枕元のランプの灯りが、ゆらりと揺れた。オリーブ油のほのかな焦げた香りが、病室の重い空気に混じる。ダビデは毛布の下で、微かに震える指を動かしてみた。関節の痛みは、すでに日常となっていた。窓の外では、エルサレムの宵の気配が迫り、遠くで商人たちの声がかすかに聞こえる。もう、あの活気ある街のざわめきに加わることはないのか――そんな思いが、彼の胸を締め付けた。
病は、突然ではなかった。長い政務の疲れが、ゆっくりと体を蝕んでいった。最初は軽い目眩から始まり、やがて熱が下がらなくなり、今では起き上がることさえ難しくなっていた。医師たちは首をかしげ、有効な処方を見出せずに去っていく。側近たちの視線にも、以前のような確信は見えなかった。彼らは依然として敬虔な態度を崩さないが、王の病室を出た後のため息が、ときおり壁越しに伝わってくるのを、ダビデは敏感に嗅ぎ取った。
「弱き者を顧みる者は幸いなり――」
彼は唇を動かして、かつて記した詩の一節を繰り返した。それは若き日、羊飼いとして野を歩き、傷ついた小羊を抱き上げたときの確信から生まれた言葉だった。今、自分がまさにその「弱き者」となった現実に、彼は乾いた笑いを漏らした。王座から見下ろす視点と、寝床から天井を見上げる視点では、世界の色合いがこれほど変わるものか。絨毯の模様のほつれ一つが、気になり続ける。ろうそくの煙が、ゆらゆらと消える様が、なぜか切なくなる。
三日目の夕方、一人の若い祭司が病室を訪れた。彼は沈黙して王の額に油を塗り、祈りを捧げた。その祈りの言葉は単純で、飾り気がなかった。「主よ、この僕の魂を癒したまえ。彼はあなたに向かって罪を悔いました」と。ダビデは目を閉じた。悔い――確かに、彼の人生には影の部分もあった。ウリヤの事件以来、彼の内面にはいつも、静かな水溜りのような悔恨がたまっていた。病は、その水溜りをかき混ぜる棒のように感じられた。痛みは浄化の炎なのか、それとも単なる崩壊の始まりなのか。
そして、訪れる者たちの変化が次第に明らかになった。最初は真心から心配していた者たちも、王の回復が遅いと知るや、態度が微妙に変容していく。宮廷の廊下で囁かれる声が、次第に大きくなった。「もはや主の祝福は彼から去った」「次の王は誰か」――そんな言葉の断片が、忠実な僕の口から、苦渋に満ちた表情で伝えられた。
最も鋭い痛みは、親しい者の背信から来た。アヒトフェル――かつては最も信頼した顧問の一人が、最近は病室に顔を見せなくなった。代わりに、彼の部下らしき者が、わざとらしく深慮に満ちた表情で見舞いに来ては、国政の難しい案件をことさら強調して報告する。それは同情のように見せかけた、巧妙な心理的な圧迫だった。ダビデは布団の中で拳を握りしめた。無力さが、歯ぎしりを生んだ。
ある雨の午後、かつて共に戦った古い友が訪ねてきた。男はじめじめした外套を脱ぎ、王の枕元に座ると、いきなり涙を浮かべて国王の健康を気遣った。しかしその目は、部屋の中をさぐるように動き、金の器や王の衰えた様子を細かに観察していた。帰り際、男は深々と頭を下げたが、ドアが閉まる瞬間、ため息まじりに「もはや往日の面影はない」と呟いた。声は小さかったが、病床の静寂の中では、それは雷のように響いた。
「彼らは心に悪事を潜め、外に出てはこれを言い広める」
詩篇の言葉が、彼の脳裏をかすめた。孤独が、深い井戸のように彼を飲み込もうとした。誰も信じられない。すべての笑顔の裏に計算がある。祈る力さえ、病に奪われつつある。そのとき、窓から差し込む夕日の光が、壁にかけた竪琴の弦をかすかに照らした。長く弾いていないその楽器は、ほこりをかぶっていた。
ふと、少年の日の記憶がよみがえった。ベツレヘムの野で、狼から羊を守ったあの夜。恐怖で震えながらも、星空を見上げて唱えた素朴な祈り。あのとき感じた神の臨在は、どこへ消えたのか。宮殿の豪華な天井よりも、あの荒野の広がりの方が、神に近かったような気がした。
彼は震える手を伸ばし、枕元の粘土板と尖筆を取った。力はほとんどない。しかし、何かが彼の内側で涌き上がってくる。それは絶望ではなく、むしろ絶望の底から這い上がってくる一種の確信だった。
筆記は困難を極めた。文字はよろめき、ときにかすれた。それでも、言葉は止まらなかった。
「わが敵は私について悪く言う。『いつ死に、その名が滅びるのか』と。見に来る者も偽りを言い、その心は悪事を蓄え、外に出てはこれを語る――」
彼は息を切らしながら、一節ごとに筆を置いた。涙が、粘土板の上に落ちた。それは自憐の涙ではなく、長く押し殺していた怒りと悲しみが、とうとう溢れ出たものだった。そして、最後の力を振り絞って、彼は書き加えた。
「しかし、主よ。私をあわれみ、起き上がらせてください。そうすれば私は、彼らに報いることができます。私はあなたが私を喜んでおられることを知ります。私の敵が私について勝ち誇ることがないように――」
書き終えると、彼はぐったりと枕に倒れ込んだ。夜は更け、ランプの灯りが次第に弱まっていった。そのとき、ふと部屋の空気が変わったような気がした。重苦しい病の雰囲気が、わずかに軽くなる。窓の外から、オリーブの木々を渡る夜風の音が聞こえる。それは懐かしい、野原のざわめきに似ていた。
彼は目を閉じた。祈りは、もはや整えられた言葉ではなかった。ただ、深いため息のように、胸の中からわき上がる無言の叫び。「主よ」。それだけだった。
すると、不思議な安らぎが、ゆっくりと彼を包み始めた。痛みは消えていない。敵の謀略がなくなるわけでもない。しかし、何かが変わった。彼の内側で。あの深い井戸の底から、一本の丈夫な縄が垂れ下り、彼の手に届いたような感覚。それは目には見えないが、確かに存在する支えだった。
彼はかすかに笑った。自分が今、真の意味で「弱き者」となったこと。それこそが、神の力が完全に現れるための器なのかもしれない、と。かつて彼が記した詩篇は、今や彼自身の上に成就しつつあった。苦しみは、祝福への迂回路なのか。
夜明け前、彼は久しぶりに深い眠りについた。夢の中で、彼は再び少年となり、緑の丘を駆け上がっていた。風が頬を撫でる。そして遠くから、慣れ親しんだ声が聞こえる。「わたしはここにいる」。
目が覚めたとき、東の空は薄明るくなっていた。体の痛みは相変わらずだったが、胸の重石はどこか軽くなっている。彼はゆっくりと体を起こし、窓辺にたどり着いた。エルサレムの街が、朝もやの中からゆっくりと姿を現す。炊事の煙が幾筋も立ち上り、人々の一日が始まろうとしている。
ダビデは深く息を吸った。冷たい朝の空気が肺に染み渡る。彼はもう、死の床で運命を嘆く者ではなかった。むしろ、この病と裏切りと絶望の只中で、なお揺るがないものがあることを、身をもって知る者となった。
「主をほめたたえよ――」
彼の声はかすれていたが、確かに部屋に響いた。廊下を歩いていた侍従が、その声に驚いて戸を開けた。王が窓辺に立っている姿を見て、彼は目を見開いた。
ダビデは振り向き、静かに言った。「今日は、少し粥が食べたい」。
その言葉には、単なる食欲以上のものが込められていた。それは、再び人生の糧を受け取る意志の表明だった。長い夜は終わりを告げ、新しい一日が始まる――たとえ、これからも苦難の道が続くとしても。
彼は再び窓の外を見つめた。街は光に包まれつつあった。神の慈しみは、確かに朝ごとに新たになる。彼はそれを、骨の髄まで知った。病と裏切りの中で、彼は最も深い意味で、祝福された者となったのだ。



