聖書

荒野を越えて約束の地へ

荒野は、記憶そのもののように乾いていた。砂と岩の果てしない広がりは、昼には灼熱の息を吐き、夜には骨まで凍るような冷気をまとった。我々は、この寂寥の中を、幾星霜も歩き続けていた。セイルの山を離れてから、どれほどの月日が流れただろう。かつて主が「あなたがたは、この山地を巡って、長い年月を過ごしてしまった」と告げられたその言葉の重みが、今、皮膚に染み込む砂塵と共に、身に染みてわかる。

主は言われた。「方向を変え、荒れ野を経て、葦の海の方へと、旅立て」

集団はゆるやかに隊列を組み、ゆっくりと方向を転じた。荷車の軋む音、羊の鳴き声、幼子の泣き声。それら全てが、この巨大な沈黙の中に吸い込まれていくようだった。しかし、この転換には、単なる地理的な変更以上の何かがあった。それは、かつての失敗、カデシュ・バルネアでの不信の記憶から、ようやく顔を上げて前を見る、という意味でもあったのだ。

やがて、我々の進路の東に、エドムの地、セイルの山地が青く霞んで見えてきた。その山肌には、エサウの子孫たちが、都市や村を築いて暮らしている。主の声は、モーセを通して、明確に下された。

「彼らに警戒せよ。彼らを恐れてはならない。しかし、わたしはセイルの山地を、エサウの子孫に与えた。あなたがたは彼らの地を、足の裏で踏みつけてはならない。あなたがたは彼らから食物を銀で買って食べ、水も銀で買って飲まねばならない」

その言葉は、共同体の中に、複雑な反響を呼んだ。兵士たちの中には、広がる沃野を見て、奪い取ることも可能ではないかと考える者もいた。だが、主の命令は絶対だった。我々は、通り道を請う使者を送り、銀をもって食糧と水を乞うた。エドムの王は頑なに拒み、「もしお前たちが通るなら、わたしは剣を執って出向こう」と告げてきた。彼らの拒絶は痛かったが、主の命令は揺るがなかった。我々は彼らの領土を迂回し、荒れ野の道を更に苦しい道のりとして歩み続ける他なかった。ヨグリの道を、エツヨン・ゲベルを。エドムの人々を見下ろす高い崖道を、彼らの嘲るような視線を背中に感じながら、進んだのだ。

エドムの地を迂回し、更に北上する。次に目の前に広がるのは、モアブの平野だった。アルの町を左手に望みながら進む。主は再び告げられた。

「モアブを敵対せず、争ってはならない。わたしはアルを、ロトの子孫に与えた。彼らを、あなたがたの所有として与えることはしない」

ここでも同じ原則が働いた。主がかつて与えられた土地は、たとえ我々がそれを望もうとも、侵してはならない聖域だった。我々はアモリ人の王シホンが支配するヘシュボンの手前で足を止めた。ここからが、いよいよ、約束とは異なる土地、主が我々に与えようとされている土地の入り口だった。胸の鼓動が早くなる。不安と期待が入り混じる。

モーセは、シホンにも平和の使者を送り、銀で食糧と水を買い、通過の許可を請うた。しかし、ヘシュボンの王シホンは、心が頑なで、その申し出を聞き入れようとしなかった。むしろ、すべての民を挙げて出陣し、我々に戦いを挑もうとした。その時、主の言葉が再び臨んだ。

「見よ、わたしはシホンとその国土を、あなたの手に渡し始めた。占領せよ。彼の土地を、あなたのものとせよ」

これは、エドムやモアブに対する命令とは、全く違う響きだった。主の時が来たのだ。民の間に、長い流浪の間で鈍っていた何かが、かすかな火種のように再び灯った。アロンの子エレアザルによって聖別された戦士たちが、鎧をまとう。

戦いは、ヤハツの野で繰り広げられた。我々の兵士は、主が共におられるという確信に支えられていた。それは、誇りや血気からくる勇気とは違う。静かで、冷徹な決意のようなものだった。主がシホンを我々の手に渡された。その結果は、紛れもないものだった。我々は彼とその息子たち、そしてすべての民を撃ち、一人も残さなかった。町々をことごとく滅ぼし、滅びゆくものと定められたものはすべて滅ぼした。ただ、家畜と、町々からの分捕り品は、戦利品として携え出した。

アルノン川の谷からギレアドの山地まで、すべての町々が我々の手に落ちた。かつて強大を誇ったアモリ人の王国が、主の御手によって、砂上の楼閣のように崩れ去った。しかし、その勝利の只中にあっても、一つの命令は守られた。主が「近づいてはならない」と命じられたアンモン人の領土には、一切、足を踏み入れなかった。主がかつて彼らの先祖に与えられた土地は、我々にとっても侵すことのできない境界線だった。

こうして、我々は初めて、真に「自分たちの土地」と呼べるものを手にした。しかし、それは嬉しさだけではなかった。ヨルダン川の東、ギレアドの地に陣を敷き、獲た町々を見下ろしながら、モーセの顔は深い憂いに沈んでいた。この勝利は、あくまで主の御手によるものだ。もし、主が共におられなければ、我々はシホンの前に埃のように散っていただろう。この土地は、約束の地への、ほんの入口に過ぎない。ヨルダン川の向こう側には、さらに多くの民、高い城壁が待ち受けている。

夜、陣営には獲た家畜を焼く煙の香りが立ち込め、兵士たちの笑い声が聞こえた。しかし、モーセは一人、岩の上に座り、遠く、エリコの平野の方を見つめていた。彼の脳裏を去来するのは、長い荒野の年月、消え去った世代の顔々、そして、ようやく目前に迫った約束の地への、重い期待であった。主は導かれる。しかし、その道は、常に人間の思いを超え、時に理解を拒む厳しい道程なのだ。荒野の記憶は、これからも、決して彼らを離れない。それは単なる過去の追憶ではなく、すべてが主の御手にかかっているという、絶えざる警告の記憶として。

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