聖書

「テサロニケの信徒たちへの希望の約束」

**第二テサロニケ人への手紙 第一章に基づく物語**

テサロニケの街は、秋の深まりとともに黄金色に染まっていた。オリーブの木々が風に揺れ、エーゲ海から吹く潮風が街の路地を抜けていく。しかし、この美しい風景の陰で、信徒たちの心には苦しみが渦巻いていた。

パウロから届いた第一の手紙を読んでからというもの、テサロニケの教会は励ましを受け、主の再臨への希望を抱き続けていた。しかし、時が経つにつれ、周囲からの迫害は激しさを増し、信徒たちの中には疲れを覚える者も現れ始めた。異教徒たちの嘲り、ローマ当局の疑いの目、そしてかつての友人たちからの疎外——信仰ゆえの苦難は、彼らの心を徐々に蝕んでいった。

そんな中、再びパウロからの手紙が届いた。シルワノとテモテの名も共に記されており、教会の長老であるアリスタルコが慎重に巻物を開いた。信徒たちが集まる家の庭で、ろうそくの灯りが揺れる中、彼は声を張り上げて読み始めた。

**「神と主イエス・キリストとのうちにあるテサロニケ人の教会へ。恵みと平安が、あなたがたにあるように。」**

この慣れ親しんだ挨拶に、人々の顔に安堵の色が浮かんだ。しかし、パウロの言葉はすぐに彼らの現実に向けられる。

**「兄弟たちよ。私たちは、あなたがたの信仰の成長と、互いに対する愛の増し加わることについて、神に感謝せずにはいられません。あなたがたは、今も耐え忍んでいるすべての迫害と苦しみの中で、堅く立っており、このことが、神の国のためにふさわしい者とされている証拠なのです。」**

信徒の一人、マルコスが涙を浮かべた。彼は先週、市場で「十字架を拝む愚か者」と罵られ、商品を買い叩かれたばかりだった。しかし、パウロの言葉は、この苦しみが無意味ではないと告げていた。

パウロはさらに続ける。

**「神は正しい方です。あなたがたを苦しめる者には報いとして苦しみを与え、苦しめられているあなたがたには、私たちとともに安息を与えてくださいます。これは、主イエスが炎の中に力ある天使たちを従えて天から現れる時に実現するのです。」**

人々は息をのんだ。パウロは、彼らの苦しみが永遠に続くものではなく、神の正しい裁きと、信じる者への報いが約束されていることを力強く宣言していた。

**「その日、主は燃える火の中で、神を知らない者たちや、福音に従わない者たちに報復されます。彼らは主の御顔とその力の栄光から退けられ、永遠の滅びに定められるでしょう。」**

長老のアリスタルコは、巻物を握る手に力を込めた。この言葉は、迫害者たちへの恐れではなく、神の正義への確信を呼び起こした。

そして、パウロの最後の祈りが読まれた。

**「私たちはいつも、あなたがたのために祈っています。どうか、神があなたがたをこの召しにふさわしい者とし、善を求める信仰の願いと、愛の働きを力強く満たしてくださいますように。」**

ろうそくの炎がゆらめき、部屋の中に静かな感動が広がった。信徒たちは互いの手を握り合い、再び立ち上がる力を得た。彼らの苦しみは、決して無駄ではない。神はすべてを見ておられ、正しく裁き、信じる者を決して見捨てられない——この確信が、彼らの心を新たにした。

夜明け前に集会は終わり、人々は暗い路地を帰っていった。しかし、もはや彼らの足取りは重くはなかった。天からの約束が、彼らの歩みを軽やかにしていた。オリーブの枝越しに、東の空がわずかに明るみ始めていた。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です