日は浅いが、カナンの地にはすでに秋の気配が忍び寄っていた。シロの幕屋の前、広い空地に集まった人々の息づかいは、乾いた風に混じって、重い雲のように漂っていた。彼らを待たせていた男が、ようやく現れた。ヨシュアである。かつてはモーセの従者として、そして戦いの指揮者として、颯爽とした姿を見せたその男も、今は杖にすがり、背中は少し曲がり、歩みは確かではなかった。百十年の歳月が、彼の体を静かに蝕んでいた。しかし、目だけは変わらなかった。深い淵のようなその瞳は、集まったすべての部族の者たちを、一人残らず捉えるようにゆっくりと巡った。
彼が口を開くまでに、長い沈黙が流れた。ただ、遠くで羊の鳴き声が風に乗ってくるだけだった。
「わたしは、老いた」
声は意外にも力強く、しかし一つ一つの言葉に、ためらいのような間があった。それは、老いのためではなく、語るべきことの重さのためだろう。
「あなたがたの神、主が、あなたがたのためになさったすべてのことを、わたしは見てきた。この目で見た」
ヨシュアの言葉は、過去をたどるように始まった。ヨルダン川を渡ったあの日、祭司たちの足が水に触れた瞬間、上流から流れ来る水が、壁のように立ち上がった光景。エリコの城壁が、ラッパの音と叫び声によって崩れ落ちたときの土煙の臭い。カナンの諸王との戦い。主が送られた蜂の群れのように、敵を混乱させ、逃げ惑わせた日々。一つ一つの記憶が、彼の言葉を通して、聞いている者たちの胸に鮮やかによみがえった。それは、単なる回想ではなかった。彼の声には、感慨というよりも、ある緊迫した呼びかけが込められていた。
「主は戦ってくださった。主が約束された土地を、あなたがたは足の裏で踏み、今、そこに住んでいる。しかし、覚えておけ。これは、あなたがたの力によるのではない。あなたがたの剣の鋭さによるのでも、弓の強さによるのでもない。あなたがたの神、主が、あなたがたに先立って戦われたのだ」
彼は言葉を切った。群衆の中から、子供の泣き声がわずかに聞こえた。母親が慌ててあやしている。その日常的な音が、かえってこの場の神聖さを際立たせた。
ヨシュアは杖を握りしめ、一歩前に出た。その動きは緩慢だったが、視線は鋭く、今にも剣を抜かんとする者のようだった。
「だから、わたしが今日、命じるこの律法の書のすべての言葉を、堅く守って行わなければならない。右にも左にもそれてはならない。あなたがたのうちに残っているこれらの国民の者の中に入り混じってはならない。彼らの神々の名を口にしてはならない。それに仕え、それにひれ伏してはならない」
彼の言葉は次第に熱を帯び、警告の色を濃くしていった。長い平和が、ぬるま湯のように民を堕落させることを、彼は恐れていた。戦いの記憶が風化し、周囲の異邦の習慣が、いつの間にか信仰を侵食する。彼はその危険を、骨の髄まで知っていた。モーセから繰り返し聞かされ、自らもこの地に入る前に、主から厳かに命じられたことだ。
「あなたがたがもし、背を向け、これらの国民の残る者と結び、互いに縁を結び、彼らの中に入り、彼らがあなたがたの中に入るなら、知っておくがよい。あなたがたの神、主は、もはやこれらの国民をあなたがたの前から追い払われない。彼らはあなたがたにとって、わなとなり、網となり、あなたがたの脇のむちとなり、あなたがたの目のいばらとなる。そしてついには、あなたがたがこの良い土地から滅び去るに至る」
「滅び去る」という言葉が、冷たい水のように人々の背筋を伝った。いくらかは不安そうに顔を見合わせる者もいた。しかし、ヨシュアの表情は変わらない。それは予言者の顔であった。老いの影を乗り越えて、はっきりと未来の禍を見据えている。
彼は再び声を落とし、今度はまるで父親が子に語りかけるような、しかし底に悲しみを秘めた調子で語り始めた。
「見よ、わたしは今日、全地のすべての人の行く道を行こうとしている。あなたがたは心を尽くし、魂を尽くして知っている。あなたがたの神、主が約束されたすべての良いことが、一つとして落ちたことはなかった。すべて実現した。主があなたがたに約束されたすべての良いことが、あなたがたに実現したように、主はまた、すべての悪いことをも、あなたがたに臨ませられる。もし、あなたがたの神、主が命じられた契約を破り、行って他の神々に仕え、彼らを拝むなら、主の怒りはあなたがたに向かって燃え上がり、あなたがたは主が与えられたこの良い土地から、速やかに滅び去るであろう」
語り終えたヨシュアは、再び静かになった。彼の目には、若き日にヨルダン川のほとりで、主の軍の将と相対したときの光が、一瞬よみがえったように思えた。あの時も、今も、問われていることは変わらない。忠実であるか、否か。
彼は最後に民を見渡し、微かにうなずいた。説教は終わった。彼はもう何も付け加えなかった。重い空気が、ゆっくりと解け始める。人々はそれぞれに思いを巡らせながら、静かに立ち去り始めた。ヨシュアは一人、幕屋の前に残った。西に傾く太陽が、彼の長い影を、約束の地の上に延々と伸ばしていた。
風が少し強くなり、彼の白い髪を揺らした。彼は目を閉じ、唇をわずかに動かした。祈りなのか、あるいは、モーセへの言葉なのか。誰にも聞こえないつぶやきは、やがてカナンの地を吹き渡る風に消えていった。彼の仕事は、これで終わった。後は、この民が、覚えているかどうかにかかっている。主の声を、戦いの日々を、そして今日、この老いた指導者が涙を込めて語った警告を。
彼はゆっくりと歩き出した。杖が砂利をかすかに軋ませる。遠くで、夕餉の支度をする女たちの声が聞こえる。平穏な日常の音だ。ヨシュアはその音を背に、自分の天幕へと帰って行った。背中は、ますます曲がって見えた。




