聖書

涙の種、喜びの芽

その年、エルサレムの秋は、乾いた砂塵の匂いと、遠くから運ばれてくる檜材の香りが混じり合っていた。城壁の修復は遅々として進まず、ゼルバベルによる神殿再建の知らせは、人々の胸に複雑な期待を淀ませていた。その中に、老いたレビ人、エリアキムがいた。彼は毎朝、崩れかけた城壁の東の門近くに座り、目を細めては、荒れ果てた町と、その向こうに広がるユダの丘を見つめた。

ある夕暮れ、エリアキムはいつものように石の上に腰を下ろし、羊皮の巻物を膝に広げていた。そこへ、バビロンから共に帰還した若い工匠、ヨナタンが、顔を紅潮させて駆け寄ってきた。
「エリアキム様、見てください!谷あいの畑です。ついに…ついに芽が出たのです!」
ヨナタンの手には、わずかに緑がかった、か細い麦の苗が握られていた。それは、帰還の春に、涙でぬかるみとなった土に、ほとんど祈るような思いで蒔いた種の、初めての産物だった。

エリアキムはその苗をそっと取り、指先で触れた。ごつごつとした、日焼けした彼の手のひらの中で、その緑は驚くほど脆く、そして輝いていた。彼の目がかすんだ。視界がゆらめき、七十年前の光景が、鮮烈によみがえってきた。

暑く乾いた風。鎖の軋む音。自分はまだ少年だった。バビロンの兵士の手綱に繋がれ、泣き叫ぶ人々の列の最後尾を、振り返り振り返り歩いた。その時見たものは、燃える神殿の煙が空を覆い、見知った顔が皆、灰に染まっていく光景。そして、彼らが連れて行かれた川の畔で、竪琴を柳の枝に掛け、「どうして、主の歌を異邦の地で歌えようか」と嘆いた父のうめくような祈り。あの日、夢は完全に砕け、未来はバビロンの煉瓦の色と同じ、絶望的な赭色に塗りつぶされたように思えた。

「エリアキム様?」
ヨナタンの声で、現在へと引き戻された。手の中の緑は確かだった。現実だった。
「…主は、私たちの捕われ人を連れて帰られるとき、私たちは夢を見ている者のようであった」
老いた唇が、ほとんど独り言のように詠唱した。詩篇の一節が、長い年月を経て、初めて意味を持つ生きた肉となって、胸の内から沸き上がってくるのを感じた。

その後、エリアキムはヨナタンに誘われるまま、町外れの小さな段々畑へ向かった。確かにそこには、ところどころに、わずかばかりの緑が顔を出していた。土地は痩せ、石が多く、灌漑の水路はまだ整っていない。それでも、種は芽を出した。彼はその場に跪き、土を掌に取った。冷たく、粗く、しかしどこか懐かしい感触。これが約束の地の土か。彼の頬を一筋の涙が伝った。それは悲しみでもなく、また純粋な喜びでもない、より複雑な、長い旅路の終わりと始まりを知る者の熱い感慨だった。

「あの頃はね」エリアキムは蹲ったまま、ゆっくりと話し始めた。「バビロンで、夜毎、父が小声で繰り返していた言葉がある。『涙と共に種を蒔く者は、喜びの叫びと共に刈り入れる』と。私は当時、理解できなかった。このように全てを奪われ、荒れ野に投げ出された者に、種を蒔くことなどできるはずがない、と」
彼は顔を上げ、ヨナタンの若く、しかし既に苦労の影を宿した目を見つめた。
「けれども、私たちは蒔き続けた。たとえそれが、言葉であり、記憶であり、消え入りそうな祈りであったとしても。捕囚の地で、子を産み、名を与え、律法を教え、来るべき日を待ち望むこと…それこそが、涙に濡れた種蒔きだったのだと、今ならわかる」

日は完全に落ち、最初の星が東の空に瞬き始めた。二人は黙って畑を見守った。暗闇の中では、もはや緑は見えない。しかし、そこに命があることを、彼らは知っていた。
「やがて、異邦の民も言うだろう」エリアキムの声は、夜の静けさの中に深く響いた。「『主は彼らのために大きなことを行われた』と」
その言葉には、確信よりも、静かな願いが込められていた。城壁も神殿も未完成。周囲には敵意の眼差しが渦巻いている。苦難が終わったわけでは決してない。それでも、この一本の苗は、無言の証言者だった。主が過去に成し遂げてくださった驚くべき救い。それは、まだ完成を見ていない現在の苦闘の中で、未来に対する揺るぎない保証として、ここに根を下ろし始めている。

エリアキムは立ち上がり、体の節々の痛みを感じながら、ゆっくりと町へと歩き出した。背中には、長い捕囚の年月の重みが、そして掌には、微かな土の温もりが残っていた。道すがら、彼はかつて父から聞いた、捕囚の終わりを告げるキュロス王の詔勅が下った日のことを思い出した。湧き上がるような戸惑いと、信じられないほどの喜び。人々が抱き合い、泣き、そして慌てて荷造りを始めた、あの騒然とした日。まさに夢の中にいるかのようだった。

そして今、彼はその夢の続きを、石だらけの土の上で、生きて歩いている。すべてが整ったわけではない。心は時折、バビロンで失ったものの記憶で刺すように痛む。しかし、彼はもう、過去の捕虜ではなかった。彼は、荒れ野に水路が引かれるように、乾ききった心に再び流れ始めた希望を、かすかながらに感じ取っている帰還者の一人だった。神殿の礎石はまだ小さい。しかし、この地に蒔かれた、目に見えぬ信仰の種は、やがて喜びの実りとして、この全地を満たす日が来る。老いたレビ人は、闇の中に佇む自分の町の輪郭を見つめ、そのことを静かに確信した。主が共におられる限り、この物語は、涙で始まったとしても、喜びの叫びで終わるのだと。

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