聖書

宣教の旅路:石と光

イコニオムの町は、朝もやの中にぼんやりとその輪郭を浮かべていた。道はほこりっぽく、パウロとバルナバのサンダルには、幾日も歩き続けた旅の土がこびりついていた。会堂はすでに人で満ちているという報せを受けて、二人は互いに一瞥を交わした。言葉はいらない。この沈黙の中に、聖霊の促す重みのようなものを共に感じ取っていた。

会堂の中は、オリーブ油のランプの煙と、多くの人の体温でむっとしていた。パウロが立ち上がり、朗読された律法の箇所ーーそれはイザヤ書の一節だったーーから語り始めたとき、バルナバはそっと目を閉じ、祈った。パウロの声は、当初は低く、ほとんど嗄れていた。旅の疲れだろう。しかし、語りが進むにつれ、その声には力が漲っていった。彼は、約束の救い主が、実はこのイエスという方であり、その方が死から甦られたこと、そして、この恵みはもはや律法の行いによるのではなく、ただ信じる信仰によるのだと説いた。

長椅子に座るある毛織物商の男は、眉をひそめていた。彼の隣にいた年老いた律法学者は、ゆっくりと首を振った。しかし、前方に座る若いギリシャ人帰依者の目には、涙が光っていた。集会が終わると、ざわめきが起こった。賛同する声も、怒りに震える声も、戸惑いのささやきも、すべてが混じり合い、会堂の重い空気を震わせた。

その日から、町は二分された。パウロとバルナバは、ユダヤ人だけでなく、ギリシャ人たちの家にも招かれ、言葉を尽くして証し続けた。ある雨の降る午後、彼らは染物職人の工房の奥で、家族を前に話をしていた。外の雨音が柔らかく響く中、バルナバが静かに語るのを、パウロは温かい眼差しで見守っていた。バルナバの語り口はパウロとは違って、ゆったりと、まるで長い時間をかけて織り上げる布のようだった。職人一家は、深くうなずき、ついに信仰を告白した。

しかし、反対者の怒りは次第に煮えたぎっていった。ある安息日、会堂から出てきた二人のもとに、イコニオム在住のユダヤ人たちだけでなく、遠方からやって来たユダヤ人指導者たちが、群衆を煽り立てながら押し寄せてきた。罵声が飛び交う。彼らが宿としていた家の前に石が投げつけられた。夜陰に乗じて、彼らは町を出ることを余儀なくされた。背中の荷物は軽いが、心には残されざる者たちへの痛みが重くのしかかっていた。

次の町、ルステラへの道は、より荒れ果てていた。丘を越え、乾いた川床を横切り、二人はほとんど言葉を交わさずに歩いた。足は水膨れになっていた。

ルステラの城門は、粗末な木材でできており、守衛らしき者もいなかった。町は小さく、土壁の家が寄り集まっているように見えた。人々の言葉は、彼らにはほとんど理解できないリカオニアの方言だった。ここには会堂もなかった。彼らは広場に腰を下ろし、疲れを癒した。数日後、彼らはその広場で話し始めた。最初は子供たちが集まってきた。好奇心いっぱいの目で、この見慣れない旅人たちを眺めている。パウロは身振りを交えながら、創造主のことを話した。空を指さし、地を踏みしめ、慈愛に満ちた神のことを、出来る限りの言葉で伝えようとした。

そこに、一人の男が連れて来られた。生まれつき足の不自由な男だった。彼は毎日、広場の縁石に座って物乞いをしていた。男の目は、長年の諦めで曇っていた。彼はパウロの話を聞いていた。何日かそうしているうちに、その曇った目に、かすかな光のようなものが灯るのを、パウロは見逃さなかった。

ある熱気むんむんとした午後、パウロは話しながら、ふとその男の目を見つめた。そして、一種の確信ーーいや、聖霊の強烈な促しーーが胸を貫いた。彼は話を止め、男の方へ歩み寄った。群衆のざわめきがピタリと止んだ。パウロは男の目をまっすぐに見つめ、声を張り上げた。「立ちなさい。まっすぐに!」

その声は、広場全体に響き渡った。一瞬、何事も起こらない沈黙があった。男の顔に、困惑、恐怖、そして一筋の希望が走った。そして、彼の足首に力がみなぎり、ぎこちなく、しかし確かに、彼は起き上がった。最初の一歩はよろめいた。二歩目はより確かだった。三歩、四歩……彼は歩き出した。跳びはねた。土埃が舞い上がる。

広場は沸き立った。人々はリカオニアの方言で叫び始めた。「神々が人間の姿をとって、私たちのところに下って来られた!」 彼らはバルナバをゼウスと呼び、弁舌の鋭いパウロをヘルメスと呼んだ。町の外れにあるゼウス神殿の祭司が、飾り牛数頭と花輪を持って、駆けつけてきた。人々は犠牲を捧げようとしている。状況が理解できたパウロとバルナバは、恐怖に駆られた。これはとんでもない誤解だった。

二人は衣を引き裂き、群衆の中に飛び込んでいき、必死に叫んだ。「皆さん、どうしてこんなことをするのですか。私たちもあなたがたと同じ人間です。ただ、あなたがたがこのような虚ろなものから離れて、天と地と海と、その中にあるすべてのものをお造りになった生ける神に立ち返るように、福音を伝えているにすぎません!」

彼らは叫び、押しとどめ、ようやくかろうじて群衆の熱狂を鎮めた。人々は呆然とし、祭司は花輪を手にしたまま立ち尽くしていた。ほっとしたのもつかの間、イコニオムから反対者たちが到着したという知らせが入った。彼らは巧みにこの町の気分を逆撫でし、群衆の感情を百八十度転換させた。わずか前に神とあがめられていたパウロが、今や罵られ、石を投げつけられる対象となった。

石は、彼の頭、肩、背中に激しく当たった。一つ、また一つ。痛みというより、鈍い衝撃が全身を貫く。パウロは倒れた。土の味が口に広がった。騒音が遠ざかり、視界が暗くなっていく。彼は意識を失った。彼を死んだと思った群衆は、町の外に引きずり出した。

夕暮れ時、冷たい露がパウロの頰を伝った。彼はうめき声を上げて目を開けた。星がまたたいていた。体中が砕かれそうな痛みだった。しかし、彼はゆっくりと起き上がった。彼の周りには、ルステラで信仰を持ったほんの一握りの人々が、息を殺して見守っていた。彼らに支えられ、よろめきながら立ち上がり、彼は再び町に入った。そして翌日、バルナバと共に、傷だらけの体でデルベへの道を歩き出したのである。

デルベでは、静かな日々が続いた。彼らは福音を宣べ、多くの弟子を得た。しかし、パウロの耳には、今でもルステラの広場の歓声と、石のぶつかる鈍い音とが、奇妙に混ざり合って響いていた。栄光と苦難は、一枚の布の表裏のようだ。彼は振り返り、来た道を眺めた。イコニオム、ルステラ、そして今、デルベ。彼らが去った後、そこには、風に揺れる幼い教会という灯が、それぞれに点されていった。彼はうつむき、自分を支えるバルナバの腕に、よりいっそう体重を預けた。道はまだ続く。

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