聖書

沈黙の預言者アモス

サマリアの丘には、夕日が沈む前に長い影を伸ばしていた。オリーブ畑の木々は、この三年ほど実りが乏しく、枝が細りながらも、かろうじて銀色の葉を風に揺らしていた。道端では、子どもたちが埃の中で遊び声を上げているが、その声にはどこかかすかな焦りが混じっている。大人たちは口を揃えて、今年こそは雨が豊かに降ると言いながら、空を見上げる目の奥に疑いの影を潜ませていた。

町の広場では、祭りの準備が進んでいた。ベテルの神殿に向かう巡礼者たちが、道々で酒を酌み交わし、笑い声を響かせている。羊の焼ける匂いが漂い、祭司たちは晴れやかな衣をまとって祭壇の周りを忙しそうに行き来していた。豊かさを感謝するはずの祭りだったが、どこか形だけの、空虚な儀式のようにも見えた。人々は捧げ物を増やし、犠牲を重ねることで、何かを埋め合わせようとしているようだった。

そのころ、町のはずれの小さな家で、アモスは窓辺に立ち、遠くの畑を見つめていた。彼は本来、牧者であり、いちじく桑を育てる者だった。しかし、ここ数年の光景は、彼の胸に沈黙の怒りを蓄えさせていた。土地は泣いている、と彼は思った。いや、泣いているのは土地ではなく、それを治める者たちなのかもしれない。彼らは公正を売り、貧しい者の権利を踏みにじり、虚偽の秤を使いながら、平然と神殿に詣でる。

最初の兆候は、穂先の枯れから始まった。春先の雨が、いつもより短く、地面を十分に潤す前に止んでしまった。農夫たちは首をかしげたが、まだ希望を捨ててはいなかった。「きっと次の雨は降る」と。しかし、次の雨は降らなかった。むしろ、熱風が東から吹きつけ、穏やかだった空は連日、鉛色の厚い雲に覆われたまま、一滴も落とさなかった。井戸の水は濁り始め、川の流れは細り、人々は水桶を抱えて遠くの泉まで行列を作った。

「主は、お前たちの町ごとに、食物不足を与えた」
アモスは人々に語りかけるが、耳を傾ける者は少なかった。彼らの関心は、次の収穫よりも、どのようにして隣人から少しでも多くを奪うか、ということに向いていた。飢えは確かに訪れた。貧しい家からまず子供たちの頬がこけ、市場では麦の価格が日に日に上がった。それでも、富める者たちは倉に穀物を蓄え、高い値で売りさばいた。祭司たちは、それを見て見ぬふりをした。祭りは相変わらず盛大に続けられ、神殿には肥えた子牛が連れて来られる。

そして、雨の代わりに降ったのは、疫病だった。羊の群れにまず異変が起きた。咳き込み、足元がふらつき、次々と倒れていく。飼い主たちは慌てて生贄に捧げようとしたが、それはむなしかった。疫病は家畜から人へと移り、町には病人を隔離する小屋が急ごしらえで建てられた。夜になると、どこからかすすり泣く声が聞こえ、朝には新しい死者が出ていることが常になった。

「わたしは、お前たちの間に疫病を送った」
アモスは叫んだ。彼の声はしわがれ、疲れていたが、それでも町から町へと歩き続けた。ある時は石を投げられ、ある時は嘲笑われた。「お前は預言者ではない、ただの羊飼いだ」と。彼はうつむかず、空を指さした。「聞け、主の言葉を。お前たちはわたしに帰らなかった」

変化は少しずつ、しかし確実に現れた。オリーブの木には黒い黴がつき、ぶどうの木は突然枯れ始めた。農夫たちは、せっかく実った果実が腐っていくのを、手をこまねいて見ているしかなかった。打ちひしがれた老人が、荒れた畑の真ん中に跪き、祈りをささげる。しかし、その祈りもまた、自分たちの繁栄を取り戻してほしいという願いばかりで、心の奥底からの悔い改めではなかった。

戦いの噂も広がった。国境を脅かす敵の気配、遠くで聞こえる軍馬の蹄の音。若者たちは戦場に駆り出され、戻って来ない者も増えた。町には未亡人と孤児が目立つようになり、広場の笑い声は以前よりも少なく、硬くなっていた。それでも、人々は相変わらず、自分たちの不正を顧みようとはしない。むしろ、災いが増すほどに、儀式を重んじ、形式的な犠牲を増やし、それで神の気を鎮めようとした。

アモスはある日、ベテルの神殿の前で立ち止まった。人々が盛大な捧げ物を運び入れ、祭司が祝福を叫んでいる。香の煙がもうもうと立ち上り、人々の顔は熱狂に輝いていた。彼は深く息を吸い込み、声を張り上げた。

「お前たちは、三年間も続けて、実りを妨げる者となった。わたしはお前たちを打ち、腐りと黴で脅かした。お前たちの園とぶどう畑は、いなごに食い荒らされ、いちじくの木とオリーブの木はむさぼり食われた。それでも、お前たちはわたしに帰らなかった」

周囲が一瞬静かになった。人々が振り向き、好奇と怒りの目をアモスに向ける。祭司の一人が歩み寄り、低い声で言った。「ここで騒ぐな。これは王の聖所だ」

アモスは祭司の目をまっすぐ見つめた。「主はこう言われる。『わたしは、お前たちのうちに、エジプトのように疫病を送った。剣で若者を、捕らわれて行く馬で若い男を滅ぼした。お前たちの宿営の悪臭さえも、鼻に突き上げた。それでも、お前たちはわたしに帰らなかった』」

彼の言葉は、祭りの騒ぎの中に吸い込まれていくようだった。それでも、ふと耳を傾ける者がいた。片隅に佇む年老いた女、傷ついた兵士、借金で首が回らない商人。彼らの目には、一瞬の遅疑が走った。しかし、すぐに周りの熱気に押し流され、また捧げ物の行列に加わっていく。

アモスはうなだれた。彼はもう、災害のことを語るのをやめた。最後の警告を、静かな、しかし冷たい調子で紡ぎだした。

「だから、イスラエルよ、わたしはお前にこうする。わたしがこれからお前にしようとしていることのゆえに、お前の神に会う備えをせよ」

彼はその場を去り、丘の道を歩き始めた。背後の町では、まだ祭りの音楽が鳴り響いている。夕闇が迫り、最初の星がちらりと光った。風が丘を渡り、枯れた草をそよがせ、どこからか子羊の鳴き声がかすかに聞こえてくる。それは、もうすぐ来る冬の前の、わずかな温もりのような声だった。

アモスは振り返らず、暗くなっていく道を歩き続けた。彼の心には、悲しみと、ある種の諦めに似た静けさがあった。人々はまだ気づいていない。災いが繰り返されること自体が、既に呼びかけであったのだと。雨を乞い、健康を願い、平和を懇願するその祈りが、形だけのものであれば、次の対面は、もはや懇願の場ではなくなるということを。

遠くで、雷鳴がごうごうと響いたように聞こえた。しかし、空には一点の雲もない。それは、まだ来ぬ者の足音なのか、それとも、この地に満ちている沈黙の叫びなのか。アモスは歩みを止め、深く息を吐いた。備えよ、と彼はつぶやいた。だが、誰が聞くだろうか。その言葉は、風に散る枯れ葉のように、闇の中に消えていった。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です