聖書

主の選びと永遠の約束

蒸し暑いエルサレムの午後、ヤコブは祖父の作業場で羊の皮をなめす仕事を手伝っていた。窓から差し込む陽の光りに塵が舞い、革の匂いがむっとする空気の中、老人は突然作業を止めて遠くを見つめた。

「ヤコブよ、あの雨雲を見てごらん」

少年は汗で濡れた額を手で拭いながら外を見た。西の空に積乱雲が湧き上がり、やがて遠雷が聞こえ始める。祖父はゆっくりと口を開いた。

「主が雲を起こし、地の果てから稲妻を呼び寄せる。主が風を蔵から出し、雨を降らせる。これらすべてが主の御心のままに行われるのだ」

その言葉と同時に、大粒の雨が乾いた石畳を打ち始めた。雨粒は次第に激しさを増し、やがて土埃の立つ路地を洗い流していく。祖父は雨音に耳を傾けながら、深いため息をついた。

「お前がまだ幼かった頃、バビロンから帰還した者たちの話を覚えているか? あの日々、私たちは捕囚の地でどのように主を賛美したことか。主がエジプトの初子を撃たれたこと、ファラオとその家来たちにしるしと奇跡を行われたことを」

老人の目には涙がにじんでいた。彼は革なめし用の道具を置き、窓辺に立って雨に濡れる街並みを見つめた。

「あの夜、過越の食事を急いで食べたイスラエルの子らを覚えている。主は大国を打ち、有力な王たちを殺された。アモリ人の王シホン、バシャンの王オグ、カナンのすべての王国を。これらすべてをイスラエルの嗣業として与えられたのだ」

ヤコブは祖父の語る言葉に聞き入りながら、遠くオリーブ山のかなたに虹がかかるのを見た。雨は小降りになり、夕日が雲の切れ間から差し込んでいた。

「祖父さん、なぜ主は私たちを選ばれたのですか?」

老人は少年の肩に手を置き、静かに答えた。

「主がご自身のものとしてヤコブを選び、イスラエルを宝とされたからだ。私たちは主の証人として、主の御名を永遠に語り継がねばならない」

夕暮れが迫り、街には祭司たちのラッパの音が響き渡った。祖父は祭壇の方に向き直り、祈るように呟いた。

「主よ、あなたの御名はとこしえに続き、あなたの誉れは代々にわたって及ぶ。主はご自分の民を裁き、その僕らにあわれみをかけられる」

二人は暗くなり始めた作業場で、雨上がりの清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。遠くで神殿から聞こえる賛美の歌声に、祖父は自然に口ずさみ始めた。

「偶像は銀や金、人の手のわざにすぎない。口があっても語れず、目があっても見えない。それを造る者も、それに信頼する者も、みな偶像のようになる」

ヤコブは祖父の祈りの言葉にうなずきながら、今日学んだことを心に刻んだ。夕闇の中、蝋燭に火が灯され、二人の長い影が壁に揺れた。雨上がりのエルサレムには、主を賛美する歌声がこだましていた。

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