。風が激しく吹き荒れ、敵の叫び声が混乱に包まれた。神の介入が始まったのだ。ダビデは岩陰から這い出し、目を凝らした。敵の陣営はパニックに陥り、互いに衝突し始めている。
神は、ダビデの祈りに応えられた。
敵は退散し、ダビデは再び自由の身となった。彼はひざまずき、涙を流しながら神を賛美した。
「あなたは偉大な神。あなたの慈しみは永遠に続く。」
こうしてダビデは、神の救いを体験し、詩篇70篇の祈りを後の世代に残した。それは、苦しむすべての者が神に叫び、救いを待ち望むための導きの言葉となったのである。