その日は、エルサレムの窯からいつもより濃い煙が立ち上っていた。アビヤタルはろくろの前で、またしてもうまくいかなかった壺の粘土の塊を眺めていた。指の腹に残る、冷えてゆく土の感触。彼は工房の暗がりで小さく息をついた。外では、アッシリアの脅威が風に混じって都に流れ込み、人々の会話には、いつもと違う硬いトーンが付きまとっていた。不安は、この窯場の埃のように、静かに、しかし確実に積もっていくものだった。
夕方、彼はうまくいかない手仕事から逃れるように、街を歩いた。シロアムの池の傍らで、数人の男が熱心に何かを聞き入っていた。彼らに交じって耳を傾けると、それはアモツの子、イザヤの言葉だった。預言者の声は、彼が想像していたような、雷のようなものではなかった。むしろ、深い井戸の底から汲み上げられる水のように、冷たく、そしてどこか揺るぎない響きをもっていた。
「…あなたがたはその日、言うでしょう、『わたしはあなたに感謝します。主よ。あなたは、かつては私に向かって怒りをもたれましたが、その怒りは去り、あなたは私を慰めてくださいます』と。」
アビヤタルは足を止めた。粘土の感触をまだ覚えている指先が、わずかに震えた。怒り。彼はその言葉を、自分自身の内側に探った。失敗へのいらだち、先行きへの恐れ、自分という存在の小ささへの、うんざりするような苛立ち。それは、神に向けられたものなのか。それとも、神から来ているものなのか。預言者の言葉は、まるで彼の胸中に直接、静かな石を投げ込んだようだった。その波紋は、工房に戻った後も、消えることはなかった。
その夜、彼はろくろに向かわなかった。代わりに、割れて捨てておいた古い水がめの破片を手に取った。かつては家族の生活を支えたその器は、今は鋭い縁を持つ無用の欠片でしかない。彼はぼんやりと、破片を組み合わせてみた。隙間から、灯りの火がもれた。
それからの数日、アビヤタルは預言者の言葉を思い返しながら過ごした。二番目の言葉が心に浮かぶ。「見よ。神はわが救い。わたしは信頼して恐れることはない。主なる神はわが力、わが歌、わが救いとなられた。」 わが救い、わが力、わが歌。これらは、陶器職人にとって最も縁遠い言葉に思えた。力はろくろを回す腕力、救いは一日の売り上げ、歌は酒場での戯れ唄だった。しかし預言者が語るそれは、違った。もっと根源的で、全ての土台を揺るがすような何かだった。
ある嵐が迫る午後、彼は思い切って丘を上った。都を見下ろすその場所で、風が彼の外套を激しくはためかせた。眼下に広がるエルサレムの家々は、焼き物のようにもろく、小さく見えた。そしてその向こうには、敵の気配を感じさせる広大な闇が広がっている。その時、彼の内側で、ある小さな確信が音を立てて結晶した。彼が頼りにすべきなのは、この石壁でも、王の軍勢でも、自分自身の技でもない。まるで長い間、誤った型に粘土を押し込んでいたことに突然気づくように。
「主はわが救い。」
彼は風の中で、声には出さずにそう言った。すると、不思議なことに、腹の底にあった鉛のように重い塊が、少しずつ溶けていく感覚があった。それは、何かがすぐに解決するという安易な確信ではなかった。むしろ、たとえこの壺が明日割れるとしても、それを焼く火自体は消えない、というような、静かな覚悟に近いものだった。
工房に戻る道すがら、彼は湧き水の傍らに立つ人々を見た。彼らは革袋や壺に水をくみ、賑やかに笑い合っている。イザヤの三つ目の言葉が、水の音に重なって聞こえてくるようだった。「あなたがたは喜びながら、救いの泉から水を汲む。」 彼は立ち止まり、しばらくその光景を見つめた。渇き。彼の内側にもあったそれは、技の完成でも、富の蓄積でも、満たされることはなかった。その泉は、別のところにある。彼は自分が作った、少し歪な水筒で水をくんだ。冷たい水が喉を通り、彼ははっきりと悟った。この感謝と、この安心感こそが、彼の歌なのだ、と。
その翌日から、アビヤタルの仕事は少し変わった。失敗しても、以前のように無言で粘土を叩きつけることはなくなった。彼は静かに息をつき、再び手を動かし始める。彼の作る壺は、相変わらず完璧ではなかったが、どこか温かみを帯びている、と顧客は囁き合った。彼は工房で、ほぼ独り言のように、感謝の言葉を紡いだ。「主に感謝せよ。その御名を呼び求めよ。そのみわざを国々の民の中に知らせよ。主の御名はあがむべき者と言え。」
祭りの日が近づいた。エルサレムは、不安を忘れたかのように活気に満ちていた。アビヤタルは家族と共に神殿の丘へ向かう人波に加わった。かつては形式に過ぎなかったこの巡礼が、今日は全く違って感じられた。主の聖なる都シオン。彼は石段を上りながら、自分の足の裏でその石の感触を確かめた。ここが、全世界に向けて宣言されるべき御名の住まう場所か。
祭りが最高潮に達した時、彼は周りの歌声に合わせて、声を上げた。それは美しい声ではなかったが、彼の全身から湧き上がる、確かなものであった。「イスラエルのうちにいます大いなる聖者、主をほめ歌え。」 彼の隣で、知らない老人が涙を流しながら同じ歌を歌っていた。向こう側では、若い母親が幼子を肩に乗せ、歓喜にきらめく目をしている。アビヤタルは見た。救いの泉からくまれた水が、無数の器に分けられ、そして一つになって、巨大な感謝の讃美となって立ち上るのを。彼は、自分がその一滴の水であることを、心から光栄に思った。
夕暮れ、窯の火をくべながら、彼はまたあの割れた水がめの破片を思い出した。もう二度と元の器には戻れない。しかし、もしその鋭い縁を丹念に磨き、金色の樹脂で継ぎ合わせたら? それは新たな、傷跡を飾りとする別の器になるだろう。主の慰めとは、そういうものかもしれない、と彼は考えた。過去の失敗や恐れという破片を、消し去るのではなく、新たな命へと組み直す業。彼の内側に、静かな歌が生まれていた。それは祭りの騒ぎとは違う、炉の火の揺らぎのように、これから長く続いてゆく、深く温かな響きだった。
窓の外では、最初の星が輝き始めていた。都にはまだ、不安の影が忍び寄っていた。明日も、彼のろくろからは不器用な壺が生まれるかもしれない。だが、アビヤタルはもう、窯の火だけを頼りにしているわけではなかった。彼は、その火をも越える大きな炎、怒りを去らせ、歌を授ける方を知っていた。工房の闇に、彼はごく小さく、しかし確かに笑みを浮かべた。これが、救いの泉の水を汲む、ということなのだろう。渇きを知る者だけが味わう、この満ち足りた静けさを。




