**歴代誌第一 1章:天地創造からノアの子孫へ**
はるか昔、時も始まる前、神は混沌とした闇の中に光を放ち、天地万物を創造された。天と地が形づくられ、海と陸が分かたれ、あらゆる命が息吹を与えられた。その壮大な御業の始まりから、神は人類の歩みを導かれた。そして、その歴史はアダムから始まる──
### **アダムからノアへ**
最初の人アダムは、神の御手によって土から形づくられ、命の息を吹き込まれた。彼はエデンの園に住み、神と共に歩んだ。しかし、禁断の実を口にした罪により、楽園を追われた。それでも神の恵みは絶えることなく、アダムとその子孫は地上に増え広がっていった。
アダムの子はセツ、セツの子はエノシュ、エノシュの子はケナン……と、代々の系図は続き、やがてエノクが生まれた。エノクは神と深く交わり、ついには地上を離れ、天に上げられた。その子メトシェラは、歴史上最も長寿を記録し、969年生きた。そしてメトシェラの孫こそ、後の大洪水の時代を生き抜いたノアであった。
### **ノアの三人の息子たち**
神は、増え広がる人類の悪に心を痛め、洪水によって地を清めようとされた。しかし、ノアだけは神の前に正しく、その家族は救われることとなった。箱舟に乗り、激しい雨と荒れる海を越えた後、ノアとその息子たち──セム、ハム、ヤフェテ──は新たな地で子孫を増やしていった。
この三人の子らこそ、後の全人類の祖となった。ヤフェテの子孫は海沿いの国々に広がり、ハムの子孫はカナンやエジプトの地に住み、セムの子孫は東の民として繁栄した。特にセムの系譜は、やがて神の選びの民イスラエルへとつながっていく。
### **セムからアブラハムへ**
セムの子アルパクシャドから代々続く系図は、エベル、ペレグ、レウ、セルグ、ナホル、テラへと続いた。そしてテラの子アブラム──後のアブラハム──が生まれる。彼こそ、神と特別な契約を結び、「多くの国民の父」とされる人物である。
アブラハムには兄弟がおり、その一人ナホルからも多くの氏族が生まれた。また、アブラハムの甥ロトは、ソドムとゴモラの滅びから逃れ、モアブとアンモンの民の祖となった。こうして、神はそれぞれの民を定め、その運命を導かれたのである。
### **ハムの子孫と諸国の起源**
一方、ハムの子クシュはエチオピアの地に、ミツライムはエジプトに、プテはリビアに広がった。特にクシュの子ニムロドは、強大な狩人として名を轟かせ、バベルやニネベなどの大都市を築いた。しかし、人々が天に届く塔を建てようとした時、神は彼らの言葉を乱し、諸国に散らされた。
カナン──ハムの子の一人──の子孫は、後にイスラエルの民が約束の地に入る時、対峙することとなる諸民族(ヘテ人、エブス人、アモリ人など)の祖となった。神は彼らの罪が満ちるのを待ち、やがてイスラエルを通して裁きを下されるのである。
### **結び:神の導く歴史**
歴代誌第一1章は、単なる名前の羅列ではなく、神が人類の歴史を細やかに導かれた証である。アダムからノアへ、セムからアブラハムへ、そしてイスラエルの民へ──すべては神の御手の中にある。
この系図は、やがて来るべき救い主、ダビデの子孫から現れるメシアへの道筋を示している。神の約束は決して消えることなく、世代を超えて受け継がれていくのである。