聖書

エリシャの奇跡:やもめの油と息子の復活

**列王記第二 4章に基づく物語**

### **エリシャとやもめの油の奇跡**

その日、太陽がギルガルの丘の上に昇り、野には朝露がきらめいていた。預言者エリシャは、神の言葉を求めて人々の間を歩んでいた。すると、一人の女性が必死に彼に近づいてきた。彼女は預言者の仲間の一人の未亡人で、目には涙が浮かんでいた。

「ああ、神の人よ。私の夫はあなたを畏れ、主に忠実に仕えた者でした。しかし、彼は亡くなり、今、借金の取り立てが迫っています。債権者たちは、私の二人の息子を奴隷として連れ去ろうとしています。どうか、助けてください!」

エリシャは彼女の悲痛な叫びを聞き、心を動かされた。彼は静かに尋ねた。
「あなたに何があるのか。家の中にどんな物が残っているのか、私に教えなさい。」

女性はうつむきながら答えた。
「この女奴隷の家には、ほんの少しの油の壺があるだけです。それ以外には何も残っていません。」

エリシャは頷き、神の知恵に満ちた指示を与えた。
「行って、近所の人々から空の器をできるだけたくさん借りなさい。そして、家に入り、戸を閉じて、息子たちと共に、その油をすべての器に注ぎなさい。」

女性はエリシャの言葉を疑わず、すぐに行動に移した。彼女は息子たちを連れ、近所の家々を回り、ありったけの空のつぼ、かめ、壺を集めた。やがて、家の中は借りた器でいっぱいになった。

彼女が戸を閉め、息子たちと共に残されたわずかな油の壺を手に取ると、不思議なことが起こった。油が注がれると、それは途切れることなく流れ出し、一つまた一つと器を満たしていった。息子たちが次々に新しい器を差し出すと、油はなおも溢れ続けた。

「もっと器を持ってきなさい!」と母親は叫んだ。しかし、ついにすべての器が満たされると、油の流れはぴたりと止まった。

女性は急いでエリシャのもとに行き、この驚くべき出来事を報告した。預言者は静かに微笑み、こう言った。
「その油を売り、借金を返しなさい。残りはあなたと息子たちの生活のために用いなさい。」

こうして、主の憐れみにより、このやもめとその家族は窮地から救われた。彼女の信仰とエリシャへの従順が、神の奇跡を引き起こしたのである。

### **シュネムの裕福な女性と息子の誕生**

時は流れ、エリシャはシュネムの地を訪れた。そこには、神を深く敬う裕福な女性がいた。彼女は預言者を自分の家に招き、食事を提供し、いつでも立ち寄れるように屋上の小部屋を用意した。

ある日、エリシャは彼女にこう尋ねた。
「あなたは私のために多くの心遣いをしてくれた。何かあなたのために王や将軍に取り次ごうか?」

しかし、女性は静かに答えた。
「私は自分の民の間に住んでおり、何も不足はありません。」

エリシャの従者ゲハジが進み出て言った。
「彼女には子供がなく、夫も年老いています。」

エリシャは彼女を呼び、神の約束を告げた。
「来年の今頃、あなたはひとりの子を抱くでしょう。」

女性は驚き、信じられない思いで言った。
「神の人よ、どうか私を欺かないでください!」

しかし、約束された通り、彼女は男の子を産んだ。その子はすくすくと成長し、家族の喜びとなった。

### **息子の死と復活**

ある日、その少年が畑で父と共に働いていると、突然、頭が激しく痛み出した。父親は急いで彼を母親のもとに連れて行ったが、少年は彼女の膝の上で息を引き取った。

母親は悲しみに打ちひしがれながらも、信仰をもって行動した。彼女は夫に言った。
「私はすぐに神の人のもとへ行きます。」

そして、彼女は急いでエリシャのいるカルメル山へ向かった。エリシャは遠くから彼女の姿を見て、ゲハジを遣わしたが、彼女は預言者に直接会うことを求めた。

彼女はエリシャの前にひざまずき、叫んだ。
「私は子供を乞い求めましたか? 私は『私を欺かないでください』と言ったではありませんか!」

エリシャはすぐにゲハジに杖を持たせ、先に遣わした。しかし、母親は離れようとせず、預言者自身が来ることを願った。

エリシャが到着すると、少年はすでに死んでいた。預言者は部屋に入り、戸を閉じ、少年の上に身を伏せて祈った。すると、少年の体は温かくなり、くしゃみを七度して目を開けた。

母親は喜びの涙を流し、エリシャの足もとにひれ伏した。こうして、神の力は再び現れ、信仰ある者に命と希望が与えられたのである。

### **毒の煮物と大麦のパンの奇跡**

エリシャがギルガルに戻ったとき、預言者の仲間たちはひどい飢饉に苦しんでいた。ある日、エリシャは従者に命じた。
「大きな鍋を火にかけ、皆のために煮物を作りなさい。」

一人の者が野に出て、珍しい野生のつる草を見つけ、それを摘んで鍋に入れた。しかし、食べ始めると、皆が苦しみ出し、「神の人よ、鍋の中に毒があります!」と叫んだ。

エリシャは言った。
「小麦粉を持って来なさい。」

彼が粉を鍋に投げ入れると、毒は消え、煮物は無害になった。

さらに、ある人がエリシャのもとに大麦のパン二十個と新穀を持ってきた。エリシャは言った。
「それを人々に分け与えなさい。」

従者は驚いて言った。
「こんなに少ないもので、百人もの人にどうして分けられましょうか?」

しかし、エリシャは答えた。
「主はこう言われる。『彼らは食べて、なお余すであろう。』」

そして、不思議にも、すべての人が満腹になり、残りまであった。主の言葉は真実であり、エリシャを通して神の恵みが現されたのである。

**終わり**

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