砂漠の風は、昼の灼熱が去った後でも、岩肌に残る熱を運び、亜麻の幕屋の周りをゆるやかに旋っていた。モーセは、幕屋の入口近くに立ち、目を閉じた。耳には、まだ、シナイの山で響いたあの声が残っている。細部にわたる指示の数々。今、彼の前に広がる神聖な空間は、まさにその声の具現であった。
彼の背後で、工匠ベツァルエルとその助手オホリアブが、アカシヤ材の良い木材を整える音が、規則正しく響く。金箔を貼る作業は終わっていた。彼らが今、細心の注意を払っているのは、新しいもの、特別なもの――香をたくための壇の制作であった。
「長さ一キュビト、幅一キュビト、高さ二キュビト」。モーセは脳裏に焼き付いた寸法を繰り返す。正方形の台。それは、全焼の燔祭の壇や、貢ぎ物の机とも、また洗盤の台とも異なる、より小さく、しかし際立った存在となるはずだった。その目的はただ一つ。「わたしの前にささげる香をたくため」。
ベツァルエルは、壇の頂部を仕上げていた。縁には、はめ込み細工で金の飾り縁が施されている。両側には、担ぎ棒を通すための金環が取り付けられた。彼の指は、木材の滑らかさ、金の冷たさを確かめるように触れていた。これは、最も聖なる場所、至聖所の前に置かれる契約の箱とも、七枝の燭台とも、供えのパンの机とも違う。幕屋の中でも、聖所と呼ばれる区域、垂れ幕の手前に置かれるのだ。香の煙は、その垂れ幕をくぐり、神の臨在が宿るとされる奥の間へと、祈りのように立ち昇っていく。それがこの壇の意味だと、モーセは悟った。
作業は続く。彼はベツァルエルを呼び、別の指示を与えた。
「香料を調合する者を、心に知恵を授けられた者の中から選びなさい。それは聖別の香油となる」。
その調合法は、厳密かつ希少なものだった。流れる没薬五百シェケル、香ばしい肉桂の半量、二百五十シェケル。そして菖蒲二百五十シェケル。そして最上質の香料、ケシナイム五百シェケル。すべては聖所の重量である聖シェケルで計られる。これらを、一ヒンのオリーブ油の中に浸し、香油職人の技で混ぜ合わせる。出来上がったものは、「最も聖なるもの」と呼ばれた。幕屋とそのすべての用具、契約の箱に至るまで、これを注いで聖別する。祭司アロンとその子たちにも、それをもって聖別を行う。彼らの肉体にこの香油が注がれる時、彼らは「代々にわたって聖なる者」とされるのだ。
「しかし、」モーセの声は低く、しかし鋭く響いた。「これと同様のものを、一般の用途に作ってはならない。これを他者に塗る者、この配合を模倣する者は、民から断たれるであろう」。
言葉が空気に消えると、周囲の職人たちの手が一瞬止まった。神聖と俗との境界が、香料の配合比率という、目に見え、匂いで辨えられる形で示された。それは、物理的な柵以上の、不可侵の線であった。
その後、モーセは、香壇そのものについての、さらに厽かな規定を思い起こした。その壇の上でたく香は、特別に調合されねばならない。「聖なる香」として。 stacte、 onycha、 galbanum に、純粋な乳香を等しい割合で加え、塩を加えて混ぜ合わせ、純粋なもの、聖なるものとせよ。そしてそれを細かく砕く。幕屋の中、契約の箱の前の垂れ幕の前に安置する。その場所こそ、モーセが神と語り合う場所となる。
「この香を、あなたがた自身のため、同じように調合してはならない」。
もう一つの境界線。神の前で燃やされる香りは、日常のどんな良い匂いとも区別されねばならない。家庭で、あるいは個人的な楽しみとして、この香を再現することは、神への冒涜と見なされる。それは、神との独自の関係性、礼拝の核心を象徴していた。祈りは、神が定めた唯一の道を通して、特定の香りと共にささげられねばならなかった。
そして、最後の指示。それは、より現実的で、共同体全体に関わるものだった。
「あなたがたの魂を贖うために、贖い金を納めなさい」。
幕屋の建設と維持には、膨大な資材と労力がかかる。しかし、それ以上に重要なのは、民一人一人が、この聖なる事業に対して責任を分有しているという意識だ。そこで、二十歳以上のすべての男子は、貧富の差別なく、半シェケルずつを「聖所のシェケル」で納めることになった。金貨や銀貨ではなく、重量で。それは、身代金であり、彼らの命の贖いのしるしであった。集められた銀は、幕屋の仕事、すなわち、この香壇や洗盤や様々な用具のための鋳型や留め金として用いられる。それは、民全体が、彼らの救いの記念としての幕屋に、物理的にも参加していることを示す。一人の例外もなく、等しく。
月日が流れ、幕屋が完成し、奉献の日が来た。アロンは、聖別の香油を注がれ、彼の子らも同様にされた。彼らの身体からは、微かに、しかし確かに、没薬と肉桂と菖蒲とケシナイムの、複雑で深い、どこにもない芳香が漂った。それは、彼らが「聖別された」という、目に見えない印であった。
そして、聖所の中。新しい金の香壇の前にアロンは立った。手には、香を入れた金の香炉。心臓の鼓動が早い。彼は、定められた聖なる香を、炭火の上にそっと載せた。
一瞬の後、白く、芳醇な煙がゆらりと立ち昇った。それは、まっすぐに、そしてゆっくりと、垂れ幕の方へ、至聖所の方へと流れていく。その香りは、甘く、しかしどこか清冽で、スパイシーな底味があり、嗅ぐ者の心を、この世ならぬ静寂へと誘うようだった。煙は、垂れ幕に触れることもなく、それを透かして、向こう側へと消えていった。まるで、祈りそのものが、形を変えて、神の御前に通っていくかのようであった。
モーセは、入口の近くでそれを目にし、匂った。彼は思った。これは、単なる儀式ではない。これは、会見なのである。砂漠の真ん中で、脆く、罪深い人間の共同体が、聖なる方との「出会い」を持つための、細心の、そして愛に満ちた備えなのだ、と。香壇は、その出会いの、微妙で確かな「間」を形作っていた。煙は言葉となり、香りは約束となり、金の輝きは希望となった。荒れ野の只中で、天と地とが、かすかに、しかし確かに結ばれる瞬間。彼は、その煙がやがて、子孫たちの祈りをも運ぶ日が来ることを、漠然と感じ取っていた。




