その日も海は鉛色だった。パトモスと呼ばれる孤島の岩肌に、絶え間なく砕ける波の音だけが、時というものをかすかに刻んでいた。ヨハネは洞窟の入口近く、ごつごつとした岩のくぼみに腰を下ろし、遠く水平線をぼんやりと見つめていた。齢は確かに重い。背中と膝には、長い旅と鎖の重みが染み込んでいた。皇帝崇拝を拒んだその証として、この孤島に流されてから、どれほどの月日が経っただろう。祈りと記憶、そして時折訪れる深い静寂の中で過ぎる日々は、まるで潮の満ち干のように、繰り返しでありながら、何かを少しずつ運び去っていた。
夕暮れ時、いつものように安息日を覚えて祈りをささげていると、突然、背後から風が起こったような気配を感じた。しかし海風の方向とは違う。振り返っても、洞窟の奥は相変わらず薄暗い。けれども、空気が変わった。張りつめるような、鋭い緊張感。そして、声が聞こえた。
いや、「声」と呼ぶにはあまりにも太く、深く、幾重にも響く、楽器のような何かだった。それは背後からではなく、上から、いや、彼自身の内側からさえ聞こえてくるようで、全身の骨に震えが走った。
「あなたの見ることを、巻き物に書け。そして、それを七つの教会に送れ。エペソへ、スミルナへ、ペルガモへ、テアテラへ、サルデスへ、フィラデルヒアへ、ラオデキヤへ。」
言葉は明瞭だったが、その響きは、彼がこれまで聞いたどの人間の声とも異なり、地上の言語を超えた権威を宿していた。震える手で、脇に置いてあった羊皮紙と筆を取ろうとしたその時、ヨハネはようやく気づいた。光が増しているのだ。黄昏の闇が、金色に、それから白銀に変わり始め、洞窟の壁に長く歪んだ影を落としている。その光源は、彼の背後にある。
ゆっくりと、首をめぐらせる。呼吸が止まった。
洞窟の中央に、それは立っていた。人の子の姿をしていたが、その栄光と威厳は、人の域を遥かに超えていた。身にまとうのは、足元まで届く長い衣で、その布地は最も純度の高い乳白色の光そのもののように、微かに揺らめき、染め付けられたものではない自然な輝きを放っていた。胸には、一本の帯。それは純金で、複雑に、そして力強く打ち出された細工が施されており、まるで王と祭司の職が一つに織り込まれた証のようだった。
顔を見上げようとしたが、その顔に直接目を留めることはできなかった。太陽が真昼に輝く時のように、あまりにも強烈な光だった。髪の毛は、それでもかすかにその輪郭を認めることができた。それは羊毛のように白く、あるいは積もったばかりの新雪のように清らかで、深い知恵と永遠の時を思わせた。
そして目。彼の目が、ふとヨハネに向けられた時、ヨハネは膝の力を完全に失い、岩の上に崩れ落ちた。その目は炎のようだった。静かに、しかしすべてを看破し、あらゆる隠された思いを貫く、清めの火。その視線の前では、自分のかすかな不信仰も、弱さも、この島での孤独から生じた刹那的な疑問さえも、一切合財、透明になってしまうようだった。
その足は、炉の中で精錬され、白熱したしんちゅうのようだった。その足元に立つことなど、誰にもできないだろう。右手には、七つの星が握られていた。星々は、生きた宝石のようにきらめき、彼の掌のひらの中で、秩序だった軌道を描いて微かに回転しているように見えた。口からは、鋭い両刃の剣が伸びていた。それは金属の剣ではなく、言葉そのもの、真理そのものが刃となったものだ。一語で生かし、一語で裁く、そのような剣だ。
全ての感覚が圧倒され、ただ俯くしかなかったヨハネの頭上に、再びあの深淵のような声が響いた。
「恐れるな。わたしは最初であり、最後であり、また生きている者である。わたしは死んだことはあるが、見よ、世々限りなく生きている。そして、死と黄泉のかぎを持っている。」
その言葉に、凍りついた心臓に、ゆっくりと血が流れ始めるのを感じた。「恐れるな」。かつてガリラヤの湖畔で、嵐の中で聞いたのと同じ言葉。しかし今、この栄光の姿の中に、あのナザレのイエスの面影を見いだすことは、あまりにも困難に思えた。
声は続いた。「だから、あなたの見たこと、今ある事、これから後に起るべき事を、書きしるせ。わたしの右の手にある七つの星の奥義と、七つの金の燭台の奥義はこうである。七つの星は、七つの教会の御使たち、七つの燭台は、七つの教会である。」
その時、ヨハネは初めて、そのお方の周囲に、七つの燭台が配置されていることに気づいた。金で造られた、細工の優れた燭台。それぞれに灯る炎は、揺らめきながらも消えることはなく、暗い洞窟を聖所のように照らし出していた。彼は、かつてエルサレムの神殿で見た聖所の燭台を思い出した。しかし、ここには祭司もいなければ、幕屋もない。栄光の人の子こそが、真の聖所であり、燭台の光は、彼に属する群れの証しとして輝いているのだ。
長い沈黙が流れた。波の音が、再び遠くから聞こえてくるようになった。光は少しずつ和らぎ、あるいはヨハネの目がその輝きに慣れてきたのか、彼はようやく顔を上げ、涙で曇った視界を拭った。洞窟には、もうあの方はおられなかった。けれども、空気にはまだ、雷のような力と没薬のような深い静けさが混ざり合った余韻が漂っている。
やがて、震えが止んだ。彼は羊皮紙を広げ、インク壺のふたを開けた。筆の穂先が、わずかに震えている。彼は目を閉じ、今見た光景を、耳に響いた言葉を、心の内に反芻した。七つの教会。彼が知り、愛し、共に苦しみを分かち合った、あのアジアの群れたち。彼ら一人一人の顔が、祈りと共に思い浮かんだ。
そして、筆が動き始めた。
「ヨハネから、アジアにある七つの教会へ。今いまし、昔いまし、やがてきたるべき方から、またその御座の前におる七つの霊から…」
書き進める彼の手には、まだ微かな震えがあった。しかし、彼の心には、もう恐れはなかった。あるのは、深い驚きと、圧倒的な確信、そして遠く離れた兄弟姉妹たちへの、燃えるような思いだけだった。孤島の洞窟で、彼は、歴史の主の右の手に握られていることを知った。星々は確かに、その掌の中にある。暗闇は深くとも、燭台の光は消えることがない。
外では、相変わらず鉛色の海が、岩に打ち寄せていた。しかし、すべてが変わっていた。世界は、ただの世界ではなくなった。それは、栄光に満ちた方の足元に広がる、壮大な黙示の幕開けの場となったのである。




