聖書

ヨナタンの信仰と蜜の奇跡

さて、サウル王の息子ヨナタンは、従卒の若者に言った。「さあ、我々はペリシテ人の前哨陣地へ渡って行こう。」しかし、父にはそのことを告げなかった。サウルはゲバの郊外、石榴の木の下にとどまり、共にいる民はおよそ六百人であった。

その日、ヨナタンは従卒に言った。「見よ、我々はあの無割礼の者どもの陣営へ下って行く。主が我々のために働かれるかもしれぬ。主が救うのに、多くの者もわずかな者も妨げにはならぬからだ。」従卒は答えた。「あなたの心のままに全てを行いなさい。見よ、私はあなたと一心同体です。」ヨナタンは言った。「さあ、我々は向こうへ渡り、彼らに身を現そう。もし彼らが、『我々のところへ登って来い』と言えば、我々は登ろう。それは主が彼らを我々の手に渡された証拠だからだ。」

こうして二人はペリシテ人の陣営に身を現した。ペリシテ人は言った。「見よ、ヘブル人らが隠れていた穴から出て来た。」陣営の者たちはヨナタンとその従卒に呼びかけて言った。「我々のところへ登って来い。お前たちに一物教えてやる。」そこでヨナタンは従卒に言った。「私の後について登れ。主が彼らをイスラエルの手に渡されたのだ。」

ヨナタンは両手両足を使ってよじ登り、従卒もその後を追った。ペリシテ人らはヨナタンの前に倒れ、従卒もその後ろで彼らを打ち殺した。この最初の撃ち方は、ヨナタンとその従卒が約二十人を、おおよそ一反の耕地の半分の範囲で打ち倒したのであった。

すると陣営の中も野営地も、民全体の中にも恐怖が走った。前哨部隊も、略奪隊も震え上がり、地もまた震えた。それは神からの震いであった。

サウルの見張りの者たちは、ペリシテ人の陣営が右往左往して崩れ行くのを見た。サウルは民に言った。「人数を調べて、誰が出て行ったかを見よ。」調べてみると、ヨナタンとその従卒がいないことが分かった。

サウルはアヒヤに言った。「主の契約の箱をここに持って来い。」その時、主の契約の箱はイスラエルの民と共にあったからである。サウルが祭司と語っている間も、ペリシテ陣営の騒ぎはますます大きくなっていった。

サウルは祭司に言った。「手を引け。」そしてサウルと共にいる民はみな、鬨の声をあげて戦場に集まった。見よ、ペリシテ人はお互いの剣で打ち合い、非常な混乱状態に陥っていた。

かつてペリシテ人と共にいたヘブル人たちも、周囲から集まってイスラエル側に加わった。またエフライムの山地に身を隠していたイスラエル人たちも、ペリシテ人が逃げるのを聞いて、彼らを追撃するために戦いに出てきた。こうして主はその日、イスラエルを救われた。戦いはベト・アベンの向こうへと及んだ。

その日、イスラエルの人々は疲れ果てていた。サウルは民に誓わせて言った。「夕方までに、私の敵に対する復讐が終わる前に食物を口にする者は呪われよ。」それゆえ、民の誰一人として食物を口にしなかった。

全地には蜜のしたたる森があった。民が森に入ると、見よ、地面に蜜が流れていた。しかし民は誓いを恐れて、誰もそれを口にしなかった。

しかしヨナタンは父が民に誓わせたことを聞いていなかった。彼は杖の先を伸ばして蜜の巣に浸し、手を口に運んだ。すると彼の目は輝きを増した。民の一人が彼に言った。「あなたの父は、『今日食物を口にする者は呪われよ』と民に厳かに誓わせました。それで民は疲れ果てているのです。」

ヨナタンは答えた。「父は国を悩ませました。ご覧なさい、私が少しばかりこの蜜を味わっただけで、私の目がこんなにも澄み渡ったのです。もし今日、民が敵から奪った獲物を自由に食べていたなら、今ごろはもっと多くのペリシテ人を打ち倒せたでしょうに。」

その日、イスラエルはペリシテ人をミクマシュからアヤロンまで打ち破った。民は非常に疲れ果てていた。民は奪った羊や牛や子牛を捕らえ、血のまま地面に屠り、肉を食べた。それは血のまま食べることで、主に対する罪であると告げられると、サウルは言った。「あなたがたは不誠実であった。私のところに大きな石を転がして来い。」

さらにサウルは言った。「民の中を散り散りに行き、『おのおの自分の牛や羊をここに連れて来て、ここで屠って食べよ。主に対する罪を犯して、血のまま食べてはならない』と言え。」その夜、民は皆、それぞれ自分の牛を連れて来て、そこで屠った。

こうしてサウルは主のために祭壇を築いた。これは彼が主のために築いた最初の祭壇であった。

サウルは言った。「我々は夜のうちにペリシテ人を追って下り、夜明けまで彼らから略奪をし、一人も残すな。」民は答えた。「あなたの目に良いと思うことを全て行いなさい。」しかし祭司は言った。「ここで神に伺いを立てましょう。」

サウルは神に伺いを立てて言った。「私がペリシテ人を追って下るべきでしょうか。あなたは彼らをイスラエルの手に渡されるでしょうか。」しかし、その日、神は答えられなかった。

そこでサウルは言った。「民の長たち全員、近くに来なさい。今日この罪がどこにあるのかを知りなさい。イスラエルを救う主が生きておられる。たとえ私の子ヨナタンであっても、必ず死なねばならない。」民の中から誰一人として彼に答えなかった。

サウルは全イスラエルに言った。「あなたがたは一方の側に立ち、私と私の子ヨナタンは他方の側に立とう。」民はサウルに言った。「あなたの目に良いと思うことを行いなさい。」

サウルは主に言った。「イスラエルの神、主よ。なぜ今日、あなたの僕に答えられないのですか。もし私または私の子ヨナタンに罪があるなら、イスラエルの神、主よ、ウリムを与えてください。もしこの罪があなたの民イスラエルにあるなら、トンミムを与えてください。」そしてヨナタンとサウルが咎ありと示され、民は無罪と示された。

サウルは言った。「私と私の子ヨナタンの間でくじを引きなさい。」そしてヨナタンが咎ありと示された。

サウルはヨナタンに言った。「あなたが何をしたのか、私に告げなさい。」ヨナタンは言った。「私はただ、杖の先にちょっとした蜜を味わっただけです。ここに私は死を覚悟しています。」

サウルは言った。「神が私にこうして、ああして下さるように。ヨナタン、あなたは必ず死なねばならない。」しかし民はサウルに言った。「今日、このような大いなる救いをイスラエルにもたらしたヨナタンが死なねばならないのですか。決してそうではありません。主は生きておられます。ヨナタンの髪の毛一本も地に落ちてはなりません。なぜなら、彼は今日、神と共に働いたからです。」こうして民はヨナタンを救い、彼は死を免れた。

サウルはペリシテ人を追うのをやめ、ペリシテ人も自分たちの土地へ帰って行った。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です