聖書

「ヨシュアの最後の説教と契約の更新」

**ヨシュアの最後の説教と契約の更新**

ヨシュアはイスラエルのすべての部族をシェケムに召集した。彼は長老たち、族長たち、さばき人たち、つかさたちを呼び寄せ、彼らは神の前に立った。その日、太陽は高く昇り、オリーブの木々が風に揺れる中、ヨシュアは静かに、しかし力強く語り始めた。

「主はこう言われる。」ヨシュアの声は深く、神の言葉を伝える者としての威厳に満ちていた。「あなたがたの先祖、アブラハムとその子ナホルは、昔、ユーフラテス川の向こうに住み、ほかの神々に仕えていた。しかし、わたしはアブラハムを連れ出し、カナンの地を歩ませ、彼の子孫を増やした。」

民は息を飲んだ。彼らの祖先が異教の神々を拝んでいたことを、ヨシュアはあえて語ったのだ。

「わたしはイサクにヤコブとエサウを与え、エサウにはセイルの山を与えて所有させた。しかし、ヤコブとその子らはエジプトに下った。」ヨシュアの目は遠くを見つめ、神の導きの歴史をたどった。「その後、わたしはモーセとアロンを遣わし、エジプトを打ち、あなたがたを導き出した。」

民の中から、ため息のような声が漏れた。彼らは紅海が分かれた日、雲の柱と火の柱に導かれた荒野の日々を思い出していた。

「あなたがたは長い間、荒野にいた。しかし、わたしはアモリ人の地に入る時、彼らと戦わせ、あなたがたが彼らの土地を受け継ぐようにした。」ヨシュアの声は次第に熱を帯びた。「バラムはあなたがたをのろうために呼ばれたが、わたしは彼の口を封じ、かえって祝福させた。」

民の顔に緊張が走った。彼らはモアブの平原で、バラクとバラムの策略に陥りかけたことを覚えていた。

「そして、あなたがたはヨルダン川を渡り、エリコに入った。この地の住民はあなたがたと戦ったが、わたしは彼らをあなたがたの手に渡した。」ヨシュアは両手を広げ、周囲の土地を示した。「あなたがたは自分で労したのではない。自分で建てた町に住み、自分で植えなかったぶどう畑とオリーブ畑を食べている。」

民は黙った。彼らが今、安住の地を得ているのは、すべて神の恵みによるものだった。

ヨシュアは一瞬、目を閉じ、深く息を吸った。そして、鋭い視線で民を見据え、問いかけた。

「では、あなたがたはだれに仕えるのか?」彼の声は雷のように響いた。「もし主に仕えることがいやなら、今日、選ぶがよい。あなたがたの先祖がユーフラテス川の向こうで仕えた神々か、あるいは、あなたがたが今住むアモリ人の神々か。しかし、わたしとわたしの家とは、主に仕える。」

民は動揺した。彼らの心には、時折よぎっていた異教の習慣がよみがえった。しかし、その時、一人の族長が前に進み出て、叫んだ。

「主を捨てて、ほかの神々に仕えることなど、私たちにはできません! 主は私たちをエジプトから導き出し、私たちの前に大きなしるしを行われました。私たちは主に仕えます!」

他の者たちも次々に同意し、声を上げた。

ヨシュアはゆっくりと首を振った。「あなたがたは自分で主に仕えると言うが、主は聖なる方、ねたむ神だ。あなたがたが主を捨てて異教の神々に仕えるなら、主はあなたがたを滅ぼされる。」

民はさらに強く叫んだ。「いいえ、私たちは主に仕えます!」

ヨシュアはうなずき、大きな石を立てた。「この石は私たちの証人となる。この石が、主のすべての言葉を聞いたことを覚えているからだ。」

そして、民はその日、シェケムで主との契約を新たにし、ヨシュアは彼らをそれぞれの相続地に帰らせた。

時が過ぎ、神のしもべヨシュアは百十歳で死に、エフライムの山地のガアシュ山に葬られた。彼の生涯は、主への忠実な歩みで満ちていた。イスラエルはヨシュアの時代、そして彼の後に生きていた長老たちの時代を通して、主に仕え続けた。

しかし、ヨシュアが立てたあの石は、いつまでも静かに立っていた。それは、民が神と交わした契約を、決して忘れてはならないという、無言の警告だった。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です