アラムの王ベン・ハダデの軍勢は、先月の小競り合いでまたしても勝利を収め、ガリラヤの村から奪った戦利品と捕虜をダマスコへと運んでいた。その帰路、軍の総司令官ナアマンは、自分の手の甲に浮かぶ淡い紅斑をじっと見つめていた。陽射しの下で、それはわずかに光沢を帯びている。初めは気にも留めていなかった。戦士の体に傷はつきものだ。しかし、それは広がり、皮膚は時にうずき、このところ深い倦怠感が抜けない。宮廷の医師たちは有効な手立てを知らず、ただ曖昧な言葉を並べるだけだった。
ナアマンの屋敷には、イスラエルの地から連れて来られた一人の少女がいた。彼女はナアマンの妻に仕え、静かに仕事をこなしていた。ある夕べ、女主人がため息まじりに「将軍の体に触れると、熱があるようだ」と独り言を言ったのを、少女は聞き逃さなかった。彼女はしばらく黙っていたが、やがて洗濯桶の傍らで、かすれるような声で言った。
「私の主上が、サマリアの預言者のもとに行かれたらよいのに。きっと、そのらい病を癒していただけるでしょう。」
その言葉は、最初、軽い風のように通り過ぎた。しかし、妻はその夜、夫に伝えた。ナアマンは眉をひそめた。イスラエルの預言者? あの小国で、自分ほどの者が礼を尽くして訪ねるべきか。しかし、手の甲の紅斑がかすかにうずいた。彼は王に報告した。
アラムの王は大いに関心を示した。「行くがよい。わしがイスラエルの王への手紙を書いてやろう。」 書簡は、高慢なまでの威圧に満ちていた。「ここに、わしの家臣ナアマンを遣わす。彼を癒せ。」
銀十タラント、金六千シェケル、晴れ着十着と共に、その手紙はイスラエルの王の前に届いた。王は衣を引き裂き、「わたしが神か。この男を殺し、あるいは生かすことができるとでもいうのか。見よ、アラムの王はわたしに言いがかりをつけようとしているのだ」と叫んだ。宮廷は恐慌に陥った。
その騒動は、サマリアの町から少し離れた、質素な家に住む一人の男の耳にも入った。神の人エリシャであった。彼は王に伝言を送った。「どうして衣を引き裂かれたのですか。その人をわたしのところに来させなさい。彼は、イスラエルに預言者のいることを知るでしょう。」
こうして、戦車と騎兵を従え、威儀を正したナアマン一行は、エリシャの家の前に到着した。門は閉ざされたままだった。やがて一人の使いが出てきて、将軍に告げた。「ヨルダン川に行って七度身を洗いなさい。そうすれば、あなたの肉は元どおりになり、清くなるでしょう。」
ナアマンの顔が紅潮した。屈辱だった。彼は、預言者自身が門から出てきて、厳かに神の名を唱え、患部に手をかざすものと想像していた。それなのに、ただの使いが、汚れたとされる川で洗えと言うのか。「ダマスコのアバナ川とパルパル川は、イスラエルのどんな川よりも良くないか。そこで洗って清くなることができなかったら、一体何になるというのだ。」 彼は怒って引き返そうとした。
しかし、側近の一人が慎重に進言した。「わが将軍。もし預言者が難しいことを命じていたら、あなたはなさらなかったでしょうか。『洗え、そうすれば清くなる』というこの簡単な言葉に、従ってみる価値はないでしょうか。」
ナアマンは深く息を吸った。戦車の軋む音、甲冑の触れ合う音が聞こえる。彼は目を閉じ、手の甲の鈍いうずきに意識を向けた。そして、重い腰を上げた。「よかろう。行こう。」
ヨルダン川の水は、春の雪解けでやや濁り、冷たかった。ナアマンは、一度、二度と身を沈めた。何の変化もない。三度、四度。従者たちが固唾を呑んで見守る。五度、六度。彼の心は嘲笑に満ちていた。これが結末か。七度目。彼は深く水に潜り、そして立ち上がった。
その時、長い間感じていた皮膚の厚みとうずきが、嘘のように消えていた。彼は自分の腕を見た。子どもの頃のようになめらかで、紅斑の痕さえなかった。水が滴る。彼は川の中に立ち尽くし、やがて、震えるような声で叫んだ。「見よ! 見よ!」
ダマスコに帰る途中、ナアマンは再びエリシャの家を訪れた。今度は、家の前にひれ伏した。「今わたしは知りました。全地で、あなたの神、主のほかには神はありません。どうか、この僕の贈り物を受け取ってください。」 彼は持って来たすべての品を差し出した。
エリシャは静かに答えた。「わたしの仕える主は生きておられる。わたしは何も受け取らない。」 ナアマンがいくら懇願しても、預言者は頑として聞き入れなかった。
ナアマンはもう一つの願いを口にした。「どうか僕に、二頭の騾馬が運べるほどの土を賜りたい。僕は今後、他の神に全焼のいけにえや犠牲をささげることはありません。ただ主にのみ、ささげます。ただ一つのこと、主がどうかあなたの僕をお赦しください。わたしの主人がリンモンの宮に寄りかかって歩く時、彼に付き添い、彼と共に礼拝するとき、そのことについて…。」
エリシャは彼を見つめ、「安心して行きなさい」と言った。将軍の顔には、深い、しかしどこか苦い安堵の色が浮かんだ。
預言者の僕ゲハジは、このすべてを見ていた。主の名がアラムの将軍によってあがめられるのを喜ぶよりも、彼の心は、あの膨大な贈り物が何も受け取られなかったという事実で占められていた。「主人があのアラム人をあまりに甘く扱った。主は生きておられる。わたしは走って行き、彼から何かいただいてこよう。」
ゲハジは密かにナアマン一行を追った。ナアマンは彼を見て車から降り、「ご無事で?」と尋ねた。ゲハジは息を切らして嘘をついた。「ご無事です。ただ、今、預言者のもとにエフライムの山地から二人の若者が来ました。どうか、銀一タラントと晴れ着二着をください。」
ナアマンは喜んで、銀二タラントと晴れ着二着を彼に渡し、僕二人に荷物を持たせた。町の入口に近づくと、ゲハジは彼らを帰し、品物を家に隠した。そして、何もなかったようにエリシャの前に出た。
「ゲハジ、どこへ行っていたのか。」
「僕はどこへも行っておりません。」
エリシャの目は悲しみに満ちていた。「あの男が車から降りてあなたを迎えたとき、わたしの心はそこにいなかったとでもいうのか。今は銀を受け取る時だろうか。それに晴れ着やオリーブ畑、ぶどう畑、羊や牛、男女の奴隷を受け取る時だろうか。それゆえ、ナアマンのらい病は、永久にあなたとあなたの子孫にまとわりつく。」
ゲハジがエリシャの前を去るとき、彼の皮膚は雪のように白くなっていた。遠くで、ダマスコへの道をゆく戦車の音が、かすかに風に乗って聞こえてくるようだった。




