聖書

ネヘミヤの祈りと決意

その年の冬は、シュシャンの城に、いつもより長い影を落とした。ネヘミヤは、王に仕える献酌官としての一日を終え、居室の窓辺に立っていた。石造りの宮殿には、夕方になると、遠い砂漠の冷気が染み込んできた。彼は、肩にかかった上質な外套の襟を少し引き寄せた。ここでの生活は、物質的には何不自由ない。ペルシャ帝国の心臓部で、王の側近としての地位は揺るぎない。それでも、胸の奥底には、常に消えることのない、ある空虚感があった。それは故郷への郷愁というには、あまりにも鋭く、あまりにも痛みを伴うものだった。

その日、弟のハナニと、ユダから来た数人の男たちが、面会を求めてきた。ネヘミヤは、公務で疲れた顔を隠さずに彼らを迎え入れた。挨拶もそこそこに、彼らにエルサレムの様子を尋ねた。その瞬間、居室の空気が変わった。ハナニの目が曇り、うつむいた。

「残っている民は、そこの州で、大きな苦難とそしりの中にあります。エルサレムの城壁は破れ、その門は火で焼かれてしまいました。」

ハナニの声は低く、一つ一つの言葉が、重い石のようにネヘミヤの胸に落ちてきた。城壁が破れ、門が焼かれた。それは単なる物理的な損傷以上の意味を持っていた。城壁は、民の安全であり、共同体の尊厳そのものだった。門は、法が行われ、人々が集う、契約の民としての象徴だった。その報告は、遠く離れた地で、ある程度の成功を収めている自分自身に対する、容赦ない告発のようにも感じられた。

訪問者たちが去った後も、ネヘミヤは動かなかった。窓の外には、整然と並ぶ宮殿の建物が見えた。頑丈な壁、厳重な門。全てが秩序と権力を誇示している。その対極にある、壊された石塁、黒こげの門の跡が、目に浮かんで離れない。彼はゆっくりと座り、何日もその場から離れられなかったというより、離れる気力が湧かなかった。食事も取らず、酒も口にせず。それは儀式的な断食というよりも、あまりの衝撃と悲しみに、身体が自然に拒絶反応を示したのだ。

そして彼は、ついに地面にひれ伏した。絨毯の模様が目の前に広がる。祈ろうとしたが、最初は言葉にならない。ただ、喉の奥からこみ上げるうめきのようなものがあった。やがて、そのうめきが形を成し、祈りとなってあふれ出した。

「天の神、主よ。おお、大いなる恐るべき神よ。あなたを愛し、あなたの戒めを守る者に、契約を守り、恵みを施される方よ。」

彼の祈りは、賛美から始まったが、それは直ちに深い悔い改めへと転じた。彼は自分個人の罪を、父の家の罪を、そしてイスラエルの民全体の罪を、次々と告白していった。彼の頭には、律法の言葉、モーセを通して与えられた警告の言葉が、洪水のように押し寄せていた。『もし、あなたがたが背くならば、わたしはあなたがたを諸国の民の中に散らす』。まさにその通りではないか。今、自分はその散らされた民の一人として、異国の宮殿の中にいる。エルサレムの荒廃は、神の正しい裁きの結果にほかならない。その事実を、彼は直視せざるを得なかった。

しかし、ネヘミヤの祈りは、絶望で終わらなかった。彼は、同じくモーセの言葉を引いて祈り続けた。『しかし、もしあなたがたが、わたしに立ち返るなら…たとえ、あなたがたが天の果てに追いやられていても、わたしはそこから彼らを集める』。その約束の言葉を、彼は握りしめるようにして祈りに織り込んだ。それは、神の性質への信頼に基づく、かすかな、しかし確かな希望の光だった。

「どうか、僕が、あなたの御前に恵みを見いださせてください。どうか、この民の苦しみに心を留め、今日、僕を憐れんでください。」

彼は「僕」という言葉を繰り返した。献酌官という肩書ではなく、主の僕として。彼の願いは次第に具体的になっていった。彼が次にとる行動が、見えてきたからだ。彼は、ペルシャの王アルタシャスタの前に出る。その時、何を語ればよいのか。王は、なぜなら、彼の悲しみが顔色や態度に現れない日はなかったからだ。そして彼は大胆にも、王の前で成功を得られるように、と祈り求めた。それは、神が歴史を動かし、異国の王の心さえも導かれる方であるという信仰がなければ、とても口にできない祈りだった。

ネヘミヤは顔を上げた。部屋は完全に暗くなっていた。侍従がともした一つの灯火が、壁をゆらめく大きな影で揺らめいている。彼の心の中にもまた、揺らめく感情があった。悲しみ、悔恨、恐れ。しかし、祈りを通して、それらすべてを包括する、一つの確信が静かに沈殿していった。彼は、自分が為すべきことを知った。それは、危険を冒して王に願い出ること。エルサレムの城壁を建て直すために、自ら赴くこと。

彼は立ち上がり、窓の外の闇を見つめた。そこには、星一つ見えない、異国の厚い夜空が広がっていた。しかし、彼の内側には、遠く離れた荒廃の地を、一つの光が照らし始めていた。それは、人間的な楽観ではなく、約束を信じる者の、静かで、そして非常に現実的な決意の光であった。冬の風が、宮殿の石壁に呻くように吹きすさぶ音が聞こえた。ネヘミヤは、その音を、もう嘆きとしてではなく、やがて来る行動への、遠い前奏として聞いていた。

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