聖書

荒野の約束と岩の奇跡:メリバの水

**民数記20章:メリバの水の物語**

荒野の太陽が灼熱の光を降り注ぐ中、イスラエルの民はカデシュの地に宿営を張っていた。長い旅路と飢え、渇きに苦しむ民の不満は日に日に増し、ついに彼らはモーセとアロンのもとに集まり、激しい口調で訴え始めた。

「ああ、私たちが主の前に死んだときがよかった!」とある老人が叫んだ。彼の声は渇きでかすれ、唇は荒れていた。「なぜ私たちをエジプトから連れ上らせたのか。この荒れ野で、私たちも家畜も死なせるためか。ここには穀物も、いちじくも、ぶどうも、ざくろもない。そして、飲む水さえない!」

民の怒りはモーセとアロンに向けられ、彼らは石を拾い上げ、二人に投げつけようとする者さえ現れた。モーセは胸が締めつけられるような思いで民を見つめた。40年近くも彼らを導き、神の約束を語り続けてきたが、今また彼らは神を試し、不平を鳴らしていた。

モーセとアロンは会見の天幕の入り口にひれ伏し、主の御前に助けを求めた。すると、雲の柱が幕屋を覆い、主の栄光が現れた。主はモーセに語られた。

「杖を取り、兄弟アロンと共に民の前に立て。そして岩の前で彼らに語り、岩に命じて水を湧き出させよ。あなたがたは彼らの目の前で岩から水を出し、イスラエルの民とその家畜に飲ませよ。」

モーセは主の言葉を受け、アロンと共に岩の前に立った。しかし、民の罵声が耳に残り、彼の心は怒りで震えていた。彼は岩に向かって叫んだ。

「聞け、反逆する者たちよ! 私たちがお前たちのためにこの岩から水を出さなければならないのか!」

そして、モーセは杖を振り上げ、岩を二度打った。すると、驚くべきことに、岩から豊かな水がほとばしり出た。水は渇いた地を潤し、民は我先にと水を飲み、家畜もその喉を潤した。

しかし、主の声が再びモーセとアロンに臨んだ。

「あなたがたはわたしを信じず、イスラエルの民の前にわたしの聖なることを示さなかった。それゆえ、あなたがたはこの民をわたしが与える地に導き入れることはできない。」

モーセはその言葉に膝から崩れ落ちそうになった。40年にわたる忍耐と導きの末、約束の地に入ることを許されないという宣告。彼は目を閉じ、深い悲しみに包まれた。

その場所は「メリバ(争い)の水」と呼ばれ、イスラエルの民が主に逆らい、モーセとアロンが約束の地に入れないこととなった出来事として、後の世代に語り継がれることとなった。

こうして、民は渇きを癒されたが、指導者たちは自らの過ちの代償を背負い、荒野の旅を続けることとなった。しかし、主の慈しみは変わらず、岩から湧き出た水のように、民と共にあり続けたのである。

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