**ハバクク書第1章に基づく物語**
ユダの王国が暗雲に包まれていた時代、預言者ハバククはエルサレムの城壁の上に立ち、荒れ果てた都を見下ろしていた。彼の心は重く、神への叫びで満ちていた。人々の不正と暴力が街に溢れ、裁きを求める叫びが天に届かないかのようだった。
「主よ、いつまでわたしは助けを叫び求めても、あなたは聞いてくださらないのですか? 暴虐をあなたに見せても、あなたは救おうとされないのですか?」
ハバククの声は風に消え、彼の目には涙が浮かんだ。祭司たちは賄賂を受け取り、裁判官は弱者を虐げていた。貧しい者たちは搾取され、正義は地に打ち捨てられていた。彼は神の沈黙に苦しみ、答えを求め続けた。
しかし、神はハバククに応えられた。
「見よ、わたしはカルデア人を起こす。彼らは激しい気性の民で、地を広く巡り、自分たちの住まいではない住まいを奪う者だ。」
神の声は雷のように響き、ハバククの全身が震えた。カルデア人——バビロンの強力な軍隊——が神の裁きの道具として用いられようとしていた。彼らの戦士は狼のように速く、鷲のように獲物を襲う。王たちを嘲笑い、砦を塵のように打ち砕く。彼らは暴力を神とし、力こそ正義と信じる者たちだ。
ハバククは恐怖に打ちのめされた。なぜ神は、ユダの罪を正すために、さらに邪悪な民を遣わされるのか? カルデア人はユダよりも残酷で、神を畏れぬ者たちではないか?
「あなたの目はあまりに清く、悪を見ることができません。なのに、なぜあなたは裏切り者を黙って見ておられるのですか? 悪人が正しい人を飲み込むのに、あなたは何もなさらないのですか?」
彼の疑問は深まり、神の計画はますます謎に包まれた。しかし、ハバククは決意した。彼は見張りの塔に立ち、神の答えを待ち続ける。たとえ理解できなくとも、神の義は必ず現れると信じて。
そして、風が再びささやくように吹き抜けた。神はハバククに語りかけようとしていた。答えはまだ終わってはいない——この苦しみの先に、真の救いが待っていることを示すためだった。
(続く)