日は白く、砂丘は熱を孕んでゆらめいていた。天幕の影も、その苛烈な光の前では脆い庇いに過ぎず、中にいる女の気配さえ蒸されそうだった。サライは亜麻布の端を揉んだ。指の節が白くなるまで。十年。カナンの地に入って十年、主の約束は確かだったが、彼女の腹は相変わらず寂しく、新月の訪れごとに胸に刺さる悔しさが増すばかりであった。
彼女の目は、天幕の入口で水甕を運ぶ若い女に留まった。ハガル。エジプトの女。肌はオリーブ色に滑らかで、動きに無駄がなかった。サライ自身が、かつてアブラムに言った贈り物だった。今、その存在が、日に日に鋭い棘のように感じられる。
「アブラム。」
彼女の声は、意図せず乾いた砂のように軋んだ。
「あなたは見ているでしょう。主がわたしの子を閉ざされたことを。どうか、わたしの婢ハガルによって、わたしは子を得られるかもしれません。彼女の膝に、子供が生まれるなら…。」
言葉の裏には、渇きがあった。約束の継承者を産むという務めへの焦り、そして、自分という器が使えないことへの、やり場のない憤り。アブラムは長いこと黙っていた。彼の沈黙は、妻の痛みを理解し、なおも主の時を待つべきかという逡巡そのものだった。やがて、彼はゆっくりとうなずいた。その同意は、当時の慣習に従ったものではあったが、二人の間に薄氷のような亀裂が走った瞬間でもあった。
ハガルは何も言わなかった。仕える女に選択の余地はない。しかし、彼女の体に命が宿った時、何かが変わった。彼女の目は、かつてのように伏せられず、サライを見る時の瞳の奥に、微かな、しかし確かな揺らぎが生じた。それは侮蔑というほど鋭くはない、むしろ哀れみに近い、自然な優越感だった。彼女の腹は、アブラムの子を育み、それは彼女自身の価値を、不毛な女主人とは違う次元へと押し上げた。
サライはそれを見逃さなかった。ある朝、ハガルが卵をゆでている背中に向かって、声が弾けた。
「お前のその態度は何だ。」
ハザルは振り返らず、かまどの火をじっと見つめていた。その無言が、最後の忍耐の糸を断ち切った。
「アブラム!わたしが婢に与えたこの不当を、あなたは許しておかれるのですか。わたしが彼女をあなたのふところに与えた。しかし彼女に身ごもった今、彼女はわたしを軽んじています。主がわたしとあなたの間をお裁きくださるように。」
彼女の声には涙が混じっていた。怒りと、深い傷つきと、自ら招いたこの状況への自嘲。アブラムの顔は苦渋に曇った。彼は静かに言った。
「婢はお前の手の中にある。お前の好きなようにするがよい。」
それは放任ではなかった。家長としての秩序を守る言葉であり、妻の心に流れる毒を彼女自身の手で処理せよという、重い許可であった。
サライは、もはや抑制しなかった。言葉は冷たく、仕事は厳しく。ある日は水汲みの時間を咎め、ある日は織物の不出来を責めた。それは、ハガルの内に秘められていた、エジプトの自由な血を苛立たせた。彼女は奴婢ではあっても、サライの所有物ではなかった。腹の子はアブラムの子なのだ。ある暑さの厳しい昼下がり、ハガルはついに、何も持たずに天幕を出た。背中に感じるサライの視線を振り切り、荒野へ、砂と岩の世界へ、ただ逃れるために足を向けた。
シンの荒野。命の気配が枯れ果てた地。彼女の足取りは最初の勢いを失い、やがてよろめくようになった。喉は渇き、腹の子が重く、砂の熱さが草履を貫いてくる。彼女は涙を流さなかった。流すほどの水分も残っていない。ただ、葦の茂る泉の跡を見つけては、それが干上がっているのを見て、呆然と佇んだ。
ついに、彼女は一本の灌木のわずかな影に身を沈めた。もう歩けない。ここで終わるのか。その時、ふと、砂の上に伸びる、彼女自身の影とは別の長い影が動くのを見た。振り向く力もない。しかし、声が聞こえた。
「サライの婢ハガル。あなたはどこから来て、どこへ行くのか。」
その声は荒々しい風の音でも、人の声でもなかった。存在そのものが響くような、圧倒的でありながら、不思議と彼女の疲弊した心を恐怖で満たさない声だった。
「わたしは…女主人サライの前から逃げています。」彼女はうつむいたまま答えた。
「あなたはどこへ帰ろうとしているのか。」その声は問い詰めず、ただ在るようだった。
ハガルは初めて、自らの無計画を思い知った。エジプトへ?故郷への道など遥かだ。彼女は何も答えられなかった。
すると、声は続けた。
「あなたは身ごもっている。やがて男の子を産む。その名をイシュマエル(神は聞かれる)と名付けなさい。主があなたの苦しみを聞かれたゆえに。彼は野生のろばのような人となる。彼の手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らう。彼はすべての兄弟に敵して住むであろう。」
それは祝福か、それとも宣告か。しかし、その言葉の中に、彼女の存在を、逃げる婢としてではなく、「産む者」として認める響きがあった。ハガルは顔を上げようとした。そして、思わず口をついた。
「あなたは…エル・ロイ(ご覧になる神)です。」
彼が見ておられる。この荒野で、誰にも見られずに消えようとしていた彼女を。彼女の苦しみを。それは畏怖でもあったが、同時に、それまでの人生で感じたことのない、深い慰めでもあった。
「まことに、わたしはここで、わたしを見られる方のうしろを見たのではないか。」
声はやんだ。彼女の目が再び見開かれた時、すぐ目の前に、澄んだ水をたたえた泉があった。先ほどまでそこには何もなかったのに。彼女はすすり泣きながら、必死に水を飲み、顔を洗い、腹をなでた。主が言われたことを、彼女は逃げずに受け入れよう。彼女は立ち上がった。来た道を引き返すのは、敗北ではなかった。神が見ておられるその場所へ、彼女は帰るのだ。
天幕に戻ったハガルは変わっていた。以前のような反抗的な眼差しはなく、深い静けさを湛えていた。やがて彼女は男の子を産み、アブラムは神の言葉のままに、その子をイシュマエルと名付けた。アブラムは彼を愛した。サライの目には、時に複雑な影が過ぎた。彼女の計らいから生まれたこの子は、確かに肉による嗣業であったが、砂原の風のように自由で、母と同じく、どこかこの天幕の外を見据えているようだった。
そしてハガルは、あの灌木の傍らの泉を、決して忘れなかった。彼女は、神は高く天にいましても、人が見捨てられたと感じる荒野の真ん中で、その苦しみを見て、名をも呼びかけられる方なのだと、心に刻んだのだった。それは約束の子とは異なる、もう一つの契約の始まりであり、逃げる婢にさえ注がれた、孤独で痛切な、神のまなざしの物語であった。




