主は嵐の中からヨブに答えられた。その声は天地を揺るがす雷鳴のごとく、万物の根源を問う深遠な響きをもっていた。
「知識もなく言葉を重ね、英知を暗くする者はだれか。勇士のように腰に帯を締めよ。わたしはお前に尋ねる、教えてみよ」
主の御声は荒れ狂う風雨を貫き、ヨブの魂を揺さぶった。雲の奥から光がさし、天地創造の記憶がよみがえる。
「わたしが大地の基を定めたとき、お前はどこにいたのか。知っているなら述べてみよ。だれがその基準を定めたか、あなたは知っているのか。あるいは、だれが測り縄をその上に張ったのか。その土台は何の上に据えられたのか。その隅の石を据えた者はだれか。そのとき、明けの星々は共に歌い、神の子たちは皆、喜び叫んだ」
主の言葉に、ヨブは天地創造の壮大な劇を目の当たりにした。混沌の中から秩序が生まれ、星々が調和の歌を奏でる光景が脳裏に焼きついた。
「潮の及ぶ所を定め、戸を閉じて中に入らないようにしたのはだれか。『ここまで来るが、これ以上は及ばない。お前の高ぶる波はここで止まれ』と言って、雲に衣を着せ、深淵を暗い布で包んだのはだれか」
ヨブは大海原の境界線が引かれる瞬間を見た。波が岩に砕け散り、潮が砂浜をなめるが、それ以上に進むことは許されない。主の御声が自然の法則そのものとなって世界を支配している。
「お前は朝に命令を下し、曙にその場を知らせたことがあるか。大地を捕らえて、悪しき者たちを揺り落とし、印章が粘土に押されるように形を整えたことがあるか。彼らは衣のように光を帯び、その悪しき行いは力によって退けられる」
ヨブは夜明けが主の御手によって毎日新たに創造される光景を幻視した。闇が退き、光が勝利する瞬間の神聖さに息をのんだ。
「あなたは深淵の源に行き着いたか。死の陰の広がりを見たことがあるか。死の門を見た者はあるか。その広がりを見た者はあるか。あなたは全地の広がりを知っているか。知っているなら、それを言い表してみよ」
主の問いかけは次第に深淵へと向かい、ヨブは知恵の限界を思い知らされた。彼はこれまで自分の苦しみだけを見つめていたが、今や宇宙の神秘の前にひれ伏すほかなかった。
「光の住む所はどこか。闇のいる所はどこか。あなたはその境まで行き着くことができるか。その家の道を知っているか。あなたはそのときに生まれたのだから、あなたの年は多いのだろう」
主はさらに問い続けられた。雪の倉庫、雹の武器庫を見たことがあるか。雷雨の道、東風が地に吹き散らされる道を知っているか。雨のための水路、稲妻のための道筋を定めたのはだれか。
「だれが知恵を内包する雲に雨を降らせ、だれが天の雷鳴を響かせるか。だれが葦原に雨を降らせ、だれが荒野の草を生えさせるか。雨の父はいるか。露の滴を生んだのはだれか。氷はだれの胎内から出るのか。天の霜はだれが生むのか」
ヨブは天地の営みの一つ一つが、すべて主の御手によることを悟った。彼はこれまで自分の正しさを主張していたが、今や創造主の前では何も語る言葉を持たなかった。
主はさらに星々の運行について問われた。プレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの帯を解くことができるか。十二宮をその時に従って導き出し、北斗とその子星を導くことができるか。
「あなたは天の法則を知っているか。その支配を地に定めることができるか」
ヨブは天の高みに思いをはせた。無数の星々が完璧な調和をもって運行する光景。一つの星もその定められた道から外れることはない。この秩序こそが主の知恵の現れであった。
主は最後に獣たちについて語られた。若獅子のために獲物を備え、空腹の子獅たちが満ち足りるようにするのはだれか。山々を去って行く野山羊が子を産む時を見守るのはだれか。野ろばを自由に放ち、その縄を解くのはだれか。
「あなたが角を強くし、たてがみを豊かにするのか。猛獅子が洞穴にうずくまり、茂みに身を潜めて待つ。あなたが獲物を満たすので、彼らは満ち足りるのか」
ヨブは天地万物が主の深い配慮のもとに生かされていることを知った。一羽の雀も、一匹の野の百合も、主の知らぬうちに倒れることはない。ましてや、主の似姿に造られた人間を、主が顧みられないはずがない。
嵐が静まり、主の御声が遠のいていく。ヨブは顔を伏せ、塵と灰の上で悔い改めた。彼は主を見た。それまで耳にしてきたことを、今この目で見たのである。それゆえ、自分をさげしめ、塵と灰の中で悔い改める。




